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その4、門




王都が見えてきた。10メートルほどの大きな壁がどこまでも続いており奥の方にはおそらく城だろう。の尖塔がちらほらと見えている。


「大きいですね……。王都に入るときに何か手続きとかはありますか?」


「ああ、門の受付のところで名前を書くだけだよ。金を払ったり荷物の検査とかは特にはないな」


とザイールが答える。


「そんなに簡単に人や荷物を通していいでんすかね?治安とかは大丈夫なんですか?」


「セラフさんが気にするのももっともですがあまり締め付けすぎても物流が悪くなりますからな。それにある程度治安が悪い方が騎士達の飯のタネが出来て都合がいいのですよ。」


グラーフの問いになるほどと頷いた。確かに何から何までいちいち確認していられないもんな、と納得する。

そうこういっている間に門の前まで来た。


「よ~し、そこの馬車止まれ~。通行人の確認をさせてもらうぞ~」


チェーンメイルに皮手袋、槍をもった二人組の男が手を振る。

最初にザイール、依頼主のグラーフと順番に降りていき最後にセラフが降りた時に門番から声が漏れた。


「うぉ!すげぇ美人……!」


「……今まで見た女の中で一番きれいかも……」


と驚いている。なぜかグラーフが自慢げにしているがまあ無視しておこう。

呆けているのも最初だけで自分の仕事を思い出して名簿とペンを取り出し名前を聞いている。

そして自分の番になったが……なんだか顔が赤いな?


「え、え~とあなたのお、お名前は?」


先ほどまで何も言わずに名前を書いていたが自分の番だけ声をかけてきた。

ひょっとしたら何度も通るかもしれない、ここは丁寧に対応しておこう。


「セラフと申します。」


とりあえずソプラノのように透き通った声に笑顔のおまけつきで言ってみたが効果は抜群のようだ。


「う、美しい………は!?じゃなくてセラフさんですね。たしかに確認しました。ところでどうですか?この後一緒にお茶でも……」


「いい加減にしろ。すいませんねセラフさん。ところでどうです?初めてこの街に来たのなら観光案内でも……」


お前もかよ。とりあえずここはスルーしておこう。


「すいません。ご遠慮しておきます」


「そうですか。それは残念です……」


断った後も相変わらず心ここに非ずといった感じでこちらを見続けている。その様子を見てザイール達も「あの笑顔の破壊力ならしょーがない」といった感じで黙って頷いていた。




「それじゃあ、私たちはグラーフさんの店まで行きますけどセラフさんはどうしますか?」


「そうですね……みなさんは冒険者のようですけど冒険者ギルドとかがあるんですか?」


情報収集の一つとしてこの時代の戦闘力はどれぐらいのものか調べておきたいしな。


「はい、ありますよ。後で案内しましょうか?」


「いえ自分でさがします。いろいろ見て回りたいので」


「そうですか。また会ったら一緒に酒でも飲みましょう。それでは」


とここでザイールたちと別れる。さてと……まずはギルドを探しますかな。




大して探さない内にギルドとやらは見つけることが出来た。

外観は庭のある少し小ぶりな屋敷といったところか。とりあえずさっさと入ってみよう。

中はカウンターが二つにテーブルがいくつかある。食事や酒盛りをしているものがいたがセラフが入った途端に静寂に包まれた。


「(……なんか、急に静かになったな……。勘弁してくれよ、注目されるのは苦手なんだ……。)」


居心地の悪さを感じつつも歩を進めカウンターの前まで移動する。

セラフが移動したカウンターの前にはセミロングの茶髪に大きな青い瞳、緑色のメイド服のようなものをきた18歳程度の女性が呆けた顔で立っていた。


「すみません」


「ぽけー……、は、はい!」


なんか驚いてるが私が何かしたか?


「冒険者とやらになりたいんですが……ここでいいですか?」


「は、はい!問題ないれす!…じゃない、です!」


さっきからよく驚いてるな。

そこでようやく受付の女の子は気を取り直して説明を始めた。


「え、え~とそれでは説明を始めます。まず冒険者についてですが、冒険者にはランクが存在します。Eから始まってD、C、という風にですね。そして最終的にはS、SSまでランクが存在します。まぁSSは4人しかいませんけどね。」


ふむふむ。SS……か。そいつらの強さ次第で今後の行動が決まるかな?


