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家郎の話し

作者: 02369385
掲載日:2026/02/26

オレ、山吹(やまぶき) 家郎(いえろう)

善太(ぜんた)とミズキは6月の久しぶりの晴れの日に、広場にいた。

高3になっても男女の幼なじみが学校の昼食を一緒に取っている。

たまにからかわれるがオレは気に入っている。


いや、気に入っていた。







次の日に学校へ行くと、善太がバイクのスリップ事故で亡くなったと聞かされた。







葬式が終わっても実感がない。

耳がキーンとなってボーッとして、いつのまにか2学期になってしまった。

オレはクラスではよくしゃべるムードメーカー的な立ち位置だったが、ずっとしゃべらない机で寝てるヤツになっている。

逆にミズキは大人しいタイプだったのに、

何かに急かされるようにしゃべり続けるタイプになって行った。


残されたオレ達は自然と疎遠になり、卒業式にも会話をせず連絡も一切なかった。



その後、実家の和菓子屋を手伝っていたがそもそも和菓子が好きではなく、

外に出るのも面倒になり、だんだんと引きこもって行った。


引きこもって4年、ミズキが東京の大学院に行くとか行ったとか親が話しているのを聞く。

しばらくしてオレは検索した新宿の中華屋のバイトの面接をし、受かった。

別にミズキに会いたいとかではなく、シンプルに自分の人生に焦ったからだ。



しかしバイトは最初は丁寧な感じもしたが、徐々にブラックバイトになって行った。

午後5時頃、怒号が飛び交う厨房を後にして

久しぶりに夜のシフトを入れ込まれずに帰れると思っていたら


「駅まで一緒に帰らない?」


と誘われた。

台田(だいだ)さん、バイトの先輩だ。

彼女は分かりやすく言うとライオンっぽい見た目のギャル。

年は同じくらいらしいが、よく分からない。

店が入っているビルを出たが、


「やっぱ公園行こう」


ここは新宿の西の方なのだが、大きい公園がある。

そちらへ引っ張られて2人でベンチに座った。

…えっ!告白えっ?と思っていたら



桃間(ももま) 善太(ぜんた)って子知ってるよね?」



と言われた。

ゾッとする。

オレはバイトでは無口で通しているので善太のことを話したことはない。


彼女は実は霊感があるらしく、

見えるだけでなくイタコ体質で霊を下ろせて話せると言う。

霊の善太がどうしてもオレと話したいと言ってるからここに連れて来たらしい。


それを聞きながら何故かオレは泣いていた。

台田さんが本当に見えるのか確かめる余裕はなかった。

ただ泣いていた。

泣くオレに台田さんが言う。

善太の仕草と口調で

あのパッと人を明るくするなんでも許されそうな笑顔をして


それは善太だった。



『これから僕が家郎にかかった呪いを解いてあげるから』



善太が話すには彼自身はとても素行が悪かったんだと言う。

そもそもバイク事故も自分のスピードの出しすぎで雨でスリップしたと言う。


「いや、それはそうなのかもしれないけど、もうしょうがないし、他に誰もケガしたとか聞いてないし」


とオレが言うと


『やっぱり覚えてないんだな、俺の女遊び』


と返された。

そう善太は一人称が俺にもなる、でも女遊び?


「いや確かに善太はイケメンだったし、モテてたけど」


『いや、違う、俺はモテるのをいいことに何人も股にかけて同時に付き合って「あれ…今となりに寝てるの誰だっけ?」みたいになるヤツだっただろ?』


何だろう確かにしゃべっているのは善太なのだが、何を言ってるんだこいつは?


『だから家郎は俺を美化してるんだよ。

本当は悪い所もスゲーあったのに

美化して、耳を塞いで、

いいヤツが死んだということにしないと耐えられなかった。』


「……」


『俺達ずっと3人だっただろ?

保育園からの幼なじみで高3になっても一緒にメシ食ったりして』


「それも?」


『いや、それは本当だよ。』


「それは本当なんだな?」


また泣きそうになった。

これまでオレが美化してたなんて言われたらどうすればいいんだ。


『そう、あってる。

だけど、高3の5月に俺はミズキに告白された。

そしてヤッて、その1ヶ月後別の女とヤッた帰り道に事故でスリップした』


「……」


『本当はするつもりなんてなかった。

ミズキは本当に友達だったんだ。

でも「自分はずっとずっと誰よりも前から好きだった、他の女の子たちにもしてるなら一回だけいいから付き合わなくていいからして欲しい」って言』


「やめろ!」


クソっ、頭がグルグルする。気持ち悪い。

本当にコイツ善太なんだろうか?


『俺を美化し続けてるのは家郎だけなんだ。

ミズキには本当に悪かったと思う。

あいつもよく耐えたよ本当。

でも怪我の巧名だけど俺としたから俺もただのクズだと思えた。

だから前に進めた。』


「お前!◯ね!…クソッ◯んでる、なんだそれクソか!」


『本当、笑えねーよな』


善太はあの

人をパッと明るくする

なんでも許されそうな笑顔をくもらせて言った。






オレはそれから台田さんと何だかんだで付き合った。と言いたいが

別に付き合うこともなく、別にライン交換もなく、

ブラックバイトを辞めて

一人暮らしを東京で始めた。


で、本当に久しぶりにオーブンレンジでプレーンのパウンドケーキを焼いた。

そこにレモンのシロップをハケで塗る。

誰と食べるわけでもないから切らずに少し冷えた物を素手で頬張る。


中はまだ熱い、ヤケドしそうだし手はベタベタする。

鼻水が出る。

オレは昔3人で食べたことを思い出していた。

これも美化なのかは知らないが、そんなのはどうでもいい。

今はとにかく思い出とパウンドケーキを食べている。

それだけだ。

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