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その14、白銀の王



「それでいったい何の御用でしょうか?」


適当な、少し喧嘩を売っているともとれる対応で王に声をかけるセラフ。


朝起きて宿の外に出たら早速重厚な鎧を身に纏った騎士が待機しており「案内する」と言われて連れてこられたのだ。

というか付けられていたみたいだ。


謁見の間にはこの間顔を見た憲兵団総隊長のウォーダン、推測だが優秀な魔導士なのだろうエルフのユミルという男、鍛冶師のフォルカというドワーフが脇に並んでいる。

他にも美しい装飾の施された衣服を身に纏っている男達がいる。おそらく大臣か貴族なのだろう。

そしてこの場に騎士がいないことを考えると先日の脅しは十分に効いているようだ。


「よく来てくれたセラフよ。まずは先の非礼を詫びておこう」


と普通ならばあり得ない。王が軽く頭を下げた。

その瞬間周りにいた大臣や貴族達がどよめきの声を上げる。

SSランク冒険者の一人であり、かつ憲兵団総隊長を任される猛者を護衛に着けた王が一介の冒険者に頭を下げたのだ。これが驚かずにいられようか。

その光景を見ていた者達は皆、目の前の女を「謎の女性」から「王に謝罪させるほどの力を持つ強大な何か」に警戒心を引き上げる。


「謝る必要はありませんよ。私も少し大人げなかったですしね」


「ふむ、そう言ってくれると助かる」


「それで本当の要件は?まさか謝りたかっただけという事はないでしょう?」


相変わらずの喧嘩腰ではあるがセラフとしては舐められない方がいいと考え、ここまで乱暴な対応をしているのだ。


その声を受けて王は重々しげに口を開く。


「……うむ、実はな、お主の力を見込んでお願いがあるのだ」


お願い。本来王が口にするようなセリフではない。が目の前に佇むのは底のしれない化け物(・・・)

である。この化け物を前にしては普段の威厳溢れる言動は恐ろしくてとても出来ない。

ゆえにお願いである。出来るだけこの冒険者の逆鱗に触れないように可能な限り畏まった態度でお願いをするのだ。


「聞くだけなら聞きますよ。なんですか?」


セラフは内心としては少しやりすぎた、と少し後悔をしているが今更後には引けない。


「実はな、ここ王都より南に行ったところに金色に光り輝く巨大な塊が突如として出現したのだ」


……何か……どこかで聞いたような?

ていうかそれって……。


「その巨大な塊を我らは調査しようと思い偵察や調査を得意とする冒険者を幾人も送り込んだ。だがその全てが帰って来なかったのだ。これを我らは緊急事態と判断し名うての冒険者や騎士達を多数派遣した。だが帰ってきたのは身軽な冒険者達だけであり、そやつらの報告を聞くと「輝くような装甲を身に纏った恐ろしく強いゴーレムがそれを警護しており近づくことすら叶わなかった」という言葉が返ってきただけだった」


