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AEGIS-エイジス-  作者: ヘルハウンド
7th Attack
241/250

第四十六話『Zero-諦めないということ』(2)-1

AD三二七五年七月二四日午前五時二五分


 突っ込んだ。

 こいつらは正気なのか。まず、アナスタシアの頭に浮かんだ感想はそこだった。


 十倍もの戦力差がある連中に、問答無用で突っ込んでいく。それも、勝つつもりでいる。

 そして、気付けば自分もそれで滾っている。


 ブラスカがいるからだろうか。

 それだけではない、何か。その何かが、自分を突き動かしているのだろうと、アナスタシアは思った。


 作戦の第二段階。艦船内部へ侵入し、その内部にあるコンピューターユニットからフェンリルのサーバーへアクセスして、フェンリルのOSに対し演算処理をパンクさせるウィルスを放つ。

 それで機体動作が一斉にダウンした瞬間、インプラネブル要塞のベクトーア軍は展開しているスコーピオンのバッテリー破壊作業に入る。これで完全に敵は動けなくなり、数万機の鉄くずだけが残る。

 そのウィルス注入を行うのは、レムだ。

 自分達はその護衛であり、撹乱する存在でもある。


 まさかそれを、ゼロが立案するとは夢にも思わなかった。

 前に会った時、あの時は確かに勇猛だが、猪武者の気があった。


 だが、今のあいつはどうだ。まるで別人のように策をひねり出し、的確なタイミングで指示を出す。

 そしてそれさえ終わればすぐさまルナの指揮下に入り、自分の腕を振るう。

 何があった。正直、それが一番興味がある。


 ならば、聞くまでは死なないようにしよう。

 そう思って、シャムシールのビームカノンを構えた。


 動かない戦艦など、ただの的だ。発射口に一発、狙撃した。爆発が起きたのを確認した後、一気に突っ込んだ。

 不知火が先陣を切る。発射口に突撃すると同時にマニピュレーターで無理矢理口をこじ開けた。


 やること相変わらず無茶するなぁ、ブラスカは。


 アナスタシアは呆れると同時に、その熱さが昔から変わっていないところが、少し嬉しかった。

 だからだろうか、フットペダルを強く押し込む。

 夜は明けないが、赤い光だけが、少し見えた。炎の光だと分かると、そこに修羅場があると、すぐに理解した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 艦内火災発生と同時に、すぐさま機体が突っ込んできた。それも五機も、である。

 あれだけ少ない部隊の数をまさか二つに割るとは思わなかった。


 こちらが驚く手口ばかり打ってくる。その老練さは、ロニキスとも、フレーズヴェルグとも、まるで違う。

 だとすれば、真の指揮官は、誰だ。

 それさえ分かれば何とかなりそうだと思う反面、強敵が出て来て面白く感じている自分もいた。


 イーギスからすれば、不思議な感情である。裏方にいてこの方、味方だったフェンリルとも戦を何度かしたが、こんな感情になったことはなかった。

 何処か冷めていた。そんな気がしたのだ。


 だが、今はどうだ。自分は、この上なく戦を楽しんでいる。

 自分の本質は、こっちなのだろうか。それとも裏なのだろうか。

 一瞬、そんなことが脳裏をよぎる。


「艦長! 敵エイジス、召喚解除! イーグが侵入しました!」

「警備班を直ちに出せ。数は?」

「五名です!」


 聞いた瞬間、違和感を覚えた。確かに、あそこに鎮座しているのはM.W.S.だ。

 そして来たエイジスはプロトタイプ二機含めて全部で四機。

 数が一人多い。


 瞬間に、ハッとした。

 M.W.S.のパイロットが、イーグだ。

 確かにベクトーアにはそういう部隊もある。対歩兵特化とするためのイーグ部隊だ。


 だが、あれはどう考えてもその部隊ではない。

 とすれば、と考えた時、一つだけ、当てはまる事例を思い出した。


 一人の傭兵がいた。その傭兵が、M.W.S.パイロットにもかかわらず、イーグであると。

 まさか、それなのか。

 確か、その傭兵の武器は。


 そこまで思い立った瞬間に、映像が出た。

 派手に暴れられている。そんな景色が広がっている。

 敵の狙いは恐らくブリッジの占拠。だとすれば、こちらももう一つ、切り札を使うより他ないだろう。

 あの男が、ちょうどいる。そろそろ出してもいい頃合いだ。


 少し熱くなっている。

 ふと、そんなことを思った後、イーギスは一度頭を振った。

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