3日目 いなくなっても姑との勝負は終わりません。
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最近ついていませんでした。
やっとお義母さんが死んでもう一週間。
高校生の息子は先日買ったばかりの新しい自転車を盗まれて。
小学生の娘は昨日、集金袋を無くし。
お義母さんが亡くなった翌日に、母は、認知症が進行し、私の顔を忘れてしまった。
……やっと邪魔者がいなくなって清々したと思っていたのに。
葬儀やら片付けやら母の面倒やらで、忙しい日が続いていた私は、ついに昨日からインフルエンザにかかってしまい、ダウンしてました……。
インフルエンザでぼやけた視界の中、夫が朝食と昼食を作ってくれたのでありがたく頂いてから、家に残った私は、洗濯物を干し、食器を洗った。
全ての家事が終わった時は、既にお昼を過ぎていたが食欲なんて一欠片も湧かず、そのままベットの上に寝転んだ。
冷えたベットシーツは、熱い体には心地よく体から熱を奪ってくれた。体から力が抜けていく。
やっとゆっくり休むことが出来た。昼時に家にいるなんて、何日ぶりだろう?そんな事を考えながら、まどろみ始めた時、何かの唸り声が聞こえてきた気がしたが
(どうせ、近所の犬か何かだろう。)
その日は、熱の辛さもあり、深く考えないで微睡みに任せ、目を瞑った。
そんな日が3日が経つと、身体の怠さはまだ抜けないが結構動けるようになった。
幸い、夫も子供もうつること無く、家のインフルエンザ菌は居なくなりそうだ。
一息入れるために、リビングでポカ〇を飲んでいた時
【ウ……ウウウ………】
携帯のバイブ音みたいな、低音の振動音が聞こえてきた。
昨日までは、この時間は寝ていてあまり意識していなかった。近所の犬かと思っていたが、明らかに何かが違う。
何かが、掠れた低い声で何かを呟いている。そう感じ私は、息を殺して、耳を澄ました。
【ウ…せな…ウ………】
定期的に聞こえてくるその声は、次第に大きくなっていく。
大きくなっていくうちに、何を言っているのか分かって熱かった体の熱が、一気に冷めていった気がした。
【ゆる…せない………許せな…い……!!】
体が硬直して動かない。いや、もしかしたらこの時金縛りにあっていたのかも知れない。
(この声は…何処から?)
耳に意識を集中させ、どこから聞こえているのか探る。そしてそのまま、金縛りが溶けるまで、その場から動く事が出来ませんでした。
夕方になり、夫が子供を連れて帰ってきた。
一人じゃ怖いので、私は子供を連れて、声が聞こえていた方向に向かった。
そこはお義母さんが使っていた寝室。
お義母さんが死んですぐ、使っていた物は捨ててしまった為ベットとタンスしか置いてない。そんな殺風景な部屋。
私はゆっくりと足を踏み入れた。
そして、弄るとかなり怒られた記憶のある為、片付けを後回しにしていたタンスの戸を開ける。
すると、渋い小豆色の風呂敷で巻かれた、古風な子包が落ちてきた。
一つ深呼吸しながら、ゆっくりと風呂敷を開けると、飴色をした長方体の木の箱が出てきた。
(これじゃなさそう。)
そう思って、別のものが無いか探していたとき
「おかぁさ~ん~!!」
娘が大きな声で泣き始めた。
私は娘の足元を見て、鳥肌が一気に立った。
髪の毛だ。
長い白髪まじりの髪の毛の束が、あの綺麗な箱から、想像もつかない気持ち悪いものが出て来ていた。
その日は、泣いてる娘を抱きしめ、部屋を出た。そのままその日は不気味に感じながら一日を終え、次の日、丁度燃える日だったのでお祓いもせず捨てました。
その日から、あの声は聞こえなくなりました。
これで、そのまま平和になる事を願いながら元気になった私は現在、朝食を作っています。
フィクションです。