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忘れるもの  作者: 衣緒
2/2

転校生


予鈴がなる。


新学期が始まるのだとドキドキもありながら、慣れてしまった高校生活。


担任が入ってくる。


でもドキドキ感なんて直ぐに消えて、戸惑いに変わったんだ。


そう、私が驚いたのは担任の後ろに付いてきていた人物。


「三宅君!?」


麻衣が席を立ち上がって叫びあげた。


周りはクスクスっと笑う。でも、笑い事じゃない。


だって担任の後ろにいたのは・・・


「今日は転校生を紹介する。さ、自己紹介して」


小林蓮こばやしれん、よろしく」


そう、朝ぶつかってしまった悠太にそっくりな人。


「えー、それじゃあ、佐々木の隣座って」


私はついつい彼を見つめてしまった。


本当に悠太そっくりの人。でも性格も声も違う・・・。


「そんな見ないでくれる?」


ボソッと私にだけ聞こえる声でそういう彼の目は、とても冷たかった。


SHRが終わり、麻衣が私の前に立ち、机をバンッと両手で叩いた。


「これどういうこと!?夢なの?夢なの!?」


麻衣は小林君を指差しそう言った。


「人に指差さないでくれる?うざいんだけど」


やっぱりこの人は悠太じゃない。この人を悠太と比べる事はできない。


「は?うざいとか・・・あんたなんかね、三宅君と比べもんになんないのよ!」


「麻衣!この人は悠太じゃないよ。悠太はもうここにはいないの」


教室は静まり返る。


「・・・えー、じゃあ式が始まるんで並んでー」


空気が重いまま私達は始業式を向かえた。


 始業式が終わってからもコソコソと話し声が聞こえる中、私達C組はみんな席に座っていた。


こんな光景初めてだったかもしれない。


それにこんなにも早く席替えをしたいと思った事も・・・。


下校時、私は何もなかったかのように麻衣のところへ近づいて行った。


「帰ろうー」


「う、うん・・・」


もちろん麻衣の反応は戸惑っていた。


きっと気を使わせているのだと思った。だって悠太が・・・悠太にそっくりな人が隣にいるんだから。


「・・・杏奈、私、信じなくてごめんね・・・。まさかあそこまで似てる人がいるなんて思わなくて」


「ううん・・・私も信じれなかったし!もういいじゃん!小林君は悠太じゃないんだし!」


でも本当は涙がでそうなほど苦しい。


もし悠太だったら、ってもし小林君が悠太の生まれ変わりだとしたら、って・・・。


私が悠太の葬儀で願った事がもし現実になったのなら、これは神様が私にくれた最後のチャンスなのかもしれないって・・・。

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