【第一話】私が普通じゃなくなった日。
週一くらいで投稿できたらいいなって思ってます。
目がおかしくなるような紫色の空。
そんな空を飛ぶ、ツノの生えた血まみれの少女。
少女はのちに、世界を変える事になる。
私、浅野 瑠海は、普通の隠キャ高校生だった。
人と話すのが苦手で、人に話しかけられるといつも固まってしまって、クラスの陽キャからいじめられて、孤立してる、まぁ、可哀想な高校生 だが、まだ「普通」の範疇だった。
あの日までは。
あの日は、私をいじめてる奴らの代わりに、放課後残って掃除をしていたから、帰るのが遅くなってしまっていた。
早く帰らなければ、父に叩かれて、唯一の娯楽の本を取り上げられてしまう!そう思って、薄暗くなったいつもの帰り道を必死に走っていた。
いつもの十字路を左に行って、いつも私が来た途端に赤になる信号を苛立ちながら待って、いつもの抜け道を使った先に、家に着く、、、はずだったのだ。
そこには家なんか無かった。
家どころじゃなかった。
世界が、変わっていた。
目の前には司教のような服を着た老人。
私の足元には魔法陣のような紋章。
とっさに周囲を見渡すと、いつもの道なんてなく、大きな大聖堂の中にいるようだった。
そして、そんな大聖堂にギュウギュウに入っている大勢の人、人、人、、、がこっちを見ながら歓声を上げまくっていた。
あまりの情報過多に、私の脳がシャットダウンしそうになったその時、誰かの「鎮まれ」という声がして、歓声が止んだ。
その声の方を見ると、白髪でいかつい顔をしている老人が立っていた。
頭の上には宝石がごろごろ付いた冠がのっていて、肩には高そうな真っ白のマントを羽織っている。
まるで王様みたいだ。
私が「あの冠何円するのかなぁ」とかぼーっと考えてる間に、その老人が口を開いた。
「余はこの国の王である。お主は、魔王を倒す為に異世界から召喚された。」
は?
え?ちょっと待って、理解が追いつかない!!
「魔王倒す為に異世界から召喚」!?なんのラノベ作品なのかな!?
というか、本当に王様だったし!!
私の脳が爆発寸前の所で、王様が私をじっと見ている事に気づいた。
「お主、凄いな。こんな衝撃的なことを言われても顔色ひとつ変えないとは。」
あんた馬鹿か!?!?
よく見ろよ!!察しろよ!!こんな事言われて動じない訳ないだろ!!
私は人前で声を発するのも怖いし、行動するのも怖いので、「困惑してますよ」という意味を込めて、王様をじっと見つめた。
なのに自称王様は頭のおかしい事を言い出した。
「やはりお主は勇者にふさわしいという事だ。」
ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!
この人頭のネジ吹っ飛んでるのか!?
何勝手に勇者にしてるんだよ!!めっちゃ上から目線だし!!
そもそも、この国の身勝手極まりない理由で、私異世界に呼び出されてるんですよ!?
自分の国どころか、世界違うんですよ!?
私可哀想すぎるでしょ!!人の心を持て!!
「まずこの世界についてだが、、、」
何勝手に説明始めてんの!?
まず休ませてよぉぉぉぉぉ!!
私が脳をフル回転させて聞いた王様の説明はこうだった。
この世界はよく漫画とかでみる魔法があって、魔物やエルフとかが居るファンタジー世界らしい。
そして、昔から人族(人の事。ここの王様と国もそう)と魔族(魔物とか魔王)は敵対しあっていて、両者拮抗って感じだったから、領土を分けて暮らしていたんだと。
でも、最近になって2人いた魔王(この世界は女と男で魔王が2人いるらしい)の、1,000年生きてた女の魔王が寿命で死んだから、いまこそ人族が魔族滅ぼそうー!ってなって、力をつけていた所なんだって。
で、どっかのバカが、「あ、異世界から来た人間って強いんじゃね?」って言って、勇者として私を召喚したんですって!!!本当バカだろ!!!
でも実際、異世界から来た人間はこの世界の人より魔力が強くて、特殊なスキルを持ってるらしい。
過去に一回人間召喚したけど、強かったんだって。
この世界と前の世界で、世界が違いすぎて3日で自死したらしいけど。
ていうのが、王様から聞いた話。
、、、不安しかないね。
そして今から、私の魔法属性を調べるらしい。
魔法属性とは、火、水、風、土、の四つで、この中から自分に適した属性があるんだって。
適してない属性は、いくら魔力があっても使えないそうだ。
それに加えて、闇と光っていう2つの属性があるらしいけど、闇は魔族しか適性がなくて、光はここ1,000年適性者がいないくらい希少な属性だから、この二つは例外だ。
そして目の前には大きな水晶が準備されている。
これに手をかざすと魔法属性が分かるのだ。
司教らしき人や周りの人たちが、キラキラした目でこちらを見ている。
王様は、射殺すような鋭い眼光で私を見ていた。でも、その瞳の中には期待が見えた。
私は震える右手を水晶にかざす。
なんの属性だろうか。
私は、人と話すのが苦手で感情があまり顔にでないから、周囲から気味悪がられ、いじめられてきた。
母と父は、成績が良くないと私を叩いた。満点をとっても褒めてくれる事も無い。
誕生日プレゼントは、お金だけ渡されて、「本以外買ってくるな」と言われ自分で買いに行く。
そんな、どこもかしこも地獄な世界を変えてくれたのがファンタジー小説だ。
イラストに惹かれて買ったそれは、私の光だった。
こんな現実世界ではあり得ない事の数々、面白いストーリー、可愛いキャラクター。
私の世界に色をつけてくれたんだ。
だから、この世界に召喚された時は「ふざけるな!」って思ったけど、今は感謝している。
この世界には私をいじめる人たちも、ことあるごとに叩く親もいない。
しかも私に光をくれた異世界なのだ!
