5 謁見
ノエルに案内されて俺は王室の前まで来ていた。ノエルから聞いた話では怖い人ではないというがさすがに少し緊張する。懲役などは免れたいところだ。
装飾のついた中々に豪華な扉を開くと広々とした空間が広まっていて、奥の椅子に座っているのがおそらく国王だ。その隣には騎士と思われる人が立っていた。
俺とノエルは国王の前まで歩いて行く。やはり、次期女王ということもあって立ち居振る舞いなどが毅然としていて美しい。自分の場違い感の甚だしさを感じずにはいられない。
国王との謁見はノエルがうまく回してくれると言ってくれたが不安しかない。
国王と思われる人は少し白髪交じりの髪に眼鏡をかけており、王というわりには身につけているものに派手さがない。なんというか、やさしそうなおじさんという感じだ。
隣の騎士は短髪の黒髪で無精ヒゲを生やしている。歳は四十後半~五十前半といったところだろうか。しかし、伝わってくるオーラというのだろうか、底知れぬ何かを感じる。
「お父様、ただいま帰りました。今日は紹介したい方がいます。ここにいる人が街で噂になっている暗黒の守護者ことユニさんです」
俺はノエルから話をするように促されたので前に立ち、話し始める。
「初めまして、ユニと申します。ノエルさんから今のこの国の現状を聞きました。俺自身どこまでできるかわかりませんが、この国のために頑張りたいと思っています。よろしくお願いします」
こんな感じでよかったのだろうか。悶々としていると国王が話しかけてきた。
「初めまして、ユニ君。ぼくはこの国で一応は国王という立場についている。国の長という立ち位置だが、立ちゆかないことばっかりさ。君の噂はよく聞いているよ。暗黒の森での魔物のことはこの国でもどうにかしたいと考えているがなかなか進まなくてね。だからこそ、ぼくたちの代わり国民を守ってくれていたことは本当にありがたいことだ。国民を代表して感謝するよ」
とても優しい声だった。それに、初めて会った俺にこんな風に感謝の言葉を伝えるとはノエルの言うとおり本当にいい人なんだと感じる。
こんな人が父親だからこそノエルもいい子なんだなと実感する。
「いえ、そんな、頭を上げてください。俺はそんな大したことはしてないです」
「大したことなんかではないさ。君は多くの人の命を救ったんだ。それで、話を変えるけどここに来たということは戦争に協力をしてくれるということでいいんだね?」
「はい、それで問題ないです」
「どうして協力してくれると決めたのか、その理由を聞かせてもらってもいいかな」
俺は、試されているのだろうかと感じた。ここは印象をよくするために平和とか平等について語ったほうがいいのだろうかと考えた。だが、ここでそんなことをするのは違う気がする。俺は本心を語ることにした。
「俺が戦争に協力する理由、それはノエルさんを助けたいと思ったからです。彼女は俺とそんなに歳も変わらないのに運命に抗おうと必死に戦っています。俺は彼女を死なせたくありません。それに、彼女は初めて会ったときにこう言いました。国民を助けるために力を貸して欲しいと。自分の命がかかっているのに国民を心配するそんな彼女の力に俺はなりたいです。あとこれはノエルさんにも言いましたが、俺は戦争を避けられるのならその道を探したい。彼女が大切に思っている国民の犠牲を一人でも減らしたいからです。これが俺が協力する理由です」
俺が言い終わると国王の隣に立っていた騎士が笑い始めた。俺は何かしくじっただろうか、失敗してしまっただろうかと不安になる。
「王様、俺はこのユニってやつのこと信用していいと思うぜ。誰もが理想としていることを実現させると言ってんだ。笑えてくるほどにまっすぐで俺はこいつのこと気に入った」
「そうだね、ぼくも君と同意見だ。彼のことは信用してみていいと思う。なにより、ノエルが連れてきた人だからね。ぼくは始めから信用してたよ。
始めから・・・・。俺はその言葉に肩の力が抜ける。俺はこの場に立つのに今までの人生で一番の度胸を見せたというのに。
「名乗るのが遅れたな、俺はこの国で騎士団長をしているアテルイっていうんだ。よろしくな。まっ、俺も魔法部隊の副隊長をしているノエルの嬢ちゃんの紹介だったから始めから信用してたが、お前面白い奴だな」
そう言うと騎士団長は俺の元へ来て肩を組んできた。
「嬢ちゃん、生まれてからずっとフリーだから狙うならさっさといっちまえよ」
俺にしか聞こえないように団長はそう言った。俺はその発言に戸惑ってしまう。
俺の反応見て団長はまた大きな声で笑う。
「これからよろしく頼むぜ、俺はお前の存在が今回の台風の目になると思っているからな。あっ、そうだ、これやるよ。色々とからかった詫びみたいなもんだ」
そう言うと団長は俺に円柱の金属の塊のようなものを渡された。一体何なのだろうか。
「ユニ君、この度の協力本当に感謝するよ。どうか、よろしく頼むよ。国王として君のことは最大限サポートする。この国にいる間はこの城で生活するといい。部屋ならたくさん余っているからね。あとのことはノエルに任せようと思うけど、ノエルはそれで構わないかな?」
「はい、お父様それで大丈夫です。任せてください」
国王との話も終わり、俺とノエルは一緒に広間から退出した。俺は少しぐったりしながら歩いていた。ノエルの顔を見ると少し赤くなっているような気がした。でも馬車の中での会話のように「そいういうところだよ」などとは言われてないからきっと気のせいだと思いながら俺はノエルと並んで長い廊下を歩いて行った。




