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テクノブレイクしたけれど、俺は元気です  作者: 水月一人
1章・先輩と僕の不適切な関係
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楽しい学校生活が始まりそうだ・5

 トゥルルルル……トゥルルルル……と、呼び出し音が2回。


「もしもし?」

「鈴木か? 頼みたいことがあるんだけど」

「なんだよ、藤木かよ。おまえ、さっさと帰りやがって、友達甲斐のないやつだな」

「悪かったよ。そんなことより、頼めるか」

「何をさ?」

「とりあえず、情報が欲しいんだ。生徒会や、白露会、さっきの腰ぎんちゃくとか、その他もろもろ。関係者全部だな。敵になりそうな奴らを片っ端から」

「ああん? 調べるって、何をだよ」

「家族構成から通学路、出身校とか、卒アルとか、過去を辿れそうなもの。弱みになりそうなもの」

「って……やるのか?」

「やる……」

「そうかそうか。とりあえず、同中(おなちゅう)のやつらに当たってみるけど……」

「悪いな、巻き込んで」

「いいさ、丁度退屈していたところだ。それより、名簿みたいの無いか? 県外の奴らなんて殆ど分からないぞ」

「名簿は無いが……いや、当てならある。一日待ってくれ」

「はいよー」


 まるで十年来の友のように、二人はそれで電話を切った。

 

 

 明けて翌日。藤木は放課後になると、すぐには帰り支度をせず、暫く時間を潰してからゆっくり電算機室へとやってきた。


 ドアをガラリと開けると、奥に居た人が物珍しそうな声を上げた。


「あら、藤木。珍しいわね、こんなところで会うなんて」

「よう、ユッキー」


 藤木は何食わぬ顔で倖へと近づいた。まるで自然体であったが、彼女の指が恐ろしく素早く動き、パソコンを操作している。


「何しに来たの? このパソコンじゃ、エロサイトなんて見れないわよ、フィルターがかかってるから」

「でも、校内のものは何でも見れるんだろ」

「……?」

「ルートは盗れたのかい」

「なんのことかしら?」


 倖は心底わけがわからないと言った表情をした。もしも以前、直接犯行現場を見ていなかったら、恐らく勘違いと思ってしまっただろう。藤木は深呼吸すると続けた。


「いや、別に脅しに来たんじゃないんだ。寧ろ、頼みに来たんだよ。なあ、ユッキー、お願いだ。助けて欲しい」

「あんたが何を言ってるのか、さっぱりなんだけど」


 藤木は一連の部室騒動を説明すると、


「それでちょっと、いろいろ細工が必要でさ。そのためにこっそりと動いてるんだけど……」

「……朝倉は部室から出たくないって言ってるわけね?」

「ああ、絶対退かないって言ってたからな。多分、追い出されそうになっても篭る気で居るんだと思う」

「ふーん……いいわ。何をして欲しいか分からないけれど。出来ることなら協力しましょう」

「助かるよ。手始めに、中沢の家について教えて欲しいんだけど」

「中沢って、生徒会長だっけ?」

「ああ、あいつ白露会の会長だとか、大金持ちの息子だとか言うけど、実際にどんな家庭のボンボンなのかって、そういう話って一切聞かないんだよね。よっぽどやんごとないお方なのか、それとも危険が危ない家なのか……」

「ああ……なるほど、知らないわけね。玉木さんよ」

「え?」

「玉木さんよ。あんたこの町で育ったんなら知ってるでしょう。その辺のビルは殆ど玉木さん家のものらしいし。この学校の理事にも名を連ねてるわね。確か公家じゃなくて、高家出身じゃなかったかしら。ヤクザでもないわよ。良かったわねえ」

「……なんで苗字が違うんだ」

「だから、それが理由よ。いわゆる妾腹ってやつ」


 ああ、なるほど、ぼやけていたものが、急にピントがあった気がする。


「幼い頃に何らかの理由で引き取られて以来、ずっと玉木家の離れで暮らしていたらしいわ。本妻には二人の娘がいたけど、男の子は居なかった。よっぽど肩身の狭い思いをしたでしょうね」

