最終話 桜吹雪の中で
──山中先生!阿久津文学賞受賞おめでとうございます!
……それから一年後、完成させた作品、『犬神』で俺は賞を取った。
──つまり、念願の小説家としてのデビューを果たしたんだ。
俺はワンセグテレビで昨日やった自分の記者会見を観ている……すると。
「……ねぇご主人!何で私小説の中で死んでんの!?」
例の小説を読んでいた桜は俺に向かってそう言ってきた。それに対して俺は、
「そりゃあお前、バッドエンドにしないといつまでも続きそうじゃねえか!」
と言い返してやった。
──……あの時、俺は崖から落ちる桜の手を掴んだ。
そして引き上げた桜の頬を引っ叩き、強く抱き締めた。
桜は俺の背中をギュッと掴み──そして泣いた。
(……もう、離さない。)
俺は桜を抱き締めながらそう心の中で誓った。
──俺たち二人は今日、近くの土手に花見にやって来ていた。
ふと、桜は読み終わった本を横に置くと桜の近くに走り──それから俺の方を見る。
──……桜吹雪の中で満面の笑みを浮かべた桜はとても可愛らしく……綺麗だった。
俺は桜に走り寄り、抱き締める。
「……桜、きっと俺はお前より早く死ぬと思う……。けど……絶対にお前を幸せにするから……、俺は何度でも転生してお前を幸せにするから……結婚して欲しい。」
俺は桜を抱き締めながらそう言う。
……今の俺は桜を飼い犬とは意識せずに生きてきた……だからいつしか、俺は桜の事を好きになっていたのだ。
桜は俯き──こう言った。
「……でも、私は沢山の人を殺して……沢山の人を不幸にして……。そんな私なんかが……今更自分だけ幸せになるなんて……。」
「……桜……俺が許すよ。世界中の誰もが許さなくたって……俺が許す。……そりじゃあ、駄目かな?」
俺は桜の言葉を遮り、そう聞く。
すると桜は俺の胸に顔を埋めて──また泣いた。
「泣き過ぎじゃねぇか?桜?」
俺はそう笑かけた。
──この先、俺は桜と結婚式を挙げて……出来る物なら桜との子供も欲しい。
そしてずっと──、一緒に居たい。
それが桜吹雪の中で願った、今の俺の願いだ。
完結です。
今回は……ちょっと嫌だと思う人もいるかも……。
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最期まで読んで頂き、ありがとうございました!