チョコは本命以外要りません…?
作風変わっちゃった…。
1日クオリティとか言ってますが、2時間です。
俺には3つ子の幼なじみがいる。
歌嶺一葉、咲、そして志保である。
3人はいつも俺の家に遊びに来たり、一緒に帰ったりしていた。
そんな彼女たちから初めてチョコを貰ったのは、中学2年のバレンタイン。しかし、2月14日にくれたのは一葉のみ。咲は翌日の2月15日、志保に至ってはその次の日の2月16日だった。
咲と志保は次こそバレンタインに間に合わせるからと言っていたが、その翌年も咲は2月15日、志保は2月16日だった。
時間を守る気のない彼女たちに俺は正直飽き飽きしていた。それと同時に、バレンタインに遅れることなくチョコを渡してくれる一葉に好意を抱いた。
高校1年、バレンタイン3日前。
「それで、今年のバレンタインも暁斗にあげるって事でいい?」
「へー、お姉ちゃんもあげるんだ…じゃあ私もあげようかな」
「うん…私も」
そう一葉、咲、志保は言う。しかし、俺は言うべきことがある。
「悪いんだけど、咲と志保のはいらない」
「え?」
「…え?」
「俺、一葉のだけ貰いたいんだ」
「…いや、別に咲と志保のも貰ってあげればいいんじゃ?」
「俺はケジメをつけたいんだよ、咲と志保のまで貰いたくないからさ」
「…バカじゃないの?」
「ああ、俺はバカだ、でも時間通りにチョコも渡せないお前らの方がよっぽどバカだよ!」
しーんとなる空気。咲は今にも溢れそうな涙を拭いて、俺の部屋を出ていった。
「その…私もあげちゃ、ダメなの…?」
「ああ、悪いが、今年は貰いたくない」
「そんな…」
志保も咲の後を追うように部屋を出ていった。
「という訳で、一葉、今年もよろしくな」
「あ、うん!」
一葉はにこやかに笑う。チョコを貰った後、俺は一葉に正式に告白をするつもりだ。咲と志保には申し訳ないけど。
まあ、彼女たちは期日も守れないのだ、そんな人と付き合ったとしてもデートの時間に遅れることくらい目に見えてるし。
一葉が俺の部屋を出ていく。俺はバレンタインの日にどうやってあいつに告白しようかと悩んでいた。
バレンタイン当日。
この3日間、咲と志保は俺の家に遊びに来なくなっていた。まあそんな事はどうでもいい。
帰りのショートが終わると、一葉がカバンを背負ってどこかに行く。これは帰るということではなく、屋上で渡すというサインだ。
いよいよ俺も彼女持ちになるのか…、その期待で頭がいっぱいになった。
階段を2段飛ばしで駆け上がり、屋上のドアノブに手をかける。そこで。
聞こえなかった方が良かった声が聞こえてしまった。
「歌嶺さん、本当にこのチョコ、貰っていいんだよな?」
男子の声?、しかも、歌嶺さん?
最初は咲か志保がチョコを誰かに渡しているのかもと思った。しかし、
「いいよ、私、大森君のこと大好きだし」
まぎれもなく一葉の声。は?、大森?、大好き…?
「俺も、歌嶺さんの事が好きです、付き合ってもらえますか?」
「嬉しい!」
そんな声が聞こえたと思ったら、屋上が静かになった。
もしかして、キス…してるのか?
嘘だよな?、おい!