「……そんな時に誘拐事件が起きたのか」

「そうそう、結構有名なんだっけ。結果は知っての通りね。玉木家自慢の娘さんが、誘拐犯の手によって惨殺され、以来、お母さんはずっと錯乱状態のようだし、次女は話しにすら上らなくなった。頭おかしくなったのか、それとも誘拐が怖いのか。ま、そんな中で急に表舞台にのし上がってきたのが中沢君ね。元々、認知はされていた、唯一の直系男子よ」

「なんか、やたらと詳しいな」

「そうかしら? 世間話の範疇じゃない」


 とてもそうは思えないが……下手に突っ込んで、機嫌を損ねられても困る。


「それじゃ、朝倉先輩は?」

「朝倉? いやあねえ……友達の詮索をするのは、趣味が悪いわよ」

「俺だって思いっきりそう思うわい。でも、なんか知らんが、先輩と中沢って知り合いらしいんだよ。おまけに中沢は先輩にご執心だ。なんであんなに拘るのか、その理由が知りたいんだ」

「へえ……ちょっと待ってね」


 それは知らなかったと言った顔で、倖はパソコンを弄り出した。藤木の方からは画面が見えてないが、見えたらきっとロクでもないことをしてるのだろう。


「ああ、あったあった……なるほど。二人とも出身中学が同じ習学館なのね。その時に知り合ったのかしら」

「習学館?」


 かつて成美と市内を二分した超進学校である。成美高校はもののみごとに落ちぶれたが、あちらは未だに市内どころか全国随一の進学校として名を馳せていた。


「……道理で先輩、頭がいいと思った。って言うか、なんでそんな秀才が、わざわざこんな学校に転校せにゃならんのだ」

「さあ? それを調べるのがあんたなんでしょう……はい」

「?」


 首を傾げていたら、背後のプリンターが突然動き出し、何かプリントアウトされた。


「朝倉の内申書よ。おまけで中沢君もつけておいたわ……感謝しなさい」

「お、おう……ありがとう」

「話はこれだけ?」

「あ、あとさ、ここの学生の名簿が欲しいんだけど。出来るだけ詳細な奴」

「……別にいいけど。名簿屋に売るんじゃないでしょうね?」

「あんたも大概発想が恐ろしいよね。売るわけあるかっ!」

「そう。ならいいわ……私が首になったとき、いい小遣い稼ぎになるからね。流出しちゃ困るのよ」

「おい」


 しかし……玉木家ね。


 中沢の出自がいまいちわからなかったうちは、まるで考え付きもしなかったが……今にして思えば、あの日天使が死亡フラグ云々言い出した前日こそ、朝倉と中沢が二人で密会していたまさにその日だったのだ。


「これって、関係あるのかなあ……」


 それは分からないが、可能性がゼロでないのなら、気に留めておくしかない。倖に若干の情報を貰ったが、この件に関しては、もう少し詳しく調べておいた方がいいだろう……ともあれ、もらった名簿を鈴木に渡し、今度はまた別の相手に連絡を取る。

 


 そんなこんなで数日が過ぎた。


 藤木は部室死守のために奔走し、影ながらも徐々に協力者を増やしていった。


 それと平行して玉木家のことについても調べていた。朝倉と中沢の関係も気になっていたし、駅前の小母ちゃんのことも気になった。一度、学校帰りに天使に聞いてみたが、やはり死亡フラグが立ってるらしい。いつ、どういう条件で死ぬのか? と聞いてみたが、それは分からないそうだ……可能であるならなんとかしたいが。


 朝倉に関しても新情報が一つ。どうやら彼女は玉木家の使用人の娘であり、幼い頃から屋敷に出入りしていたらしい。その時から中沢と知り合いだったのだろうか。いわゆる、幼馴染というやつだ。


