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30日目 サヤちゃん

サヤちゃんと初めて出会ったのは、部活の事故で足の骨折で病室のベットで寝ている時だった。

病室のドアから目が合った時から、俺が退院するまで毎日のように、お話ししに来てくれた。


「なあ、なんで何時もこっちに来るの?」


と、サヤちゃんに聞いてみると、彼女は若干涙目になり


「も……もしかして、じゃまですか?」

「い、いや違うよ!うれしいから!!」

「ふふっ、よかったぁ~」


俺が慌てて訂正すると、彼女はホッと胸を撫で下ろしながらそう言った。

彼女曰く病室で骨折した足を見ながら溜息を吐いていた俺が気になったらしい。

初めは話しかけただけだったのらしいが、最近では


「あたし、元気になったらー、ま~くんと結婚する〜!」

「あはははっ。何言ってんだよ~恥ずかしいだろ~?」


なんて、言ってくれる。

当時、僕は13歳サヤちゃんは9歳。嬉しくとも僕は、彼女も何時か心変わりするだろうと悟っていたので、正直困った記憶がある。複雑な気持ちになりながらも、ちょうど9歳になったばかりの妹も居るので、僕は新しい妹が出来たみたいで少し嬉しかった。


お蔭で1週間という長いはずの時間は、あっという間に過ぎ、僕はサヤちゃんを置いて退院した。

退院した以降も、たまにお見舞いに行って手紙を交換したり電話をしたり等何かしら交流していた。


しかし俺が退院して足の骨が完全にくっついた頃(早6ヵ月たった頃)彼女が家に遊びに来た。


「いきなり来てごめんなさい。驚かせたかったの。」


俺は驚いて初めは何も言えなかったが、玄関に立たせてるのも悪いし、部屋に招いた。

その日は土曜日、仕事やら遊びに行ってるやらで家族は居なかったので、リビングにあるソファーに座って、お茶を飲みながら2人で仲良くお話をしていた。


お話をしてて2時間くらいたった時の事だ、俺達の話し声を、家の電話がかき消した。


電話の音にビックリしたのか、心配そうに俺を見つめるサヤちゃんを慰めながら、俺は電話に出た。

俺が、戸惑いながら電話を切ると


「ねぇ……あたしの事、ずっと忘れないでいてくれる?」


背後から、今にも泣きそうな声が聞こえてきた。

振り返ると、予想していた通りに彼女は目に涙を溜めながら、俺の様子を伺っていた。

さっきの電話の内容を思い出して、俺自身も目から涙が溢れ出してきたが、急いで涙を拭って微笑む。


「あぁ、忘れないよ。だから安心して、天国に行ってらっしゃい。」


俺の言葉に、彼女は悲しそうに笑を浮かべ


「やった、指切りげんまんだよ?」


小さな小指を差し出してきた。


「あぁ……」


俺は、その小指を重ね合わせ、お決まりの歌を歌う。

目の前で、足元からサヤちゃんが消えていく。足、胴体、腕と、消えていく。歌が後半になるにつれ、彼女が消えてくる速度が上がっていく。ついに小指が薄らと消えていく。サヤちゃんは、目の前で泣きながら幸せそうに微笑んだ瞬間、完全に消えてしまったのでした。


俺は、電話の内容を思い出して、その場で座り込んだ。


「……サヤちゃん……さようなら。」


彼女は、俺の家に来る数分前に、亡くなっていたようだった。サヤちゃんのお母さんが、最も仲良かった俺に電話してくれて教えてくれたのだった。


それから約30年、どんなに友達が俺をバカにされても、サヤちゃんの事が忘れないせいか、43歳になっても、彼女1人出来たことがない。

彼女は何時までも、俺の心の中で生きている。

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