やっぱり俺のマイホームだ……。

ガーディアン達はきっちり仕事をこなしてくれているみたいだが少し頑張りすぎだろ。

まぁ命令を出したのは俺なんだから俺のせいといえばそうなんだが……。


「そこでセラフよ。お主にその金色の塊の調査を頼みたい!」


やっぱりそう来たか……どうしよう、実は諸悪の根源は私ですなんて口が裂けても言えない。


「え、ええと……わ、わかりました」


急に態度がしおらしくなったセラフを見て周りの者達が何事だ?と疑問に思い始める。


「受けてくれるか!感謝するセラフよ!この任が成功した暁には多額の報酬を約束しよう!」


「は、はは、ありがとう……ございます……」


やばい。どうしよう。

その後のことはあまり覚えておらずセラフはふらふらとした足取りで城を後にした。






「(う~ん、どうしようかな~。調査を頼むって王様は言ってたわけだからあることないこと適当に書いてごまかそうかな~)」


南大通りで悩みながらも歩を進めるセラフ。

この世界の調査をある程度は済んだのでそろそろ帰ろうかと思った矢先にこれである。


「あ、セラフさんじゃないですか。最近よく会いますね」


沈んでいたセラフに声を掛けたのはつい先日会ったザイールだ。

この間は薬草を取りに行くと言っていたのでそれが終わったのだろうか。


「どうも、薬草取りは終わったんですか?」


「ああ、無事に何事も無く終わりましたよ。セラフさんはこれからどちらに?」


「ええと、その、調査に……」


「調査って……ひょっとしてここから南に出現した金色の塊ですか!?」


ザイールは真剣な表情で質問をする。


「え、ええ。そうですけど……有名なんですか?」


「有名なんてもんじゃありませんよ!そのミッションをクリアした冒険者にはなんと100万コルの報酬が出るんですよ!冒険者達の間でも凄い話題になってるんです!」


「へ、へ~。そうなんだ~」


どうやら物凄い話題になっているようだ。というか高々調査程度で100万コルとは……王国はそんなにあれが気になるのか。


「実は私達もそれの調査を行うために薬草集めに行ってたんですよ。直接調べるのは難しそうですけど何日も張り込んで隙が出来た瞬間に調べられないかと思いましてね、長期戦に備えて道具類の補充とかを行ってたんです」


「な、なるほど。随分と計画的ですね」


頼むからそんなに本気にならないでください。いやほんと。


「まぁ、金色の塊のことが調べられなくてもそれを守っているゴーレムの戦力を調べて報告すればある程度は報酬が貰えますからね。ここで活躍してみせますよ!」


どうやらザイールはかなりやる気のようだ。これを止めるのは無理だろう。

さて、どうしたらいいものか。

いっそのこと船を仕舞ってしまうのもありだが、そうすると倉庫が使用不能になるし何かあった時の逃げ道もなくなってしまう。

それにここまで話題になっている船が突然消えるのも変だろう。

聡い者ならばまったく同時期に現れた自分とあの船を関連付けて調査を行う者も出てくるかもしれない。


結論として適当に何かしらの答えをあげてしまって天の叢雲をどこかに隠すのが一番だろう。というか最初から隠しておけばよかったな……。


「ザイールさん!」


「は、はい。なんですか?」


「私もその調査任務に同行させてください!」


「え、ええ!?い、いやむしろこちらからお願いしたいくらいですけど……いいんですか?」


「いいんです!」


「ま、まぁそこまで言うなら、よろしくお願いします」





「というわけで今回の調査任務はセラフさんが同行してくれるようになった!みんな、頑張ろう!」


「本当ですか!?セラフさんがいるなら百人力ですよ!リーダー、やりましたね!」


クリスが興奮気味に答える。

ここは冒険者ギルドにある酒場である。

ザイールがリーダーを務めるパーティーと合流して打ち合わせのようなものを行っている。


「いや、こいつは幸先がいいな!セラフの嬢ちゃんがいれば調査どころかあの金色の塊をぶんどれるかもしんねえな!」


グルドがエールの入った大きなジョッキを振りながら豪快に笑う。

ぶんどるも何も最初から俺の所有物なんですがね。


「頼もしいですね。セラフさん、よろしくお願いします!」


「あ、ああ。よろしく」


シンの良い笑顔の挨拶にぎこちなく答える。

自分のモノをこれから調査しに行くってなんだか不思議な感覚だ。


「お前ら、騒ぐのはいいがちゃんと打ち合わせをやるぞ。どんな依頼でも死ぬ可能性はあるんだから」


「へいへい。それじゃ頼もしいリーダーのお話を聞くとしますか」


「まったく……それじゃ今回の依頼は調査が主だ。戦闘はおまけ程度に考えてくれ。逃げられるチャンスがあるなら即刻逃げるからそのつもりで頼む」


最初の方こそ騒がしい雰囲気で大丈夫か?と思ったが曲がりなりにも彼らはプロ。

自分達が生き残るための努力はは怠らないらしい。その証拠に先ほどまでの雰囲気が打って変わって静かなものになっている。


「今回の調査は移動時間を含めずに5日間ほどは例の塊を調査しようと思っている。もちろん調査出来たらの話だがな。近づけるようなチャンスがなかった場合はそれを警護しているゴーレムの数や種類を調査するからそのつもりで頼む。まぁ基本的な姿勢は逃げの一手になると思うが……」


「もしも戦闘に入って逃げられなかったら?」


「その場合は……非常に情けない話なんだがセラフさんに協力してもらって適当に足なんかを攻撃してやっぱり逃げる。もしも殺してしまって報復なんかされたりすると厄介だからな。追撃できるチャンスでも逃げの姿勢は変えないから深追いをするなよ?」


どうやら単純に戦闘や調査だけでなくその後のこともちゃんと考えているようだ。

レベルはあまり高くないがこのザイールはという人物はどうやらいいリーダーのようだ。


「私の仕事は戦闘に突入してしまった時の足止め役ですね?」


「ああ。女性にこんなこと頼むのも情けないけどセラフさんの実力はかなりのものだ。よろしく頼む。」


「任されました」


さて、彼らにはどんな答えを用意しておくべきかな?