 しかし、それと部室棟と、一体何の関係があるのだろうか。事実を知れば知るほど、かえってちんぷんかんぷんになってくる。


 仕方ないので、一度建物自体を調べようとして、普段は閉め切られている中央階段の尖塔に、こっそり登ってみた。意外と広いそのスペースの窓から身を乗り出して、辺りを見回していると、すると、もう一つの尖塔が視界を遮って景色を損ねていることに気づく。恐らく、あちら側から見たほうが全体を見渡せていいだろうと思い、その入り口を探すが、廊下にも、屋根裏にもそれは見つからなかった。


 位置的には、丁度文芸部の部室の真上にある……さて。


 部室棟4階の弱小クラブの面々に関しては、あの日以来、やけにフレンドリーに接してくるようになった。まだ話を持ちかけてはいないが、いつか事を起こすことになったら、協力を要請してもいいかも知れない。しかし時間はかけていられない。気がつけばいよいよ追い出しが始まった。


 生徒会から部室明け渡しの催促が頻繁に来る中、部室にはいつも通り朝倉が居て、そしてこれまたいつも通り、平板な調子で接してくれる。数日前の出来事は、まるで何もなかったかのようにリセットされていた。無論、彼女に隠れていろいろ調べていた藤木に非難できるわけも無くて……昼休みも放課後も、ちぐはぐな会話を続けながら、やがて訪れるであろう最後の日を意識しつつ、二人で部室に居続けた。


 そして、晴沢成美(はるさわせいび)はあの生徒会と揉めた日以来、一度も部室に顔を出さなかった。中学が忙しいのか、それとも金持ち連中に止められたのか……一度気になって、中学までこっそりと様子を見に行ったことがある。


 高校から少しはなれた場所にある中学は、こじんまりとした木造建築の校舎で、その周りには綺麗に刈り取られた芝生と、桃木の並木があった。藤木がこっそりと中学を覗いてみると、ランチをするならうってつけのその場所で、中学生たちがシートを広げて、まるで遠足のように弁当を広げていた。


 なるみはその中心で、女生徒たちに囲まれて笑っていた。いつも通りの朗らかな笑顔だった。


 確か、中学はもう一クラスしか残っておらず、何をするにもいつもみんな一緒だと、当のなるみが言っていた。邪魔をしては悪いと思い、藤木は踵を返し、その場を離れようとしたが、耳障りな声が聞こえて立ち止まった。


 女子中学生たちの間に男が居て、彼女らに囲まれながら、鼻を伸ばして得意そうにしている。中学に男子生徒など居ない。あれは恐らく、なるみの言っていた白露会の連中だろう。


 胸糞悪いものを見た……溜め息を吐きながら、今度こそ立ち去ろうと背中を向けると、


「先輩っ!」


 背後から声が掛かり、息を切らせたなるみが藤木の元へと駆け寄ってきた。


「珍しいですね、こんな場所に来るなんて。私に何か用ですか?」


 女子中学生たちの遠慮ない目が、好奇心丸出しでこちらを見つめていた。


 それとは対照的に、軽蔑しきった冷たい視線が男たちから投げかけられた。


「いや。用事ってほどでもないんだけどね……最近、部室にこないから、ちょっと気になったんだ。邪魔したな」


 藤木はそう言って場を辞そうとしたが……なるみは後ろを振り返り、むっとした迷惑そうな顔をしてから、ぐいぐいと校舎の影まで藤木の背中を押した。


「本当は部室に行きたいんですけど……数日前から、あの人たちがやたらと絡んできまして」


 なるみは苦々しそうに言った。


「高校であったことは人づてに聞きました。部室を追い出されちゃうとかって」

「実はそうなんだ」

「先輩は、大人しく追い出されちゃうんですか? もも子先輩はどうしてるんですか」


 正直なところ、彼女に助力を得られないかと思ってここまで来た。しかし、実際にそれをしていいのかと……それをすることで、彼女との関係が終わってしまうのではないかと……藤木はここまできて躊躇していた。


