【第四話】似た者同士。
僕の名前はメラ・リアス。一応、魔王様の騎士として働いている魔族だ。
今日は、魔王様がまだ支配下に置けていない森へと調査にきていた。
その森には、魔物の中でも凶悪なものたちが生息していて、「死の森」と呼ばれ人間からも魔族からも恐れられている。
今回、僕がそんな恐い所に調査へ派遣された理由は、魔族の中で十位以内に入るほどの強さがあるからだ。
魔王様の騎士として働いている以上、それ相応の強さがあって、危険な所にも臆せず飛び込まなければならない。
でも、僕は本当はすごく臆病で怖がりなのだ。
僕は正直、魔王様の騎士になんてなりたくないし、平和に暮らしたい。
危険な所になんて行きたくない。怪我したくない。欲を言えば実家で寝ていたい。
それでも、僕が魔王様の騎士をやっているのは、魔王様直々に指名されたからだ。
普通、魔王様の騎士は立候補制なのだが、なぜか魔王様は僕の家まで来て「俺様の騎士になれ」と指名してきたのだ。
当然僕に拒否権は無く、仕方なく騎士を続けている。
それでも一応騎士としてとして働いていて、結構な額のお給料も貰っているので、「死の森」にも調査に来た。
まさか、そこで見知らぬ少女の怪我を治す事になんてなると思っていなかった。
調査が一区切りついたので休憩しようと、死の森の中にある洞窟に入った。
今日はまぁまぁ冷えるから、外よりも少し暖かい洞窟の中は休むのに最適なのだ。
そして、魔物がいないか周囲を見回した時、僕は悲鳴をあげそうになった。
全身血まみれの、真っ黒なツノと翼の生えた少女が歩いていたのだ。
こんな真っ暗な洞窟の中に血まみれのヒトがいるって、最恐のホラーである。
僕は、震えながらもどうにか口を押さえて、その少女を観察する。
少女には、一本のドラゴンのようなツノと、ボロボロだが大きな翼があった。
本来、魔物のツノと翼は、どちらかしか生えないのである。
ツノが生えている魔物は魔法が強く、翼が生えている魔物は肉弾戦が強い。
ツノも翼もある魔物なんて、いるはずないのだ。
それなのに、この少女にはどちらも生えている。
どういう事かと考えながら、僕は少女の後をついて行く。
魔王様の支配下にいる魔物は「魔族」と呼ばれ、支配下に入ってないものは、そのまま「魔物」と呼ばれている。ツノと翼の生えた魔物なんて情報をしらないから、きっとこの少女は魔族ではないのだろう。
なにより、魔族は「死の森には決して入るなよ。まじで入ったら死ぬからね。全部自己責任で頼むよ。」って幼少から教えられているから、死の森にいる時点で、ただの馬鹿か魔物って話になるのだ。
たまに死にたくて此処にくるヒトもいるけれど、少女は死にたそうには見えなかった。
逆に、「もっと生きたい」という、強い意志が見えた。
でも、少女は暗闇のせいで目が見えず、壁に寄りかかって自分の行く道を手で探りながら、よたよたと歩いている。そして、怪我が痛むのか、時々苦しそうな声をあげていた。
それを見ていると、もはや可哀想になってくる。
傷とか治してあげたい所だけど、まだ正体がわからないし、危険性があるかもしれないから、容易に近づく事ができない。
助けてあげたい気持ちをぐっと我慢して、少女から少し距離をあげた所で見守っていると、僕の足元から「パキッ」という音がした。
どうやら小枝を踏んでしまったらしい。
少女が万が一襲ってきても良いように、魔法の準備をする。
少女は、すごく焦りながら僕を探しているようだった。
魔物か何かだと思ったのだろうか。
その焦りように若干の心配を感じていると、案の定少女が壁から手を離してしまって、ふらつきだす。
どうしよう、助けに入ったほうがいいだろうか。
僕が考えているうちに、少女が体勢を崩してしまい、、、
ドスン、という大きな音を出して転んだ。
うわ、あれ絶対痛いやつだ。
そう思って自分でも架空の痛みを感じながら、少女に駆け寄ろうとする。
しかし、少女が声を上げて泣き出してしまった。
えっ、えっ、えぇーーー!?!?!?
僕の脳内は大パニックである。
えっ、ど、どうしたらいい!?!?
怪我の治療してあげたほうがいいかな!?