あれから一時解散して準備をしてもう一度集まってそのまま出発した。

現在位置は例の黄金の塊、またの名を天の叢雲の手前500メートル程度の地点だ。


「ここからでも確認できるな……よし、皆!もう少しだけ近づくぞ」


セラフは王都を出発してから皆がテントで休んでいる隙に天の叢雲の情報を確認した。

そうするとどうやら殺さないように!との注意が聞いていたのか、本当に誰も殺していないようだ。それでもしつこく向かって来た者は牢に入れているらしい。

セラフはあらかじめ船の警護を行っているガーディアンを全て引っ込めさせ、入船用のハッチを開けておけと指令を出しておいた。その後もガーディアンリーダーのプラチナにあれやこれやと指令を出しておいた。この芝居がうまくいけば皆がこの船に関する情報を誤解してくれるだろう。


「変だな……聞いた話じゃ多数のゴーレムがあれを守ってるって話だったのに誰もいない……」


「何かあったんじゃねぇか?」


「何かって……なに?」


「俺が知るかよ。とりあえずもう少し近づいてみようぜ」


「そうだな、あと警戒は怠るなよ」


ザイール達は船に近づくが何も起こる気配がない。

何があったのかと疑問に思っているとクリスが船体下部にあるハッチが開いているのに気付いた。


「あれ?あそこ……何か開いてません?」


「そうだな……入ってみるか」


「おいおい大丈夫かよ?」


「現段階じゃ何もわかってないんだ。目当てのゴーレムもいないしこのままじゃ何も進まないだろう?危なくなったら真っ先に逃げるし、それに心強い助っ人もいるんだ。とりあえずもう少しだけでも進んでみよう」


「僕もザイールさんに賛成です。このままじゃ帰るに帰れませんよ」


シンがザイールの案に同意する。


「ま、それもそうか。とりあえずいけるとこまで行きますか」


どうやらみんなは中に入るようだ。

ここまでは計画通り。プラチナ、うまくやってくれよ?




金色の塊の中に入ると中は想像よりもずっと広かった。というよりも広すぎる(・・・・)

それもそのはずである。この船には時空間魔法がかけられていて見た目よりも中はずっと広いのだ。天の叢雲はおよそ10倍程度の圧縮魔法が掛けられているので高さの上限は90メートル、奥行の上限は500メートルにもなるのだ。


ガーディアンが使う発進用のハッチではなく人が入るための入船用のハッチから入ったザイール達を迎えたものは巨大な部屋である。

床は巨大な一枚岩の大理石のようであり顔が映るほどに磨き込まれている。壁面も同じような素材でできており柱のような部分は金で出来た煌びやかな装飾が施されている。天井は空を映し出しており外の天気をそのまま嵌め込んだかのようだ。