こんなの、嬉しいに決まってる。
属性が分かったら、魔法をたくさん練習しよう。
特殊スキルもいっぱい磨こう。
私を信じてくれる人たちのために、頑張って戦おう。
そして、大勢の人に看取られながら死ぬのだ。
そう誓った所で、水晶に属性の文字が浮かんだ。
ワクワクしながら、手を退けた。
だけど、そんなワクワクは、喜びは、一瞬で消え去った。
司教が声を出して読んだ。
「属性−闇、、、?」
周囲の人がざわつく。
私は咄嗟に王様を見た。
王様の目は、さっきとは比べ物にならないくらい鋭い目をしていた。
もう、瞳の中には期待など無かった。
あるのは、殺意だけ。
息が上手くできない。
現実を、脳が理解したく無いと、受け入れたく無いと言っている。
ぐちゃぐちゃした感情のままに、爪を立てて頭を引っ掻くと、引っ掻いた所に激痛がした。
痛みが去ってから引っ掻いた所を触ってみると、一本のツノらしき物が生えていた。
ゴツゴツしていて、先端がとんがっていたから、少し手を切ってしまった。
その血が、とても美味しそうに見えた。
なんでかは分からないけど、本当に美味しそうに見えたのだ。
だから、衝動のままに舐めてしまった。
それを見て、誰かが言った。
「化け物」
私の心は、その一言で壊れてしまった。
爪で引っ掻いたせいで、頭からは血がでてて、引っ掻いた爪は、誰かを殺したのかというほど真っ赤に染まっている。結んでたはずの黒髪は、いつのまにか解けてて、ぐちゃぐちゃになっている。白い制服も、血のせいで赤黒く染まっていた。
それに、さっきの衝動。
あぁ、本当に化け物だ。
そう思ったら、背中にものすごい激痛が走った。
少しして、痛みが去ったと思ったら周囲の人たちが悲鳴をあげて逃げ出した。
王様はそばにいた兵隊達になにか命令をしていた。
触ってみたら、服を突き破って生えてきた、翼あった。
なんで、、、。
この場にいたく無い。
自分が自分じゃなくなってしまう。
どうしてこんな事になったんだ。
そんな事を思ったら、翼が勝手に動き出して、飛んだ。
嫌だ嫌だ、こんな事しては人間ではなくなる。
なくなるのに、、、。
翼は動き続けている。
私は、なんでこんな目に遭わなくちゃいけないの?
せっかく地獄から抜け出せて、楽しい未来が待ってると思ったのに、なんでこんな事になるの?
辛い辛い。
誰か助けて。
フラフラと大聖堂の上へ飛んでいると、翼の方に激痛を感じた。
あまりの痛みに絶叫した。
力を振り絞って、首を動かして翼の方を見ると、大きな矢が突き刺さっていた。
矢が刺さった傷口から、血がたくさん出ていた。
そして、矢を打った方向を見ると、王様と、矢を構えているたくさんの兵隊がいた。
その時、すごい激情に襲われた。
殺してやる。
激情に任せながら翼に刺さっていた矢を、力一杯王様の方へ投げ返した。
王様には当たらなかったが、兵隊の1人に突き刺さっていた。
矢は、兵隊の心臓を射抜いていた。
周りの兵隊が慌てた。
王様を守る奴や、腰を抜かした奴、弓矢を置いて逃げ出す奴なんかもいた。
それを見て、私はたまらなく快感を感じた。
いい気味だ、と。
そう思った時、私は気づいたのだ。
復讐してやる。
私を怖がった奴を、闇属性だったからと逃げ出した奴を、私の姿が変わったからと殺そうとしてきた王を!
大聖堂の天井は大きなガラスになっていた所があったから、私はそこを腕で割って外に出た。
腕からは血がたくさん出ていた。
その血を舐めながら、王を睨む。
王は全く怖気付いていなかった、それどころか、私のことを睨み返してきた。
あの王は、きっとまた異世界から人間を召喚して、魔族を倒そうとするだろう。
だから、私は決めた。
私が魔王になって、人族ごと王を滅ぼしてやる。
私は王たちを背に向けて、紫色の空を飛んだ。
翼を動かす度にずくずくと痛むこの傷は、きっと治らない。
それが、この傷が、復讐を誓った証だ。
こんにちは猫ノ助です。
最後まで読んでくださってありがとうがざいます。
「仕方ねぇ、読んでやるか!」って思ったら次の話も読んでくださると嬉しいです。