境界の檻〜少女の過去〜
初めて投稿します。駄作ですが試しに読んでみてください。
ーーー目の前には、つい先程命を落とした男の死体が倒れていた。殺したのは、私。どうして、こんなことするつもりじゃなかったのに。ただ、自由が欲しかっただけ。それ以外の何も望んではいなかった。目の前の、物言わぬ男を揺する。もちろん死体が反応するわけもなく。少女は涙を零し懺悔する。(後悔しても遅いのに)心の声がする。(貴女が殺したのよ?)
「うるさいうるさい!!私が悪いんじゃない!この男が私を閉じ込めたのが悪いのよ!どうして私がこんなところに閉じ込められなければならないの?こんな、檻の中に。時空の狭間に閉じ込められるほどのことを私がしたというの?」
(そうよ。貴女は覚えていないだけ。自分がした事を忘れてまた同じことを繰り返している。何度も、何度も。飽きる事無く。さぁ、思い出しなさい。自らの罪を、過ちを。)
「私の、罪?」
少女の唇から、言葉が零れ落ちた。その途端に忘れていた記憶が奔流となって少女の頭に流れ込み、叫び声をあげて蹲る。
「あぁあああああああああああああああああああっ」
そうして、思い出す。自らの罪を、過去の過ちを。
ーーーかつての人生で少女は医師だった。誰よりも患者に寄り添い慕われていたはずの彼女は、ある日突然患者を裏切った。自身の勝手な自己満足と思い上がりで。泣き叫び許しを請う患者を思うがままに切り刻んだ。新薬を死ぬまで投与した。そのうち、その行為自体を悦楽と感じる様になった。やがて罪が露見し償いを求められたその時、彼女はそれを拒み、罪を認めようともしなかった。そして、最後のその時、彼女は自ら命を落とした。その顔に狂気の笑みを張り付けて。
(思い出した?)
「あれが、私の罪?そんなわけない!私だって、悪いことしたら反省くらいするよ?幾ら何でもあんな、あんなひどいこと...」
(いいえ。貴方がやったのよ。全ては貴女の自己満足の為に。何の罪もない人たちを犠牲にして)
「嘘よ!そんなの嘘に決まってる!だって、私は」
(何も覚えてない?そうよね、貴女は忘れるために”ワタシ“を作ったのだもの。自分のした事を押し付けるために)
(それなのに随分冷たいのね?貴女の罪を”ワタシ“は全部被ってあげたのに。いつだって貴女のことを思っていたのに。邪魔者は今まで全部取り除いてあげたでしょう?どうして今更“ワタシ“を消そうとするの?)
「まさか、あれは全部あなたが...。どうして?何故あんなことをしたの?!私はあんなことしたくなかったのに」
わたしはーー
少女の嘆きはもう誰にも届かない。