「すっ……げ、……なんだよ……これ」


「美しさもすごいが……見た目よりも広すぎる。いったいどうなっているんだ……」


みなが一様に驚きの声を口にしている。

それもそうだろう。マイホームは自分の好きなように部屋を形造ることができる。根気さえあればこのようにどこかの王族の一室のようなマイホームも作ることが可能なのだ。

ていうか自分でもよくここまでやったもんだ……変なところで頑張りすぎだろ俺。


一同は巨大な広間の様な部屋を歩き複雑な装飾の施された両扉の前までくる。


「さて、未だに何もないのが怖いが……開けるぞ」


ザイールが扉を開けるとそこは長い廊下だった。

といってもただの廊下ではない。その両脇に10体のシルバーゴーレムと10体のゴールドゴーレムが剣を掲げ構えているのである。

最初は唯の置物だと思ったがやはり冒険者。すぐに件のゴーレムであると察知し各々が武器を抜く。


「っ!?…………襲って……こない?」


「……ピクリとも動かねえぜ……いったいどうなってやがんだ」


「いったい……何が起こっているんでしょうか?」


「とりあえず……もう少し進んでみませんか?」


さりげなくもう少し進めと皆の背中を押す。


「そ、そうだな……もう少しだけ進んでみるか」


危機感が麻痺してしまっているのかセラフの言葉をすんなりと受け入れてしまうザイール。

その後はゆっくりとその廊下を渡り切りやがて大きな扉が目の前に現れた。

ほんのりと青い色を帯びたその扉は高さ10メートルはあるだろう巨大なもので、とても人間の腕力では開けなさそうな重厚感を放っている。


「なんていうか……如何にもって感じの扉だが……開けるべきか否か……」


ザイールが先に進むべき迷っているとその意思を無視して扉がゆっくりと開きだした。


「な、なんだ!?」


「ひ、開きますよ!」


ギギギ…、と金属がこすれ合う音を響かせながら巨大な扉が開かれる。

中からは光が溢れ、一同は急な閃光に目を閉じ腕を前に出す。


「っ……総員警戒!」


「く、くそ……何だってんだ!」


「っ……!」


「まぶ……っし!」


だが自分はというとこういう演出(・・・・・・)が来るとあらかじめ分かっていたので先ほどから目を閉じて構えていた。

扉が完全に開き中から溢れていた光が収まると一同は目を(みは)った。


先ほどの広間よりも更に広く奥行50メートル、幅20メートル、高さは15メートルはあろうかという巨大な広間……というよりここは謁見の間である。

中央にはどこまでも続く赤絨毯が伸びており両側の窓には外の風景がそのまま映し出されている。

天井には重量が何百キロもありそうな巨大なシャンデリアが宙に浮いており、この部屋全体を高貴な光で照らしている。

そしてその最奥、何段も続く階段の上にはクリスタルで形作られたこの世のものとは思えぬ美しさと雄大さを併せ持つ玉座が存在している。そしてその玉座の周りには途中の廊下でも見たシルバーゴーレムとゴールドゴーレムが剣を掲げ佇んでいる。


そしてそれらの全てがただの現実逃避である。


視界に収めたくないもの。理解したくないもの。認識したくないもの。

この巨大な謁見の間で最も巨大な畏怖と威厳を放つ存在、玉座に座るプラチナゴーレムだ。



「こちらに来い、冒険者よ」



その静かな、まるで機械音のような声にザイール達は脳の信号を無視して勝手に歩き出す。

まるで現状で最も生き残る確率が高い行動を、反射行動のように体が脳を無視して勝手に動き出したのだ。

そしてその後をついていくセラフは……心の中で苦笑いをしていた。


「(う~ん、いろいろ演出の指定をしたけど似合いすぎだろ……プラチナ)」


セラフが指定した皆を誤解させるための解決策。

それは”ラスボス”である。

端的に言うと、この世界の人間では誰も敵わないモンスターを登場させて人を近づけないようにしよういう計画だ。

それに合わせてこの船の内装も少しいじったり、ゴーレム達が身に着けていた鎧や武具も近代的なブースターや装甲を外して、この世界の時代に合わせた豪華な剣や煌びやかな鎧、美しいマントなどを装備させていたのである。