「知ってた?」
ふいに後ろから声が聞こえる。咲だ。
「お姉ちゃん、暁斗の他にも男がいたんだ。暁斗の事は所詮遊びだよ」
「は…?」
「今年もチョコあげるって言ってて、正気じゃないって思ってたし、その…私も暁斗の事、好きだったし」
「じゃあなんで、俺に教えてくれなかったんだよ!」
「私と志保を見捨ててお姉ちゃんにホイホイ釣られたからでしょ!」
「まずい、聞こえるぞ!、移動するぞ、咲!」
俺は咲の手を取って下へと逃げた。後ろから舌打ちのような音が聞こえたのは、多分気のせいだったと信じたい。
「はあ…はあ…」
「はあ…いきなり手を握ってきて、何なのよ!」
「すまん、でも、あんな大声出したら聞こえるぞ!、もう少し考えろよ!」
一葉のあんなところを見てしまった後だからか、咲に八つ当たりしてしまう。
「あ…ごめん、八つ当たりだな」
「…いいよ、私だってイラつくし」
「咲…ごめん」
「お姉ちゃんはあの大森君って人に惚れてたの、今年のバレンタインで告白するって決めてたんだって、暁斗の事はどうするのって聞いたら、あいつのは義理だってさ、酷いよね」
「…酷いな、本当」
「3日前にあんなこと言われちゃったからもう暁斗の事は好きじゃなくなっちゃった、でも、お姉ちゃんとは付き合って欲しくはなかった、元好きな人だし」
「咲、ありがとう…そしてごめん」
同じ両親を持つ3つ子でもこんなに性格が違うのか…。
あ、そう言えば…。
「なあ、志保はどうしてるんだ?」
「え?、なんか暁斗にチョコ作ってるよ、『あげないでって言われちゃったけど、食べられないのを覚悟して作る』ってさ」
「…あはは」
「何笑ってんの」
「俺、本当にバカだよな…バレンタインに間に合わなかったって理由だけで咲と志保を一方的に嫌っちゃってさ」
「…私はバレンタインにあげるのが恥ずかしかっただけだし」
そう言って咲は俺から目を逸らした。見捨てた時には感じなかった可愛いという感情が湧き上がってくる。
でも、咲は俺の事がもう好きじゃないと言っていた。そんな感情など捨てるべきだろう。
「…俺、咲にホワイトデーのお返しするよ」
「えっ!、いいよ別に!、チョコあげてないし!」
「俺はあげたいんだよ、それとも嫌か?」
「…嫌じゃない」
「決まりな!、咲、それじゃあ!」
俺は走り出す。行き先は1つ、歌嶺家だ。
高校からほど近いところに、歌嶺家と俺の家がある。
そのおかげで、彼女たちと知り合うことが出来た。
一葉と咲は、すぐに仲良くなる事が出来たが…、志保だけはいつも本を読んでいて、全く喋りかけることが出来なかった。
志保と2人きりの部屋なのが居づらくて、そろそろ帰ろうかと立ち上がろうとすると、
「これ読む?」
志保が俺に1冊の本を渡してくれた。俺はあんまり乗り気じゃなかったが、ページを開くと、ハマってしまった。
一葉と咲が部活で居ない時にはいつも志保の部屋で本を一緒に読んで、感想を話したりして。
楽しかった。一葉と買い物に行くよりも、咲とゲームをするよりも。
間違いない、俺、志保の事が好きなんだ。
なんで一葉の事が好きなんて錯覚してたんだろう。
俺は歌嶺家の玄関のインターホンを押す。数秒して、
「はい…、え、暁斗?」
「ごめんな志保、遊びに来た」
「え…嘘、嫌いになったんじゃなかったの?」
「あれは高熱に浮かされていただけだ、気にするな、入ってもいいか?
「あ、うん…」
俺は靴を脱ぐと、リビングに行く志保の後についていった。
「急にどうしたの…?、何か用事があったらすぐに行くのに」
「いや、咲から志保がチョコレート作ってるって聞いたから、食べたいなって思って」
「ええっ!?」
「そんな驚く事かよ、毎年作ってるのに」
「だって、私のチョコレートいらないって言ってたんじゃなかったの…?、咲姉さんのも…」
「気が変わったんだ、今は食べたいんだよ、身勝手なのは分かってるけどさ…」
「っ…!、食べてもらいたいよ、私だって!、ちょっと待ってて!」
いつもの志保からは想像出来ない慌てながら、彼女はチョコを持ってきた。
「…どうかな?」
「これ、本当に手作り?、凄いな」
「だって3日間練習してたし…」
「おう…じゃあ、1口貰うよ」
俺はチョコレートを1つ取って口に入れる。
「上手いな」
「…うう」
「って志保!、なんで泣いてんだよ!」
「だって私、暁斗にチョコなんて食べて貰えないって思ってたからさ…」
「…本当ごめん、志保、俺、どうかしてたよ、こんな美味しいチョコを自分から捨てようとしてたんだもんな…お前の気持ちも」
「え?」
「俺は一葉が好きだと思ってた、でもな、本当は志保が好きだったんだよ」
「暁斗、本当に?」
「本を読んでる時に時々笑ってたの、隠してるつもりだと思うが思いっきりバレてるぞ」
「ふ…ふえっ!」
「その表情を俺はもっと見てたいんだよな」
正直、俺は酷いと思う。だってチョコをあげる速さだけで好き嫌いを決めていたんだから。そのせいで咲の事も志保の事も見えなくなってしまったんだし。
でも、そんな俺を志保は許してくれた。
でも、このチョコのお返しは何にすればいいのだろうか。俺はこの1ヶ月、悩み続けるのだった。
いいね、ブクマ、星がつくと作者は飛び上がります(適当)
思いつきで書いたんですけど、暁斗くん、1日とか2日遅れただけでチョコいらないって酷くない…?
志保にはともかく、咲にはこき使われてそう。(他人事)
次回からは優しい主人公にします。絶対!(自信なし)