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10 ヒナとの特訓

 マジックマスターが発現したことにより、俺の魔法の腕前は劇的に上昇した。風からの派生による雷魔法「アーテル・トニトルス」、土からの派生による重力魔法「グラヴィタス」など強力な魔法を使えるようになった。空間魔法では異空間に物を収納できる魔法も使えるようになり、日常生活では一番重宝しそうだ。

「ユニ君、一気に魔法上達しちゃったね。もう私が教えることないくらいだよ」

「そう、だね」

 俺は若干歯切れ悪く答える。確かに魔法が上達したのは嬉しいが、話が上手くいきすぎている。普通こんなタイミングでマジックマスターなどというスキルが発言するものだろうか。マジックマスターは適正のある属性の魔法を低コスト・高火力で使うことができ、魔力の流れにも敏感になる。実際、今なら見ようとと思えば魔力の流れを視認することだってできる。ノエルが言うにはとんでもないレアスキルらしい。

 だからこそ不信感が湧く。考えられる原因はユニークスキルの戒めしか思いつかないが・・・・、考えを巡らせても明確な答えは出ない。

「マジックマスタ-、確かにこのタイミングで発現したのは不思議だけど、同じように発現した言語マスターやドレスメイカーはユニ君を助けてきたんだよね?だったら、きっと大丈夫だよ」

 俺は頷いた。

 わからないことを気にしたって仕方がない。それに俺に発現したスキルは今まで俺のことを助けてくれた。マジックマスターも今の俺にとっては何よりも欲しい力だった。俺はノエルの言葉と俺自身のまだ明かされていない能力を信じることにした。

「あっ、そうだ私、お父さんに呼ばれてたんだ。ちょっと行ってくるからユニ君とヒナちゃんは魔法の練習続けてて」

 そう言うとノエルは城のほうへと向かっていった。


 思いがけずヒナと二人になった。さて、どうしたものかと考えていると、ヒナのほうから話しかけたきた。

「魔法、すごいですね。一日であんなに上達するなんて」

「俺だけの力じゃないと思うんだよね。なんて言うか、たまたまが重なった結果というか」

「いえ、私はユニさん自身の力だと思います。それに、なんとなく感じてたんです。ユニさんならすぐに私よりも魔法を使えるようになるって」

 そう言う彼女の顔は悲しそうだった。

「ヒナとは昨日会ったばかりだと思うけど、どうしてそう思ったの?」

「実は私、ユニさんいえ、暗黒の守護者さんに会ってるんです。二年前、私が十四歳の時に」

 俺は驚愕するが、彼女に会った覚えなどはない。あの森で女の子と出会うこと自体珍しいから会っていたのなら覚えているはずなのだが。

 必死に記憶をたどっていると必死に思い出そうとしている俺が面白かったのかヒナは笑いながら真相を話してくれた。

 どうやら二年前にヒナの父親が率いる部隊が暗黒の森で問題になっていた強力な魔物の討伐に向かったらしい。その討伐部隊には見学して経験値を高めるようにと父親に言われヒナも同行していた。

 目的としていた魔物を見つけ、部隊は討伐にかかったが、予想以上に魔物が強く部隊は壊滅状態となっていた。そのときに突然現れて魔物を討伐し、すぐにどこかへと姿を消したのが暗黒の守護者こと俺らしい。

「私、魔物が兵士たちを襲っているあいだ馬車の中でうずくまっていることしかできなかったんです。それをユニさんが助けてくれました。そのとき、たまたま見えた立ち去っていくユニさんの姿が私には憧れになって、その人が突然目の前に現れたからびっくりしたんですよ?」

 言われてみたらそんなこともあった気がする。大勢の人が魔物に襲われていて助けたような、そして大勢と関わることに多少の拒否感を感じて魔物を倒したあとにすぐにその場を去った気がする。

「憧れか、俺はそんなことを思われるような人間じゃないと思ってたから、そんなこと言われると気恥ずかしいね。でも、そういう風に思ってくれている人がいるのなら今まで人を助けてきてよかったと思うよ」

「私は、ユニさんに会えて本当に嬉しいですよ」

 そう言って上目遣いでこちらを見る姿はまだ十六歳の少女にも関わらずやけに色っぽく感じた。

「ノエルさんが言ったとおり私は貴族の娘です。貴族は戦争などの有事の時は率先して民たちを率いて前線でうごかなければならないと父は教えてくれました。私はそんな父を尊敬しています。けど、実際に戦争が起きようとしていて、そのことを思うととても怖いんです」

 無理もない。まだ十六歳の少女が戦争なんて似つかわしいにも程がある。でもそれが貴族として生まれてきた運命であり、果たすべき責任であるらしい。

「でも、ヒナならこなせるんじゃないかな。昨日のファイヤボールはすごかったし、特訓のあいだ横目で見てたけど結構すごい魔法使ってたじゃん」

 ヒナは首を横に振る。

「あの程度まだまだです。それに、ユニさんと比べたら話にもなりません。少ない量の魔力ならコントロールできるのですが、量が多くなるとコントロールができなくて高出力な魔法がまだ使えないんです」

 俺はマジックマスターの力を使ってヒナを見た。魔力の量なら高等な魔法を使うのにも十分だと思える魔力量だ。だとしたら、昨日ノエルが言っていたようにイメージの力が足りないのかと考えた。

「よそれなら今から俺がヒナの身体に少し強めに魔力を流すからそれでより多くの魔力をコントロールするイメージをつけてみない?」

「そんなことができるんですか?」

 俺は頷く。今の俺なら魔力の流れを視認して魔力を流すことなど造作もないことだ。

 ヒナは了承してくれた。俺は魔力の流れをより感じやすくするためにヒナの肩に手を置かせてもらった。ヒナの魔力の流れが手に取るように分かる。そこに流れを乱さないように俺は魔力を流し込んでより強い流れをつくりだした。

