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獣化ウイルス

作者: 法玄

 「獣化ウイルス(TRANSFUR VIRUS)」と呼ばれるウイルスが作成されたということに。それが、悪の手に渡ったり、漏れ出したりすれば大変なことになる。直接、人間に感染することはないらしいが。感染ルートとしては、動物に感染し、その動物は獰猛となる。人間を襲う。襲われ、助かった人間はそのウイルスに感染、その後、襲われた動物と同じ姿になってしまうのだ。感染者からは感染することはない。


 そのウイルスは何者かに奪われてしまった。



 その犯人が特定されたのが、盗まれてから一年半たった日のことだ。それは、とある屋敷から出てきたコウモリに襲われた人間が、コウモリと化したのだ。その出てきた場所は森の中のひっそりとした小屋の中からである。そこに、ひとりの捜査官が派遣されたのである。彼の名前はアルフレッド。二年前に、FBIの捜査官になったばかりである。

 「くそ、地元警察にやらせればいいのに」

と、ぶつくさと文句を言いながら、小屋に向かって歩き始めた。古ぼけた小屋を見つけたのである。彼は小屋の扉を開ける。その中には誰もいない。生活の痕跡すらない。しかし、床を見ると、切れ目がある。アルフレッドはそこを持ち上げる。地下に続くはしごがあり、それを使って下に降りていった。

 地下には様々な精密機械が置かれている。まるで、映画に出てくるようなアジトみたいな場所である。

 「しかし、こんなものを森まで運んだな」

と、彼は驚き、少し感心していた。こんな機材を森の中まで運び、このような研究所を造りあげるなんて、すごいとしか言いようがない。

 「どうかな。連邦捜査官」

と、後ろからひとりの男性が現れた。おそらく、こいつが犯人だろう。その男の近くには大型犬用のおりまである。中にはドーベルマンという種の犬が入っていることがわかる。

 「すごい施設だな。そこだけは褒めてやる。ウイルスを返してもらう」

 「それはどうかな」

と、謎の男性はおりの中のドーベルマンを放ち、その場から逃げ去った。犬はアルフレッドに襲いかかる。そして、アルフレッドの左手に噛み付いたのである。犬を射殺したが、左手からは血が流れている。男性のあとを追いかける。まだ、この近くにいるに違いないと思い。

 その思ったことは実際にそうだった。男性の右足を撃ち、捕まえることができた。

 「観念しろ」

と、彼は逮捕したのである。


 

 ウイルスは全世界に売られてしまったことなど、アメリカの政府に知られていない。事件を解決したアルフレッドは休暇をとっていた。休暇は事件の二日後に取ったのである。左手の治療を含めて。

 「しかし、犬に噛まれると痛いものだなあ」

と、包帯が巻かれた左手を見る。包帯は一日に一回取り替えることになっている。そして、彼は包帯を外し、新しい包帯に取替え用とした時だった。手の甲にびっしりと茶色い短い絨毛が生えているのである。噛まれたドーベルマンと同じ色をしていたのだ。

 「まさか・・・」

アルフレッドはあることに気がついた。殺したドーベルマンも感染していたことに。しかし、現段階での治療法がない。一度感染してしまえば、獣化の道しか残されていなかったのだ。手のひらにはぷっくらとした黒い肉球が形成されていた。獣化はは残酷なもので、徐々に変化するのかすぐに変化し出すのかわからない。時の運なのである。コウモリのケースではその場で獣化してしまったが、アルフレッドの場合はわからないのである。その時である。彼は急に顔が痛み始める。彼の鼻は黒く染まり、黒褐色の獣毛が経始める。鼻付近と下顎の当たりは腕と同じ茶色い絨毛が生え揃い、顔にドーベルマンの獣毛が生え揃う。そして、顎は前に突き出していき、唇は黒く染まる。下も犬の舌に変化していき、歯も犬のものと変わってしまう。眉毛の位置には茶色い絨毛が斑のように生えていた。耳も変化していき、三角形の犬耳を折ったような感じの垂れ耳になったのだ。

 「ウォン(え)」

声帯も変わってしまい、人間の言葉を出すことができないのだ。ここから一気に獣化していくみたいである。体からは黒褐色の獣毛が生え、上着を抜いてみると、胸元には茶色い獣毛が生えている。体はだんだんと縮んでいく。両手の指は短くなり、肉球が形成され、爪は犬のものと変わっていった。骨格も変わり、両手を地面についてしまった。足首から茶色い獣毛が生え、踵が持ち上がる。ズボンがするりと脱げてしまい、尻からは細長いドーベルマンのしっぽが生えていた。細長い尻尾を自分の医師で動かすことができる。足も完全なるドーベルマンのものとなってしまった。彼はどこからどう見てもドーベルマン位しか見えないのだ。


 このあと、彼は保護され、施設で犬として暮らしているのだった。

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