表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AEGIS-エイジス-  作者: ヘルハウンド
7th Attack
247/250

第四十六話『Zero-諦めないということ』(4)-3

「使う時が、来たようだな」


 タッチディスプレイを押した後に、パスコードを入力する。

 何年前に設置した施策かは、正直忘れた。

 確か、もう二〇〇年以上は前だった記憶がある。


 自分が散々解析して作り上げた、ガーディアンシステムの致命的欠陥である、負の感情の吸い上げを無くすというバグ取りだ。

 負の感情を吸い取られ続けた結果、ほとんどの連中がレヴィナスに喰われたのを、ハイドラは今でも思い出す。


 だが、ガーディアンシステムはプロトタイプエイジス最大の切り札だ。それを使わない限り、アイオーンには、ジンには、絶対に勝てない。

 だからこそ勝つための策を、自分は練った。

 ガーディアンシステムのリミッター解除時、暴走の危険性をなくすためだった。


 そして、その装置の片割れが、炎雷に積まれている。

 理由は簡単だ。羅針が、そもそもガーディアンシステムの集団リミッター解除を実施することが可能な機体だったからだ。


 羅針は全てのプロトタイプエイジスを率いるために作られた、といっても過言ではない機体だった。

 だからこそ、他の機体にはなかった脅威的な強度の確保として装甲にRLを用いたし、出力確保のためにSPIRITも積んだ。そして、その出力を用いて、それを最大の矛とした。

 そして他の機体が羅針の持つガーディアンシステム集団解除装置を使われることで、羅針が率いる部隊が脅威的な強さを発揮する。

 単独でも強いが、集団になった時に真の強さを発揮する。それが羅針という機体だった。


 そしてそれを受け継いだ機体を、ゼロが持ってきた。

 自分の予測は間違っていなかったのだと、ハイドラが思うと同時に、自分の心に希望がわいた。そんな気がした。


 衛星軌道上の人工衛星にリンクする。頭部の装置の展開が、完了したと通達があった。


「やれ」


 言った瞬間、光が、蒼天の頭上に差し込んだ。

 レーザー光。それが人工衛星とリンクしたと伝えられると、すぐにモニターで処理が動く。

 すぐさま、この大地に存在しているプロトタイプエイジス全機のOSのアップデートを行い始めた。


 それは、いとも簡単に、あっという間に、終わりを告げた。

 それが終わった瞬間、蒼天は動かなくなった。

 バッテリーが尽きたと同時に、オーバーヒートを起こしたのだ。


 やはり、この機体もそろそろ限界なのだ。

 蒼天に愛着があるのは、自分がよく知っている。何せ、千年も乗っているのだ。

 だが、自分の切り札は、五百年前に手に入れた切り札が、実際には蒼天の中に眠っている。

 しかし、まだ目覚めさせる時ではない。

 時が来れば、それは自然と目覚める。


 それまで、粘ろうか、なぁ、愛機よ。


 そんなことを思いながら、戦場の様子を見る。

 徐々に、敵を射線軸状に追いやりつつあった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 急に、空破が動きやすくなった気がする。

 レインボウの弾薬は尽きた。レインボウから機体を切り離し、空破単体で動く。

 敵が見えたら、殴り飛ばして破壊する。

 それをルナは、指示を出しながら繰り返し続けた。


 不知火の回収も終わったと、ディスから報告があった。

 いつの間にいたのと、言いたくなったが、それどころではなかった。

 あれだけの戦闘を繰り広げた後に、二〇〇〇機を相手にするのだ。いくら蒼機兵が加わってくれても、かなりつらい。


 息が、上がり始めている。

 だが、まだ踏ん張らなくてどうすると、ルナは自分を奮い立たせる。


 直後、警報が鳴った。

 スコーピオンが、構え始めた。

 手には、FM-67マシンガンが握られている。


 そして、ロックされた場所も分かった。

 ゼロに対してだ。二〇〇〇機による一斉射撃で沈める、いや、沈められなくても冷却バイパス一本でもやられれば、その瞬間に発射までの時間は延びる。

 そうなればイーギスの自爆に巻き込まれる。

 そうさせる前に破壊するのは、無理だ。


 だが、護る必要がある。

 エイジスの名を見せろ。そう、ロニキスが言ったのだ。


 ならば、自分が護らないで、どうする。

 フレーズヴェルグと呼ばれた自分が、それをやらないでどうする。

 ルーン・ブレイド三代目戦闘隊長である自分が、部下を護らないで、どうする!


 そう思った時、IDSSの波紋が広がった。

 ハガナは下がっている。オーラシールドは使えない。

 だが、それでも、守り切る。

 思った瞬間、ガーディアンシステムの起動を、AIが知らせた。

 同時に、空破の腕に、ヒビが入った。

 そして、そのヒビから、オーラの壁が出現し、炎雷の前を覆った。


 その壁に、何発もの銃弾が当たる。

 一発も、炎雷には当たっていない。


 自分の気が、吸われる。重いと感じる。

 だが、自分が護らないで、どうする。それだけ思って、守り続けた。

 チャージが完了したと通達があったのは、スコーピオンが構えを解いた直後だった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 汗が、滴り落ちている。

 その汗が滴り落ちる様も、ゼロには見ることが出来た。


 アップデートが行われた瞬間から、少し、身体が軽くなった。

 雑音が聞こえなくなったから、というのが大きな理由だろう。

 殺せと言っていた声は聞こえない。

 代わりに、仲間からの声は聞こえる。


 だとすれば、自分が仲間に報いることが出来るとすれば、策を立て、そして、敵を切り伏せること。

 そして、諦めないこと。

 それが出来るようになればいい。そう、ゼロには思えた。


 IDSSの波紋が、大きく広がっていく。

 赤く、砲門が揺らいだ。気が、今すぐ撃てと言っている。

 だから、それに従う。


「デュランダル・インバースデルタ、ディスチャージ!」


 トリガーを、押した。

 瞬間、視界が真っ赤に染まった。

 自分の気を示す、紅蓮の炎の如き赤。それが、視界一面に拡がり、大地をえぐり取りながら、何もかもを焼き払っていく。

 艦船も、M.W.S.も、中継ステーションも、全てだ。

 炎。そう、ゼロには感じられた。


 照射が終わった時、ただ焼け焦げ、えぐり取られ、大穴が何カ所も空いた大地が見えた。

 そして、急報が入ったのは、そのすぐ後だ。

 インプラネブル要塞前の敵が、撤退した。そんな報だった。

 それで、喚声が聞こえた。


 だが、その喚声が、ゼロには遠く聞こえた。

 IDSSから、手が落ちた。

 機体が、ガクンと沈んだ。

 エネルギーが尽きたと、AIが告げた。


 俺もエネルギー尽きてるぜ、おい……。


 苦笑して、眠ろうと思った。

 ひどく、眠かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