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黄昏  作者: うみ
12/12

2話同時投稿です。

「スイっ遅くならないで帰ってくるのよ!」

 元気に走っていく背に向かって叫ぶ。

「まったく…」

 風が吹き抜ける。誘われたようにスズはふと山の方を見た。



 スズとスイが村へと戻ったとき、翁が門で出迎えてくれた。

翁は山へと入ったスズを咎めることなく、薄く微笑んでただ一言いった。

『おかえり』と。

スズは目が熱くなるのをこらえ、ただいまと返した。

幸いスズがいなくなったことを変に思う者はいなかった。多分翁が何か言ってくれていたのだろうとスズは思った。

母や父は勿論、村の皆でスイが戻ってきたことを泣いて喜んだ。その日一日中はお祭り騒ぎであった。だが当の本人は自分が神隠しにあったことを理解しきれていなかった。

 スイは化け物に攫われた記憶の全てを、夢のことと思っていた。

スズがくくと別れ、木の根元で横たわっているスイを見つけたとき、目覚めたスイは目に涙を溜め謝ったのだ。スイの時間はスズと喧嘩別れしたときから止まっていた。あの恐ろしい化け物がスイの記憶に残っていなくて良かったと、スズは心底安堵した。

スイは戻ってきた次の日からしばらく寝込んだ。記憶がないとはいえ疲労がたまっていたのだろう。しかし何日か経つと、元気な体を取り戻していった。それからは毎日のようにキリや他の村の子どもたちと遊んでいる。



 スズは袂に入っている剣を取り出し見つめた。

(玉依様はいつでも見守っているとおっしゃっていたわ。そしてきっとくくも―――)

 知らず、スズは微笑を浮かべた。

「スズー?こっち手伝ってちょうだい」

 母の呼ぶ声にはっとし、剣を慌ててしまう。

「はぁい、今行きます!」

 スズは一度山を振り返り、何かを思い出すように目を瞑る。そして何かを振り切るように部屋の中へと消えていった。





 そして日は山へと沈み、黄昏時になろうとしていた―――



お読みいただきましてありがとうございました!!

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