「……出来れば、追い出されたくないんだけどね。まあ、ちょっと無理かも知れない。もしそうなったら、また別の場所で集まるかも知れないけど……その時は、なるみちゃんはどうする?」

「お断りですよ」


 即答だった。


「だって先輩、そんなこと考えて無いでしょう? なんとかしようって、そう思ってるって、顔に書いてますよ。何弱気になってるんですか」


 呆れたと言わんばかりに、なるみはかた目をつぶって溜め息をついた。藤木は図星を指されて、うっと言葉が詰まった。


「あのね、先輩? 先輩がもし、これから起こる事で、傷ついて挫けてどうしようもなくなったら……」


 なるみはクスクスと笑いながら、


「超、弄りますからね。いっつも先輩がセクハラしてきたみたいに。先輩が泣いても、絶対、許してあげませんっ」

「……それは、ひどいな」


 思わず顔が綻んだ。


「そうです。酷いんですよ、先輩は。いつだって先輩は酷いです。でも、そんな先輩だから、みんな先輩のことが好きなんですよ。裏表が無くて、セクハラで、態度悪くて、横柄で、セクハラで」

「それ、全然褒めてないよね!?」

「もちろん。褒められるとこなんて無いんですから。何を恐れるものがあるんですか」


 そう言ってなるみは、屈託無くはにかんだ。


 その笑顔には全面降伏せざるを得ない。


 藤木はくつくつと苦笑いしながら頭をかくと、


「それもそうか……なるみちゃん。いや……」


 日本有数の実業家である晴沢コンツェルンの長女であるところの、


「晴沢成美さん。君に折り入ってお願いがあるんだけど……今日は、そのためにここに来た」

「はい、なんですか?」


 藤木は意を決してそれを口にした。


 なるみはきょとんとしてそれを聞いていた。


「そんなことでいいんですか?」

「そんなことって……結構、思い切ったんだけどね」


 憮然としながら藤木がそう答えると、なるみはニヤニヤと笑いながら、


「先輩も案外チキンですね。普段は傍若無人なくせに」


 なるみのくせに洒落くさい……藤木はむっとした顔で答えた。


「なるみちゃん。レジャーシートの上に女の子座りで座るとき、スカートの中が見えないようにって、裾を押さえると言うか、握っていただろう」

「……それがなにか?」

「そのスカートがめくれてズロースが覗いているぞ」

「……きゃあああああああああああああ!!!!」


 黄色い悲鳴が辺りに木霊した。もう間もなく、この声に驚いて女子中学生がこちらへすっ飛んできて、藤木をボコボコにするだろう。その、およそ10秒間、藤木はなるみの恥辱に震える顔を堪能し、心の数学2Bフォルダに焼き付けた。

 


 そしてまた、数日のときが流れた。部室棟4階の弱小クラブは、生徒会の勧告によって、近日中の退去が言い渡されていた。そんな中、藤木たち2年4組のメンバーを中心として、校内を暗躍する陰が散見された。


 中沢貴妙はその動きを辛うじて察知はしていた。しかし、彼らが何をやろうとしているのかまではまるで分からなかったし、大方、腹いせに何か嫌がらせでもしてくるのだろうと、その程度の認識しかもっていなかった。


 しかし、それは大きな間違いだ。彼は、藤木たちのことを見誤っていた。


 彼らはただのアホではない。ちょっと己を省みない、危険なアホなのである。


 それを後悔することになるのは、正に事件当日。成美高校部室棟の前での出来事である。

 

 その日も中沢はいつも通りに家を出て、いつも通りに学校へと到着した。いつもとは違う朝であることに気づいたのは、昇降口を昇り、自分の教室へと辿り着いたときだった。


「中沢君! 良かった、来てくれて。これを見てくれ」


 ざわついた教室内に入り、級友が言わんとしていることは一目瞭然であった。教室内の机が無いのだ。前日は普段どおり、授業を終えて、大掃除のようなことはしていない。誰がこれだけの机を移動したのか? 