「で、次にクエストですがお使いや護衛、討伐まで多岐にわたります。そして成功報酬の内の一割がギルドに徴収されます。まぁ仲介料だと思ってください。他にも国から出されるミッションというものがありますがこれは仲介料は発生しません。報酬も多めですし貴族たちや宮廷の人たちの覚えもよくなります。が注意として基本的に失敗が許されず名指しされたら断れません。まぁあまりにも無茶な以来だったりどうしてもできない事情があるならギルドが代わりに弁明しますが。」


クエストはわかるがミッション……か、面倒事はまだしも厄介ごとは可能な限り避けたいな。


「では最後にギルドカードの作成ですね。ギルドは大きな街なら基本的にどこでもありギルドカードも各国共通です。このカードでその人がどの程度の強さを持ちどんなクエストをどれだけこなしたかがわかります。あと身分証明書代わりにもなるので大事に扱って下さい。初回は無料ですが再発行は有料になりますから」


そういうと受付の子、よく見たら胸元にミラと書いてある。は手のひらサイズの銅製のプレートを取り出した。そしてそのプレートを専用の台の上に置いた。


「それじゃこの台の上に手を置いてください」


言われた通りに手を置く。すると自分の手が淡く光り、次いでプレートが光りだした。


「はい登録完了です。ためしに軽く念じて表示を出してみてください」


プレートに軽く集中するとプレートになにやら文字と線が出現した。


「いかがです?」


「ええとEという記号が出てきてその下になんか…横棒がありますね。これはどういう意味なんですか?」


「え!?横…棒ですか?すいませんちょっと見せてください」


「?ええ、はい」


「あ、あれ!?ほんとだ!?なんで!?すいませんええと……」


困惑した表情でこちらをチラリとみる。


「ああ、セラフといいます」


「すいませんセラフさん!本来ここにはレベルが表示されるはずなんですが……」


「レベルですか……それはいったい?」


「ええと基本的に冒険者は魔物を倒すとその魔物が持っていたマナを吸い取って自分の体を強化できるんです。それでこのプレートは現在のランクとその冒険者のおおよその強さ、つまりレベルを表示してくれるんですけど……」


困惑しながらも説明を続けるとは……

ていうかアナザーワールドであったレベルというシステムはリアルになっても存在するんだな。


「けど?」


「表示されませんね……」


「ええと……上限とかは、あったりするんですかね?」


「一応100ですけど……そんなことは常識的にありえませんし……」


「ありえないとはどういう意味ですか?」


「そのですね、現在確認されている最高レベルが79なんですよ。だから100レベルはありえないんです」


なるほどね。最高レベルは79か。だとすれば200レベルの自分に敵はいないな。

しかし計測限界が100とは……やはりこの世界にこの体はオーバースペックだな。


「しかし、どうしましょうか……ギルドマスターは今出かけていて居ませんから……」


「ふむ、レベルの記述は絶対にないとダメなんですか?」


「絶対…というほどではありませんが、そもそも冒険者は言葉よりも力が絶対的な正義ですから。その強さを確実に示してくれるレベルをしっかり確認しておかないと自分の適正なクエストがわからなかったり、依頼を受けにくくなったりしますよ?」


「ならばレベルは不明で構いません」


「ええと……ほんとにいいんですか?」


「ええ」


ああ構わない。人類最強が何に怯えるんだ。それに200レベルなんて表示されても困るしな。

だがこの体での戦闘経験がほとんどないのは少し不安だな。カタログスペックが最強でも奇襲や不意打ちで危機に陥ることも十分に考えられる。とりあえずはそのへんのモンスターでいろいろと確認しておくか。


「じゃあ、ええと。セラフさん登録完了です。クエストは右にあるクエストボードからお選び下さい……」


ふう、ようやく終わりか。

長々と丁寧に説明してくれたんだ。最後くらいは笑顔で締めるか。


「わかった。ありがとう」


「!?い、いいえ///どういたすまして!じゃない!いたしまして!///」


なぜか受付の子が赤面しており周りから「おお……」とか「……いいな」とか聞こえたが無視しておこう。



今回は少し長めです

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