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0(もう一つの復讐劇)

 舞台上には、セーラー服姿に仮面をかぶった奇妙ないでたちの人物が立っている。仮面は赤い血に(まみ)れて、その姿は禍々しさと神々しさにあふれていた。


〝――このたびの勝負は、私が長い時をかけて考えぬいたもの。根は、古い諍いごと。だが、ついに決着の日は訪れた。いま私は、一撃を下したその場所に立っている。この足元に横たわるものこそ、その結果。〟


 復讐の勝利と歓喜を謳った声が、暗闇に覆われた体育館に朗々と響きわたる。


〝そして倒れざまに大きく息を吐くと、急所の一撃を告げる、血潮が噴きだし、血の色濃い、黒い雫が、私の体をしとどに濡らす。この身が覚えた喜びは、ゼウスが降らせる黄金の雨に、麦粒が穂の中ではじけて、あふれるさまに似ていた。〟


 殺人の告白によって混乱するその場の中で、一人の女だけが荘厳に、雄々しく佇立している。

 わたしはそれを、舞台横にある機械室からじっと見つめていた。思えば、この場面がすべての出発点だったのかもしれない。ささやかなもう一つの復讐劇が、終わりを迎えるための――

 そのあいだにも舞台は進行して、殺人への非難とそれへの反論が繰り広げられている。物語はまさに、クライマックスを迎えているところだった。

 館内には濃密な沈黙がいっぱいで、照明の光だけが音もなくその舞台を照らしている。

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