6 マリアさん
「ふーーーー」
俺はベッドに座るとそのまま上体を倒し、長く息を吐いた。
ここはノエルに案内された今日から俺が寝泊まりをする部屋だ。俺なんかが使うにはあまりにも豪華すぎると思える広さでベッドの寝心地も最高だ。
もう少し小さい部屋でもいいのにとノエルに言ったら、ユニ君は客人なのだから遠慮しなくていいと言われたので素直に受け入れることとした。
「言ったとおりだったでしょ、そんなに緊張しなくていいって」
「たしかにね、たしかにそうなんだけど、未知への恐怖っていうのがね~。あっ、でも国王様はすごくいい人そうだなって思った。気取った感じもなくて、俺みたいな人間の話もちゃんと聞いてくれて」
「でしょ、私の自慢なんだ」
明るいトーンでそう言ったかと思うとノエルは突然暗い顔になり、ベッドで横たわっている俺の隣に腰をかけた。
「国王様はね、私の本当のお父さんじゃないんだ」
「え?」
ノエルの突然の告白に俺は上体を起き上がらせてノエルのほうを向く。
「あはは、ごめんね突然こんなこと言っちゃって」
「いや、そんなことは全然気にしなくていいけど、本当のお父さんじゃないってどういうこと?」
深く聞くべきではないのかもしれない。俺は深掘りしようとしてしまったことを後悔したが、ノエルは話し出してくれた。
「私の本当の両親は七年前の戦争で亡くなったの。私を逃がすために二人は逃げ遅れてしまって。そのときの私には両親以外に頼れる人がいなくて一人になってしまっていたところを国王様は助けてくれた。本当に感謝してるんだ。子供がいなかった国王様は私のことを次の女王にまで選出してくれて。だからこそ、私は期待に応えなくちゃいけないって思ってるんだ」
ノエルの言葉は決意に満ちていた。
ああ、そうだ、俺はこんなノエルだから力になりたいと思ったのだと改めて実感する。
「今までがどうだったかは分からないけど、今は俺もいるよ。俺も協力する。どこまで力になれるかは分からないけどさ」
俺とノエルは顔を見合わせて笑い合う。
「そういえばノエルって、魔法部隊の副隊長だったの?もしかして、スゴイ人なの?」
俺は謁見の時の騎士団長の言葉をふと思い出した。
「ふふふ、実はそうなの。私ってスゴイ人なんだよ」
ノエルは上体を反らして威張ってみせる。
「わー、すごいすごーい」
俺はノエルに向かって拍手しながら褒め称えた。
そうしているとふと、ドアが開く音が聞こえた。
「なにイチャイチャしてるのよ」
そう言って入ってきたのは見たことのない女の人だった。髪はウェーブがかった金のロングで大人っぽい綺麗な顔だ。身長は俺が170で大体でそれより少し低い位だから165位だろうか。そしてだ、何よりも目がいくのが胸の大きさだ。
でかい、とにかくでかいのだ。思考が働かなくなってでかいという単語しか出ないくらいにでかい。実のところ、俺はノエルの胸も大きいと思っていた。彼女は小柄で身長は155程度だと思う。その身長に対してなかなかの大きさだと思っていたし、俺はノエルの胸の大きさが好きだ。いや、何を考えているのだろうか。
これ以上考えると墓穴を掘ってしまいそうと思った俺は一旦思考を停止させた。
「イチャイチャなんてしてないよ」
見知らぬ女性に対してノエルは強気に発言した。
「あらそうなの、男っ気のないノエルにもやっと春が来たのかとお祝いしようと思ってたのに」
「大きなお世話だよ」
二人の会話をぽかんと口を開けて聞いていると、ノエルが察してくれたのか見知らぬ女性のことを紹介してくれた。
「この人はマリアっていうの。私がここに来たときから色々と面倒見てくれたお姉ちゃんみたいな人なんだ。マリアは回復系のユニークスキルを持っててこの城に仕えてるの。それで、何しに来たの?」
俺はユニークスキルって何だろうと思ったが、とりあえずここは聞き流すこととした。
「暗黒の守護者様が来てるって噂になってたから来てみたの。もしかしてあなたが暗黒の守護者様?」
マリアさんに聞かれた俺はすかさず答える。
「はい、俺がその守護者のユニっていいます。でも、その呼び名は恥ずかしいので普通に名前のほうで呼んでもらえると助かります」
「わかったわ、ユニ君。それにしても、とてもかわいい顔してるわね。どうかしら、もしよかったら今日の夜私の部屋に来ない?」
それは、つまり・・・などと思考を巡らせていると隣から非常に痛い突き刺すような視線を感じる。これは返答を間違えるときっと大変なことになると思い、俺は慎重に答える。
「お誘いは嬉しいですけど、俺にはここでやらなければならないことがあるので、遠慮させてください」
頑張ったのではないかと俺は思ったが、ノエルが横で嬉しいんだとぽつりとささやいた。
「あら、残念。でも、来たくなったらいつでも来ていいわよ。それと、もし怪我とかしたら治してあげるからね」
そう言うと手を振って部屋を出て行った。
俺の横からはマリアさんが退出した今もなお突き刺すような視線が俺に向けられていた。その目はやめて頂きたい。




