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勇者システムは終了しました  作者: 謎の男A
3/3

最悪な日②

結局、あの神様は文句を言われるだけ言われて帰った。

転生・転移者は、その空間に残されたままだ。

.........本当にこれからどうしよう......。

勇者システムにはたしか言語理解能力もあったけど、勇者システムが終わったってことは話もできないんだろうなぁ......って朝のあれはそういうことだったのか......

にしても、どうして今日だったのか......魔王を倒してすぐ終わっても、説明を聞いた限り不思議ではないんだけど......。

祭りくらいは楽しませてくれたってことかな.........違うかもしれないけど.........

そういえば......

俺は周りにいる人を見る。

女性が少ないな......

男性はかなり多く見えるけど女性はそんなに見当たらない。

みんな強力な力を持っていたので、戦って死んでしまったというのは考えにくい。

ということは元々少なかったということだが.........正直あんな脅しみたいな頼みを断った人が凄いと思う。

たしかかなりの迫力で「力は望むものをやる。だからさっさと魔王を倒しに異世界とやらへ行け。もし行かないのであればお前を殺す」と言われた。

.........あれ?さっきのリンネさんと全然印象が違う......というかどんな声だったかとか見た目も思い出せない.........

いや、そんなことよりいつ元の場所に戻れるのだろうか......

最初に日本には戻れないと聞いていたから、向こうに戻るしかないはず........

そう考えていた時、今俺たちがいる空間に声が響く。


『えー......最初に説明した通り、元にいた国に戻すことはできないので......異世界の方に戻させていただきます......』


その声はリンネさんのものだった。

途中で鼻をすすっているので、泣いているのだろう。

まあ沢山の人に散々暴言を吐かれたんだ。

泣くのも無理はない......。

今回は誰も何も言わなかった。

少し時間をおいて、自分が言ったことを反省しているのだろうか。

文句を言おうとしている人は誰もいない。

声がしてから少し待つと、床が光り始めた。

この空間に来た時と同様に、宙に浮いた。

そして光は強くなり、俺たちを包み込む。

俺は光が強すぎたので、目を瞑る。

そして目を開けると、宿屋のロビーに戻っていた。


「!───────────!」


何かを話しているが、やっぱり理解できない。

昨日まで何の問題も無く会話できていた相手と話せなくなるのはかなり辛いと感じた。

俺はこの宿屋に何度も止まっていたので値段は分かる。

なので、俺は袋からお金を取り出し、話しかけてくる女性に渡す。

最後に頭を下げて、俺は宿屋から出ていった。

とりあえず、俺は冒険者ギルドへ向かうことにした。







冒険者ギルドに到着すると、俺はポケットから身分証明書として扱える冒険者証明書というカードを取り出す。

昨日までそこに書かれている文字が読めていたのに、やはり読めなくなっていた。

しかしギルドの中に入るにはこのカードが必要なうえに、これがなくなってしまうと身分を説明できなくなるので持っておくしかない。

カードには名前、登録日、再発行日、ランク、年齢が書かれている。

しかしランクの制度は俺がこの世界に来てすぐに無くなったのだ。

理由は知らされていないが、最低ランクでも強すぎて飛び級する人が増えたから、という説がある。

明らかに転生・転移者のせいである。

たしかに飛び級が多かったので、その説が1番信用度が高い。

というかこれしか説がない。

ちなみにランクはF、E、D、C、B、A、Sの7段階だった。

俺は地道に飛び級などせずにFからSに上がったが、力を失った今、自分はFランクの実力と同等かそれ以下だろう。

なのでできても薬草採りの依頼だけだが......そもそも話せないから依頼を受けることすらできない。

どうするかと考えながら、ギルドの前に置かれている機械にカードをかざす。

すると機械からピコンという音が鳴る。

その音を聞いた俺は、ギルドの中に入る。

機械にかざさずに入ろうとすると全身に電流が流れる、らしい。

試す気もないので素直にカードをかざしている。

ギルドの中にはいつも通り、沢山の人がいる。

しかし聞こえる声は昨日までとは違い、何語が分からないものになっている。

ギルドではご飯が食べられたりするので、注文したいのだが......言葉が通じないからなぁ......。

俺は適当に近くに誰もいない席に座った。

特になにかするという訳では無いが、どうにかして昨日まで読めていた文字の記憶と今見えている文字を見てこの世界の文字を勉強する。

本音を言ってしまえば誰かに教わりたいのだが、言葉が通じないので教えてくれと頼むことすらできない。

俺は机にあった紙に文字を書いていく。


「この文字は......あ......この文字は......い......」


そのような感じで、少しづつ日本語に直していった。

その作業を初めて約三十分。

あ行からま行までの翻訳が完了した。

しかしこれも本当に合っているか分からない。

そんなことを考えながら作業を続けていると、一人の女性が近づいてきた。

その女性は、俺が紙に書いている平仮名を見て、俺の正面の椅子に座る。


「ねえ」


「.........なんですか?今作業中なんですが......って話せる?!」


話せるということは転移者か転生者だ!それも日本人!


「あんたも日本人ね?ならこれあげる」


その女性は持っている袋から一冊の本を取り出すと、俺の前に置く。


「これは?」


「見てみれば分かるわよ」


女性がそういうので、俺は本を開く。

すると、そこにはこの世界の文字と日本語が書かれていた。

そう、辞書だった。


「これは!どうやって?!」


「仲いい子がこの世界に来てすぐに作ったらしいわ。それを何人かで複製して日本人に配ってるの。今他の国の人用にも作ってる最中よ」


この世界に来て最初に作った......?

どうして作ろうと思ったのか気になるな......

最初は読めていたし辞書など作る必要はなかっただろうに。

というか作ったってどういうことだ?

最初に作ったって言ってることは他にも何か作っているということになる。

ということはその子は生産系の力を貰っていたのか。

違うかもしれないけど今はそう思っておこう。


「それで一ついい話があるの」


「なんでしょうか」


「英語はできるかしら?」


「使う機会がほとんどなかったのでそこそこ」


「日本語と英語以外は?」


「英語を少しか日本語しか使ってなかったので分かりません」


「なるほど.........じゃあこの辞書の英語版の制作の手伝いを頼めるかしら?」


「俺でよければいいですけど......」


「あっさり受け入れるわね。まあ人手が足りなかったから助かるわ。ありがとう」


女性はそう言うと頭を下げる。


「私はサキ。これからよろしく」


「俺はユウキ。こちらこそよろしく」


俺はそう言うと手を差し出す。

サキはその手を握る。

よろしくという意を込めた握手だった。

考えてみれば、かなり久しぶりに握手したなぁ。

この世界には握手の習慣はなかったし。


「それじゃあ今から早速お願いできる?」


「いいですよ」


「それじゃあ付いてきて」


サキはそう言うとギルドから走って出る。

俺はそれを追いかけていった。

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