「あっ・・・・、んっ、・・・・・はぁ・・・・・、っっんん、あ・・・・あの、っん・・・・、いっ・・・、い・・・・、いっ・・・かい、やめて、ください」

 俺は言われたとおりに魔力を流すのをやめた。あまり効果がなかったのだろうかと考えた。それに、変な声を出させてしまって本当に申し訳なく思う。

「すみません、お願いしておいて。その、ユニさんの魔力の純度の高さにびっくりしちゃって。それに的確に魔力の流れをつかんで魔力を流されてこんなこと初めてで」

「ごめん、やり方が悪かったかも。もっと違う方法を考えよう」

 俺はヒナのために、そして自分自身のためにも違う方法を提案した。正直、さっきなような声を出されるとなかなかに気まずい。当の本人は気づいていないようだが。

「いえ、何かつかめそうな気がしたのでもう一回お願いしていいですか?今度はやりきってみせます」

 ヒナのやる気に負けて俺は再び魔力を流す。

「・・・・んっ・・、ふー、ふー、はぁ・・・・」

 今度は多少は声が抑えられていて少し安心していると、ヒナは魔法を使う体制に入った。右手をかざす。

「ふぅ、・・・あっ・・・っん、・・・・アクアパニッシャー」

 直径十メートルはありそうな巨大な水球が現れた。そしてヒナがかざしていた手を握ると同時に巨大な水球は爆発した。あの水球の中にいたとしたらひとたまりもないだろう。かなり高レベルの魔法を見事に成功して見せた。

「やったよ、ヒナ成功だよ」

 ヒナは少し息づかいが荒くなっていた。相当に集中していたのだろう。

「はい、ありがとうございます。こんな魔法今まで成功したことないです。ユニさんのおかげです」

「いや、ヒナの力だよ。俺はちょっときっかけを与えたに過ぎないよ」

 その後もお互いに謙遜し合いながらも互いをたたえ合っていた。


 ノエルはお父さんとの話が終わり、訓練場へと向かっていた。訓練場に近づいていくとユニとヒナの声が聞こえてくる。

「二人とも打ち解けたんだな-」

 何を話しているのか少し聞き耳をたててみる。

「始めはびっくりしたんですよ。私こんなの初めてでしたし、ユニさんのがすごくて、でもどこか暖かい感じもしたんですけど。ユニさんのが私の中に入ってきたおかげで私、いけそうな気がしたんです」

「ヒナもすごいがんばっててよかったよ。それが伝わってきた。俺、ヒナとできてよかったよ」

 ノエルは顔を真っ赤にして激しく動揺する。

「私のいない間に、一体何を・・・」

 いてもたってもいられなくなり、急いで二人の元へ駆けつける。

「あのー、二人とも私がいない間に一体何をしてたの?」

 二人はきょとんとしていたが、ユニは笑いながら答える。

「もしかして、音聞こえた?結構大きかったからね」

「音って何の音?」

 ノエルは頭の中でユニとヒナがいやらしいことをしていた音でも響いていたのかと想像する。

「爆発音だよ。なんと、ヒナが高位の魔術を成功させたのです」

 ノエルはへっ?、となってしまう。ユニの言葉を信じると二人は自分がいない間はちゃんと魔法の練習をしていたことになるからだ。

 ノエルは腹を決めて聞いてみることにした。

「その、さっき聞こえたんだけど、ユニ君のが身体の中に入っていくってどういうこと?ユニ君ヒナに何かしたの?」

 ユニは若干歯切れが悪そうに答える。

「えっと、ヒナに魔力のコントロールをイメージさせるために俺の魔力を少し強めに流したんだよ。それでヒナがコツを掴んで魔法使うのに成功したんだ」

「ユニさんの魔力すごいんですよ。すごく純度が高くて的確に流れをつかむので私すごくびっくりしたんですけど、そのおかげでより難度の高い魔法をせいこうさせられたんです」

 ノエルは全てが勘違いだとわかり安心する。そもそもユニがそんなことをするわけがないのだ。

「そうなんだ、ヒナちゃんおめでとう。ユニ君もヒナちゃんのためにありがとう」

 全てが丸く収まりそうだったが、ノエルは一つ思うところがあった。

ー私もユニ君に魔力を流して欲しいー

「ねえ、ユニ君。わたしもユニ君の魔力流してもらいたいんだけど、いい?もしかしたら私の魔法も上達するかもしれないから」

 ユニは少し嫌な顔をした。まるでこれから起こる悲劇を知っているかのように。それでもユニは魔力を流すことを承諾した。

 ユニはノエルの肩に手を置き、魔力を流し始める。

「はっ・・・あっ・・・・っんぅ、・・・・っんんぅぅ、はっ・・・はぁっ!、・・・ん!、あぁ・・・・、ん、んっあっ・・・・ん!」

 ユニは何かを悟って魔力を流すのをやめた。

「はぁ、はぁ、ユニ君すごいね、こんなこともできるなんて。なんか今ならいつもよりも強い魔法を打てそうだよ」

 ユニから魔力を流してもらえて満足げなノエルだったが、少し雰囲気がおかしいことに気づく。

 ヒナは顔を赤くして顔を両手でおさえながら言う。

「私も・・・こんな感じで・・・」

 ノエルは先ほどまでの魔力を流してもらっていたときの自分を思い返す。そしてみるみるうちに顔が赤くなる。

「ユニ君!!」

「ユニさん!!」

 二人の声が重なるときにはユニはすでに頭を地面にくっつけていた。


 

 


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