で、でも、こんな髪の毛に赤メッシュ入ってる見た目チャラ男変質者に言われても「はぁ?」って感じだよね!!!てか自分で言っててグサッときたな!!
それに、泣いてるのって他人に見られたくないよなーー、、、僕もそうだからなーー、、、。
えー、、、マジでどうするのが正解なんだろうか、、、誰か助けて、、、。
そんな事を永遠と考えて迷ってるうちに、少女がいつの間にか泣き止んでいた。
あっ、あ!今か!今助けてあげればいいのか!
そう思ってドキドキしながら少女に近づく。
少女は暗闇で目が見えてなかったので、僕の適正属性の炎を出して、灯りの代わりにした。
魔族のほとんどは闇属性だが、僕みたいに、たまに闇属性以外の魔族がいる。
その者たちは他の魔族より魔法が得意とされていて、僕が魔王様の騎士に選ばれた理由でもあるのだろう。
逆にそれしか取り柄ないんだよね、って考えてしまったら泣きたくなってきた。
泣くのを我慢して少女の方を見る。
長い髪の毛で見えなかったが、少女はとても綺麗な顔をしていた。
それに、いろいろな青が入り混じった瞳は、海のように透き通っていて、まるで宝石みたいだった。
少女の瞳をを見ていたら、少女が僕を睨んだ。
僕はハッとして、顔を青ざめる。
うわー!!ご、ごめんなさい!!こんな不審者がキモくて、本当ごめんなさい!!
しゅんとして、自然に視線が落ちると、少女の血まみれの足が見えた。
傷口は無かったから、なにかの血がかかってしまっただけなのだろう。
そう思って安心したが、どこかの学生のような服を着ていて、スカートが短く、凄く寒そうであった。
いくら洞窟が暖かいといっても、「外に比べて」なので、まぁまぁ寒いのだ。
少女も震えていたので、咄嗟に羽織っていたコートを少女の膝にかけた。
そして、コートをかけてから自分の行動を考え直す。
あぁもう!!!僕は何をしてんだ!!!こんな変質者のコート膝にかけられたら気持ち悪すぎて吐くだろ!!!
やばい、セクハラで僕捕まらないよね?えっ、恐い恐い恐い!!!
少女は、一言も話さずにコートと僕を交互に見てから、僕の事をじっと睨んだ。
まーー、そーなりますわな!!嫌ですよね、本当ごめんなさい!!それ捨ててくれて大丈夫なんで!!ヴァーーーー、気まずい!!!僕マジで、なんでこんなことしたの!?!?ここからどうしたらいい!?!?
なんて言おうかと迷っている時、魔王様を守るもう1人の騎士の事が浮かんできた。
あぁ、そうだ。あいつの真似をしよう。
あいつは、女の子の扱いに慣れてるから、あいつの真似をすれば、この少女を治療して助けてあげれるかも。
そう思って、あいつが言いそうな事を考えてから、一つ咳払いをして、あいつっぽいキラキラ顔を意識する。
そして、少女に手を差し伸べて言う。
「だ、大丈夫?立てそう?」
最初詰まっちゃったけど、でも言えた!!!!
我ながら、かっこよく出来たんじゃなかろうか!!!
そんな達成感に浸りながら、少女が手を取るのを待つ。
だが、数分しても、一向に手を取る気配がない。
それどころか、少女の眉間にしわがよっている。
僕は絶望を感じながら、少女に差し伸べた手を回収した。
、、、、、これ完全に間違えましたわ、、、、。
駄目でしたよ、駄目でした!!あいつの真似したって駄目でした!!
僕なんかじゃ無理でした!!今めっちゃ死にたいです!!!
この場から消え去ってもいいですかね!!!!!
でも、少女の事を放っておくわけにもいかないので、泣きそうになりながら聞いてみる。
『エット、、、け、怪我、治療できるんですけド、、、良けば、ち、治療しましょう、カ、、?』
ところどころ声も裏返ってしまったし、ボソボソ喋ってしまった。
あぁ、僕やっぱり不審者、、、完全なる不審者、、、。
悲鳴上げられても文句言えない状況だったけど、少女は、「怪我の治療」に食いついてくれたのか、首がもげそうになるくらい頷いた。
瑠海とメラ、タイプがめっちゃ似てますね。
それと、どっちも自分の顔がいい事に無自覚です。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
自分は喜びの舞を踊ってます。