4 馬車の中で
ひたすら雑談パートです
戦争関連の話を一旦打ち止めにしてユニとノエルの二人は雑談をしていた。ニヒルの国を目指す馬車の中で二人の楽しげな声が響く
「そういえば、ノエルって王女様だったんだね。なんか納得。あれ、敬語とか使ったほうがいいですかね」
「いいよ、今さら敬語なんて。それよりも納得ってどういうこと?」
「うーん、なんだろ。俺、女の人に会うこと自体今まで少なかっただけど、なんかノエルは普通と違うって会ったときにすぐに感じたんだよね。いつも薬草とか採りに来る人と違って、なんだろうなー」
俺はこの疑問を頭の中でぐるぐると考えて一つの結論に至った。
「そう、すごく綺麗だなって感じたんだよ」
その言葉にノエルは顔を赤くして俯いてしまう。どうしたのかと思って見ていると顔を上げる。
「ユニ君はもう少し、女の人と話すっていうことを学んだほうが良いよ。気安く女の人に綺麗とか言ったらダメだからね」
「そいうものなの?」
「そういうものなの」
まだ顔が多少赤くなっているノエルは俺に向かってきっぱりと言い放った。まあ、俺は今まで人と話すことが少なかったわけだから彼女の言うことはちゃんと参考にしようと思う。
それにしても、最初は間が持つかと心配していたこの馬車の中での一時も蓋を返してみれば杞憂だったと感じる。それも全てノエルの人柄のおかげかもしれない。
「なんかノエルといると気分が安らぐ感じがするよ」
俺の言葉にノエルはまた顔を赤くした。
「そういうとこだよ」
俺は彼女の意図する意味がよくわからなかったが、とりあえずごめんと謝った。
「ユニ君って、森の中に住んでいたっていうわりにはきれいな格好してるよね。というよりもその格好なら私の国の中でも普通に出歩けると思うよ」
ノエルはユニの服装を今一度よく観察した。黒のブーツに暗いトーンの赤いズボン、少し大きめのサイズのシャツに黒いコートを羽織っている。ユニ自体が細めだから立ったときのシルエットもよく映える。
森暮らしだともっと野性的なものを想像するものだが、実際に今その森暮らしをしていた人と対面すると実に都会的な格好だとノエルは感じた。
「あー、これね自分で作ってるんだよね」
「ユニ君、服作れるの?」
「うん、こんな感じで」
俺はいつも通り服の全体像を想像して今着ているのと同じ黒いコートを生み出して見せた。
ノエルはぽかんと口を開ける。
「あれ、なんかおかしかった?」
「すごいよ、ユニ君。こんな風に服を生み出すなんて何か特別なスキルでも持ってるの?」
ノエルは少し興奮気味で話す。そのきらきらとした目に俺の視線は吸い込まれてしまう。
「えっと、スキルって何?」
「ああ、そうかユニ君はずっと森で暮らしてたから知らないよね。えーとね、私たち人間そして魔族もそれぞれが特別な能力、「スキル」っていうのを持つことができるの。スキルの種類は色々あって戦いに使えるものからユニ君のものみたいに生活に役立つものもあるの。スキルを取得するにはスキルによって色々と条件があるみたいでそこは今も全ては解明されてないの。それにしても服をつくれるなんてすごいね。どうやって手に入れたの?」
「正直、よくわからないんだよね。何年も前に寒いときがあってそのときに突然頭痛がして気を失って目が覚めたら服を生み出せるようになってたかな。そのおかげで今は寒い思いもしないで快適に暮らせてるけど」
ノエルはへーと頷く。
「ごめんね、俺スキルに関してはよくわかってないからこのくらいのことしか話せないや。それにこれがスキルなのかもよくわからないし」
「いえいえ、私も面白い話が聞けて楽しかったよ」
俺とノエルはお互いに顔を見合わせて笑い合った。
「よかったら、今度ノエルの服もつくってみせようか?っていっても、俺女の子の服とかよく分からないからデザイン性とかは期待しないで欲しいけど」
俺の言葉にノエルの顔はパッと明るくなった。
「え!?、いいの?じゃあ今度お願いするね。あ、でも他の女の人とかにも気軽に服作るよとか言っちゃダメだからね」
「そういうものなの?」
「そういうものなの」
先ほどと同じやりとりをしてお互いにまた顔を見合わせて笑った。
「服もだけど、ユニ君って言葉も普通に話せてるよね、森暮らしだったのに」
「まあ、話せてはいるよね。というか、森暮らしってこと少し馬鹿にしてませんか女王様?」
俺は少し冗談気味に不機嫌な態度をとってみせた。
「ごめんね、悪気はないの。ただ、森の中だと言葉を習う機会ってないんじゃないかなって思って」
彼女の意見は至極まっとうだ。実際のところ俺自身なぜ話せるようになったのかはよくわからない。
「これも服と一緒なんだよね。確かそのときは魔物から人を助けたんだけど言葉が通じなくて怖がらせちゃったんだよね。それで言葉を話せたらなって思ってたら突然頭が痛くなった目が覚めるとって感じ」
ノエルは興味深そうにへーと頷く。
「ユニ君の能力って聞いた限りだと私もよくわからないけど、いつも魔物から皆を守ってるのを神様が見て恩恵を与えてくれたのかもしれないね」
神様か、と俺は心の中でつぶやく。この子は本当に明るくて良い子だなと思い笑みをこぼす。
「そうだね、そうだったらいいね」
「街についたら自分のスキルを確認できるところがあるから案内するよ。もしかしたらすごいスキルもってるかもしれないし」
「いやいや、森暮らしごときの俺がそんなすごいスキルなんて持ってるわけないよ」
ノエルは首を横に振って言い返す。
「ユニ君はすごいよ。だって私を助けてくれたもん」
「俺はノエルのほうがすごいと思うよ。誰よりも国のことを思って皆のために頑張ってるんだから。俺はそんなノエルが好きだし、だから協力したいって思えたんだよ」
ノエルは幾度目かの赤面をすると今までにない大きな声で言う。
「そういうとこだよ!!!」
よくわからないが、俺はとりあえずノエルに謝った。
雑談をしているといつの間にか目的地であるニヒルの街は目の前だった。
彼女との雑談はとても楽しかった。いったい何度彼女に謝ったのかは数える気にもなれないが。
「見て、ユニ君あれが私たちの街だよ。色々と案内したいところもあるけど、まずは国王に挨拶しに行くからね」
今のノエルは初めて会ったときのかしこまっていた感じと比べて何倍も女の子らしく思う。女の子らしいとはどういうものかよくはわからないが本能がそう訴える。
国王、つまりはノエルの父親だろうか。ノエルとの会話では俺はたびたび変なことを言ってしまっていたので国王の前では気をつけないと、と気を引き締める。
「打ち首にはならなければいいな」
俺の発言にノエルはかわいく首をかしげた。




