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第4話「......」

 時は進み、入学式前日の夜。

 クロイツァー家の屋敷は、夜の静寂に包まれていた。

 レイヴンはベッドに横たわり、天井を見つめながらゲームの記憶を整理していた。


(……明日から、学園生活が始まる。)


 それは家族を守るための第一歩であり、同時に最大の試練でもある。

 学園には、ゲームで重要な役割を果たす人物たちが集まる。

 その中には、家族を救う鍵を握る者もいれば、クロイツァー家を確実に追い詰める存在もいる。


(まずは、最も警戒すべき人物を思い返そう)


 レイヴンは目を閉じ、記憶の中のある存在を思い浮かべた。


(……一番厄介なのは、やっぱりゲームの主人公だ)


『エターナルクレスト』では、プレイヤーが男主人公か女主人公を選ぶことができ、それぞれのルートで物語の展開が少し異なる。

 どちらもクロイツァー家と深く関わる存在であり、避けて通ることはできない。


(問題は、この世界にはどっちの主人公が存在しているのかってことだな)


 レイヴンの脳裏に、それぞれの主人公の特徴が浮かび上がる。


【男主人公】

・平民出身の青年。剣術と魔法の両方をバランスよく使いこなすオールラウンダー。

・正義感が強く、どんな相手にも公平に接する。

・彼のルートでは、クロイツァー家は完全に悪役として描かれ、レイヴンは必ず討伐される。敵対ルートしか存在しないため、避けることは不可能。


(……もしこっちだったら、確実に敵だ)


 このルートに入れば、どんなに努力しても結末は変えられない。

 クロイツァー家は滅び、レイヴン自身も討伐される運命にある。


(接触を避けることはできないけど、少しでもダメージを抑える方法を探すしかないな)


【女主人公】

・同じく平民出身の少女。治癒魔法とサポート系の魔法に長けている。

・思慮深く、状況を冷静に判断することができる。クロイツァー家に対しても一方的な偏見は持たない。

・彼女のルートでは、レイヴンは完全に討伐されることはなく、貴族位の剥奪で止まる可能性がある。冤罪を晴らすことはできないが、家族を守る余地は残されている。


(……もしこっちなら、最悪の事態は避けられるかもしれない)


 完全な勝利は望めないが、家族を守るための最低限のラインは確保できる。

 それでも、クロイツァー家の名誉は失われ、没落は避けられない。


(どっちにしても、厳しい状況には変わりないな)


(……でも、どっちがこの世界にいるんだ?)


 レイヴンはゲームの記憶を必死に辿るが、この世界がどちらのルートに基づいているのかは分からない。 

 それが一番の問題だった。


(とにかく、平民出身の生徒には要注意だ)


 どちらの主人公も平民出身であることは共通している。

 明日の入学式で、平民の中に異様な存在感を持つ人物がいれば、それが主人公の可能性が高い。


(最初の接触で見極めるしかないか……)


 喋ることができないというハンデを抱えながらも、レイヴンは学園生活で主人公と敵対しないという決意を固めた。


(それに、学園には他にも厄介な連中がいる)


 王族、魔族の血を引くキャラ、そして貴族社会の権力者たち。彼らがどのように動くのかも見極めなければならない。誰が味方で、誰が敵なのか――それを知るためにも、学園での人間関係を慎重に築いていく必要がある。


(……こうして見ると、やっぱり学園が全ての鍵だな)


 学園での立ち回りが、家族の未来を左右する。

 明日から始まる学園生活――そこで、レイヴンは自分の運命を切り開かなければならない。


(喋れなくても、やってやるさ......!)


 心の中で静かに決意を固めたその時、窓の外から夜の冷たい風が吹き込んだ。

 明日は、いよいよ新たな運命の幕開けだ。

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