「生徒会長!」


 首を捻っていると、今度は教室の外から、生徒会役員が血相を変えて飛び込んできた。なにやらロクでもないことが起こってるらしい。


「学生がバリケードを作って、建物を占拠してます! とにかく、来てください。部室棟です!」


 中沢が部室棟へとやってくると、そこには大量の机がうず高く積まれた巨大なオブジェが形成されていた。本来なら玄関ポーチが見える場所は、机に阻まれて何も見えず、そこには簡易的なトーチカらしきドームが作られており、なにやら物騒なものが銃眼から突き出ていた。


 なんだあれは? 本物なのか?


 そう発言するより先に、


「いてっ! いってええええ!」

「お、おいっ! 血が出てるぞ!?」


 バリケードまで不用意に近づいた者が銃撃を受けてのた打ち回った。


 初めは冗談で、大げさにしてるのだと思った。しかし、弾が当たった場所が真っ赤に腫れて、ところどころ血が滲んでいるのを見て、その場にいた全員が凍りついた。


 冗談だろう? と思って打ち出された球を見れば、


「これ……鉄球じゃないか! おいっ! 全員距離を取れ!!」

「みんな逃げろおおおーーーー!!!」


 我先にと逃げ惑う背中に、容赦なく弾丸が浴びせられる。それに当たった者たちの悲鳴が轟き、パニックが起こった。そして集団がトーチカから100メートルほど離れたとき、


 キィィーーン……


 というハウリングが聞こえ、続いて拡声器特有の、大きくてくぐもった濁声が、早朝の河川敷に響き渡った。


「本日、晴天に恵まれしこのよき日。我が旗の下に集まりし勇士に幸あらんことを。我々は成美高校生徒にあり、不当な差別を受けしもので作る結社である。時の権力者に言われ無き弾圧を受け、搾取されるものである。先日、成美高校生徒会は我々弱小クラブであるところの、全き無辜の弱者に対し、恣意的で一方的で悪意ある、死刑にも等しき宣告を行った。我々の理念を解することなく、ただ無為であると、言われ無き中傷を浴びせかけた。そして傷つき泣き伏す我らの拠り所を、追い討ちをかけるかのごとく、冷徹に奪取せんと卑劣な欲望を現した。なんと言うことか! これらの理不尽に対し、我々はただ屈辱に耐えるより他無いのであるか? 断じて否! 否である! 生徒会は横暴である! 我々は誰一人としてルールを逸脱することのない、真摯な無辜の民であった。部室を不当に奪われるいわれも、彼らに奪う権利も無いのである。ところが、現生徒会は卑劣にも、暴力によって我々からそれを奪おうとしている。この悪辣な仕打ちは果たして人間の所業であると言えるのか。理不尽には法を! 暴力には正義を! 我々はこれらファシストの、悪逆な振る舞いに闘争を開始するものである! 我々~! 部室解放戦線はあ! 現生徒会の横暴を糾弾すると共にい! 中沢貴妙会長の退陣を要求するものであるっっ!! 中沢やめろ! 中沢やめろ!」

「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」「中沢やめろ!」


 シュプレヒコールが上がる中、中沢は何が起こったのか判断しきれず、ぽかんと口を空けてその姿を見守った。周囲の者たちが不安げに、次々と指示を求めてくる。しかし、そんなこと言われても、一体どうすりゃいいのだろうか。


 玄関ポーチの上に、藤木が拡声器を持って立っていた。傍らには太鼓を打ち鳴らす2年4組の男子生徒たち。そして、朝倉もも子がぽやっとした顔で立っていた。


 中沢はぎりりと奥歯をかみ締めた。


 後にも先にも一発勝負の、成美高校部室棟占拠事件はこうして始まった。


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