だとしてもかなりのハマりっぷりである。ていうか自分から見ても結構かっこいいから困る。


そんなセラフとは対極的なテンションのザイール達は内心死を覚悟していた。


「(くそっ!……俺としたことが、驚きの連続で感覚が麻痺していたのか!?だとしても予定外のことが起きたならばさっさと撤退すればよかったろうに!)」


普段の大人しい”私”から焦った時に出る”俺”が出ているザイール。

ザイール達は階段の手前まで近寄る。

そこで再びプラチナの口が開いた。


「ふむ、少しばかり頭が高いな……跪け」


その言葉を聞いた瞬間にザイール達が足を砕かれたかのように跪く。

当然セラフはそんなプラチナの言葉を受けてもなんともないのだが雰囲気に合わせて跪いておく。


「冒険者諸君、話を始める前にプレゼントがある。受け取ってくれたまえ」


プラチナの少々大げさな仕草で傍に控えていたゴーレム達が動きだし鋼鉄の檻を持ってくる。

その中に閉じ込められていたのは最初に王国から調査を依頼された冒険者達や、次に派遣された騎士達だ。

中に閉じ込められている者達は皆が一様に怯えており青い顔をしている。


「私の船の周りをちょろちょろとうろついていたネズミだが……君達からしたら貴重なモノなのだろう?是非とも受け取ってくれたまえ」


「っ……は、はい!」


真っ青な顔でなんとか声を出すザイール。

グルドはそこそこ正気を保っているが他の二人はもはや立ち上がることさえ出来ないだろう。

ザイールの返事を受けてゴーレム達が檻を担いでどこかに消える。


「ここでネズミ共を解放して私の船を荒らされてはたまらんからな、プレゼントは外に出しておく。これが開錠の鍵だ受け取りたまえ」


一体のゴーレムが近づき上に鍵の乗っている盆をザイールの前に差し出す。

ザイールは震える手でその鍵を取り握りしめる。


「(なんか申し訳ない気分になってきた……ザイールさん、悪いけどもう少しだけ耐えてくれ!)」


「さて、プレゼントも終わったわけだ、そろそろ本題に入ろう。私の船に何をしに来た?」


プラチナの圧力を伴った声に意識が吹き飛びそうになるがギリギリのところで声を出す。


「ちょ、調査です……」


「調査……何の調査だ?」


「こ、この金色の船を調査せよと命を受け、ま、参りました……」


ザイールの返事を受けて無いヒゲをこするように顎に手を当て少し考えるプラチナ。


「では貴様らは自分の意思ではなく、誰か上の命令によってここに来たと?」


非常に答えにくい質問だ。

確かに調査任務を出したのは国だが冒険者にとっては強制ではなく自由参加なのだ。命令を受けて来たというよりは金稼ぎの為に来たというのが自分たちの現状である。

だがそんなことを正直に言ってしまったらその瞬間に消されてしまいそうだ。

故に生き残るための正常な判断としてザイールは「上の命令でやって来た」という事にした。……セラフの計画通りである。


「は、はい!私は国の命を受け、この地に降臨したこの船の調査にやって参りました!」


その返事を聞き、プラチナは顎にやっていた手を離し膝の上で手を組む。


「なるほどなるほど……小賢しいネズミを操る親玉がいるというわけか……気に入らんな」


「っ……!」


そこで突如としてセラフが剣を抜きプラチナに向かって飛び出した。


「皆さん!逃げて下さい!」


プラチナの警戒心が緩くなった一瞬の隙をついての行動だ。

セラフは一瞬の間に疾風迅雷を発動し高速でプラチナに詰め寄る。

ザイール達は怯えてはいたもののセラフの声を聞いた後、ほんの一瞬だけ迷った後に扉に向かって走り出した。

だが扉は開かない。輪っか状になっている掴みを全力で引っ張るがビクともしない。

セラフはというと電撃を纏った派手な一撃をプラチナの首に向かって振るうところである。

だがその雷の剣が後もう少しで届く!というところでプラチナの胸部と腹部の境目についている翠色のレンズのようなパーツから衝撃弾が放たれた。

衝撃をもろに受けたセラフは壁まで吹き飛びそのまま激突する。


セラフが壁に激突した後、ずり落ちるように地面まで落下する。

ボロボロになったセラフは当然起き上がらない。

頼みの綱のセラフが蚊のようにあっさりとやられ、ザイール達はこれ以上ないほどの絶望と共にいよいよ死を覚悟する。


……これもセラフの計画通りである。

王国にとってヒートドラゴンを討伐したセラフの実力は正に計測不能といったところだ。

だがその規格外の力を持つセラフがプラチナにあっさりとやられてしまう。

そしてその光景を目撃したザイール達がプラチナはセラフよりも強いということの絶対的な証明となるのだ。


「……眩しいだけの小細工か……つまらん」


「そこの冒険者よ、今回は貴様らを見逃してやろう。そして帰ったらその親玉にこう言っておけ。レベル150である我がプラチナと、レベル100以上の者のみで構成された我が軍団に勝てると思うのならば好きなだけネズミを送り込んで来い、とな」


「は、はい……!」


プラチナの声によりザイール達は理解した。


目の前の白銀の鎧に身を包んだ、この船の主であるゴーレムがレベル150であることを。

そして少なく見積もっても総勢30以上は下らない配下のゴーレム達が全員レベル100以上であることを。


「我が名はプラチナ。500年の長き眠りより目覚めし土くれの王である!我を倒し名声を得んとする者がおるならばかかって来るがいい。我はどんな者の挑戦でも受けよう!」


最後にプラチナの言葉が終わると同時に扉が開き、突如として巻き起こった旋風にセラフを含むザイール達が包み込まれ、強制的に退艦させられた。



少し長めですが一気に読んでほしいのでそのまま投稿。


クエストとは別のミッションについてですが、名指しされない限りは誰でも受けることが可能です。

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