【第二話】今日だけで激痛感じすぎじゃない?
投稿は不定期になりそうです。
ですが、最低1週間に一回は投稿したいなーって思ってます。
あれから数時間、私は空を飛び続けていた。
空は黒く染まっていて、大きな満月が昇っていた。
いつの間にか日が暮れていたらしい。
そして、私が何で動かすごとに痛む翼で、数時間飛び続ける羽目になっているのか。
それはひとえに私の見た目である!!!
頭から生えた一本ツノ、ボロボロな大きな翼、赤黒く染まった制服、それに加えて全体的に血まみれなのだ。
大聖堂の周りには大きな街が広がっていたのだが、こんな姿で人前に出れる訳もなく、、、。
結果私は、街から離れた森的なのを探して数時間彷徨う事になっていたのだ。
まぁ、王と兵隊に攻撃(1人殺しちゃったけど)した時点で、あの街には私の存在広まっちゃっただろうし、凶悪殺人犯として指名手配されてる可能性が大いにあるからね。うん、なんにせよ無理でしたね。
見た目がどうにかなれば、私の存在が知られてない遠くの街とか行けたのにな。
一応私、人間(元)だから常識がある、、、はずだ。
あれ、私常識あるよね?この世界と私の世界の常識違うなんて事ないよね?ないであってくれよ??
そもそも、ラノベとかで大体想像ついてるけど、私たちの世界と全然違う世界に1人きりって、詰んでない?
しかも、王のこと攻撃して逃げてきちゃったしな。
、、、これ、人と会ったら即死じゃない?
この見た目で逃げてくれるかもしれないけど、私がいるって情報が王とかに伝わって、強い人たちが集まって倒しにきたら終わりじゃないか、、、。
いくら異世界から召喚された人が強いって言ったって、私はまだ全然鍛錬してないし、魔法の使い方も、スキルの使い方も分からないのだ。絶対殺されるって!
、、、今喋ってて(?)思ったけど、私本当に詰んでない?
これから全部自分の力だけで、魔王になれるくらい強くなる必要があるんでしょ。やばいね!自分で決めたけどやばいね!
そんな事を考えてちょっと絶望したところで、30メートルくらいはありそうな大きな樹木がたくさん生えている、ジャングルのような所が見えてきた。
私の体力と精神は、もう限界に達していたからだろうか。
街が見えなくなり、視界の全てが壮大なジャングルらしき場所になったところで、翼が羽ばたくのを止めてしまった。
今は空の上だ。しかも、街にいる人たちに気づかれないように、結構な高度にいるのだ。
つまり、空から落ちて死にそうなのである。
って!冷静に状況説明してる場合じゃない!!
私はこんな所で死ぬわけにはいかないんだ!!魔王になって復讐するんだ!!
第一、あんなカッコつけたのに、こんなんで死ぬとか恥ずかしすぎる!!!
そんな事を思っていたら、地面がもう目の前にあった。
なんとか受け身を取ろうと、力一杯体を捻った時。
グシャッ
そんな、何かを潰したような、鈍い音が聞こえた。
赤黒い血が、周囲に飛び散っている。
そう。聞こえたし、見えているのだ。
つまり、生きている!!
やった!!やった!!
私は目から涙が出るほど安堵した。
そして、そんな安堵を感じてから、やっと違和感に気づいた。
あれ、何で生きているのだ。
私の体からは、大聖堂のガラスを割った時に怪我した腕の傷と、ツノで怪我した手の傷と、矢で刺された翼の傷しかない。
私じゃないなら、この血と、さっきの音は何?
そう思って、ふと、下を見たら
人型の何かが、潰れていた。
うわぁぁぁ!!
私は、びっくりして後ろに後退りした。
ひ、人が潰れてる、、、。
いや、潰れている、じゃなくて、私が潰しちゃった、、、?
私が地面を見た時には人の姿はなかったから、受け身を取ろうとして体を捻った時に、横にいて当たってしまったのかもしれない。
いやもう、「かもしれない」じゃなくて、確定だわ!
私が、この人クッションにして無傷なんですわ!!
え、えぇー、どうしよ。
私の凡ミスで、この人巻き添えくらって死んじゃったよ。
でも、この犠牲がなきゃ私、死んでるんだよね。
そう思ったら、強い感情が襲ってきた。
あぁ、駄目だな。私が死ななくてよかったって、思っちゃってる。
この人を、故意ではないけれど殺してしまったのに、恐怖とか申し訳なさとか、全然感じない。
生きてて良かった、そんな安堵が、心を支配している。
私は、もう、心まで化け物になってしまったのだ。
魔王になって復讐すると誓って、兵隊を殺した時点で、私はきっと人間ではなくなった。
それでも、私は生きていくんだ。
もう、自分が変わっていくのを、恐れたりなんてしない。
そう自分に誓って、潰し殺してしまった人を、せめて土に埋めてあげようと穴を掘り始めた時、背中に激痛を感じた。
咄嗟に後ろを振り向くと、私よりも一回り大きいくらいの背丈で、全身緑色の肌に布を巻き付けていて、頭から小さなツノが生えている、まるでゴブリンみたいな奴が私の背中を殴っていた。
って痛い痛い痛い!!!
私に気づかれてもお構いなしに、ゴブリン(仮)は私の背中を殴り続けている。
何処かの骨が砕けた音がした。
いっっっっった!!!
私は、半ば転がるようにしてゴブリン(仮)から距離を取り、ジャングルの奥に全力疾走した。
後ろを振り向くと、ゴブリン(仮)の姿は、もう豆粒くらいになっていた。
走りながら考える。
まさか、早く家に帰る為に鍛えられた足が、こんな所で役に立つとは。
そんな事を思ったら、いつのまにか歯軋りをしていた。
だって、なんて皮肉な事だろう。
父と母に叩かれない為に速くなった足が、今私の命を救っている。
私が、私の足が速い事を、素直に喜べば良いのだ。
喜べれば、良いのに、、、。
結果的に、父と母のおかげで私が今生きていると思うと、喜ぶ事なんて絶対に出来なかった。
今までの地獄の日々が、脳裏にチラつく。
死ななくて良かったけど、私の気持ちはぐちゃぐちゃだった。
最後まで読んでくれて、本当ありがとうございます。