表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1 出会い

ー暗黒の森ー 

 ノエルはひどく後悔していた。こんなことになるならもっと装備を整えておけばよかった。いや、仮に装備を整えていたとしても無駄だったかもしれないが....。

 まさか、ガーゴイルと出くわすとは思ってもいなかった。ガーゴイルは武装をした成人男性が数十人で挑んでも勝てるかどうかは五分五分の魔物だ。1人の少女が挑むにはあまりにも無謀すぎる。逃げている途中にファイアアローを放ってみたが、ガーゴイルは魔法攻撃に対する耐性が高く、硬い皮膚の装甲に阻まれ、効いている様子は全くなかった。

 今はなんとか姿を隠すことができている。この隙になんとか逃げ延びたい。

 そんな考えをあざ笑うかのようにこちらに気づき、一直線に向かってくる。ガーゴイルの突進は速く、もうすぐ数メートルのところまで近づいていた。

 ノエルは自責と後悔の念に押しつぶされそうになる。死ねない、死にたくない。私にはまだやるべきことが残っている。国のために、そこに住む人たちのためにもっと生きていかないといけない。しかし、すぐ目の前にまで迫った死に恐怖を感じ、ノエルの目からは涙が流れ、目を閉じた。

 目を閉じたノエルは不意にふわっと宙に浮くような感覚が襲った。殺されて天へと昇っていっているのだろうかと彼女は感じ、せめて天に召される前にこの世界を空からみたいと思い、そっと目を開けると、そこにあったのは空から眺めた景色ではなく、1人の男の顔だった。

 

 少し癖のあるふわふわとした黒髪、くっきりとした目、筋の通った高い鼻、シャープなあごのラインは中性的でどこか儚さも感じさせる顔立ち。そのあまりに綺麗な横顔に見とれて、ノエルは今自分が男の人に抱きかかえられているという今まで体験したことのない異性との接近に気づき、恥ずかしく赤面してしまうのに数秒かかってしまった。

 男はノエルを抱えたまま飛ぶように走り、ガーゴイルから距離をとると、そっと優しく彼女を地面に下ろした。

「大丈夫?、どこか怪我はしてない?」

 男の問いかけに対してノエルは何が起きたか理解しきれず、小さく頷くことしかできなかった。

「ちょっと待ってて、すぐに終わらせるから」

 男は笑顔でそう言うとガーゴイルのほうへと歩き出した。

 ノエルは呆然としてしまっていたが、我に返る。そっちに行ってはいけない、そう伝えなくてはならない。1人でガーゴイルに敵うはずがない。それに彼は命の恩人だ。そんな人を死なせるわけにはいかない。

「待って、そこから先には...」

 ノエルの言葉は突如聞こえた爆発音によってかき消されてしまう。

 遅かった。もっと早く伝えることができていればとノエルは後悔した。しかし、回復魔法を使えばまだ間に合うかもしれないと彼が歩いて行ったほうへと走り出した。

 少し走ると、目の前には思いもよらない光景が広がっていた。男は無傷で立ち、その先にはガーゴイルが周りの木をなぎ倒しながら吹き飛ばされた跡があり、倒れ伏しているガーゴイルは絶命していた。

「あ、よかった、動けたんだ。ちょうど終わったところだったからそっちに行こうと思ってたんだよね」

 男は変わらずに笑顔で話しかけてくる。何でも包み込んでくれそうな安心を感じさせる笑顔で。

「助けてくれてありがとうございます。本当に助かりました」

「別にそれほど大したことはしてないさ。ちょっとグーでポーンと叩いただけだし」

 男の言葉にノエルは唖然とする。あのガーゴイルを素手で倒したというのか。

「あの、少し聞きたいのですが、特別な魔法とか魔力を使ってガーゴイルを倒したのですか?」

「まほう?、まりょく?、あー、なんかすごいやつだよね?、でも俺はそれ使えないよ」

 男の返答にノエルは更に唖然としてしまうがそれと同時に確信も持てた。彼こそが私がこの森に来た理由、彼を探し出すためにここに来たのだ。意を決してノエルは言葉を発する。

「あなたこそが暗黒の守護者様ですね。どうかお願いします、私たちに力を貸したください」


 この出会いが始まりとなり、止まっていた物語は動き出す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