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HOMER STAYER  作者: 襲雷
2/12

第2話:台風の乱

しばらくして、風が強くなってきた、本格的に台風が近づいてきてるのだろう

ガタガタと音を立てる窓が

もうヤバイっす!!と悲鳴をあげる

「そろそろ飯どきだから、おいら帰るね〜」

と空のお菓子の袋をそのままに

デカイ体のくせに、と思いたくなるくらい俊敏な動きで帰っていく姫

その速さに真吾は文句を言う暇もなかった・・・


姫の去った後の片づけを何だかんだ言いながらしっかりやってしまう所も

真吾がいい人と呼ばれる所以であろう


夕飯を終え、テレビを一人でボーっと見ている

『台風7号は、今夜にも関東全域を直撃する見込みです』

ニュースを見ると数年ぶりにこの地域を直撃する見込みらしいとニュースキャスターが教えてくれる

外は本格的に雨も降ってきたようで、窓に打ち付ける音がすごい

気が付くと夜10時、そろそろ風呂にでも入ろうかな

と考えている時だった


ピンポーン、ピピピピンピンピンポーン!!!!

誰かが家のチャイムを連打

イタズラか、大事か、どっちにしても嫌な予感すること満載である

何事かと思い、玄関に出てみると

「真吾にい!!助けてっ!!!」

ガバっ!!と誰かが玄関の中に突撃してきた

しかし真吾にいと呼ぶ人物など一人しかいない

「さっ沙耶ちゃんどうしたの!?」

秀吉の妹、沙耶だった

どうやら大事のようだった・・・

いつもはクールに振舞う彼女だったので、そこまで取り乱すのも珍しい光景だった

「秀吉にまた何かされたのかい?」

「いやそれはされたけど・・・今回はチビのことなの!!」

チビとは浜田家で飼われている猫で白猫である

やはり秀吉のおもちゃにされているため彼に懐いてはいない

「バカヒデが今日、チビをいじめてて、チビはものすごい嫌がってて

 ンニャーーーー(やってられるかーー)!!

 って一鳴きしたあと家から出てっちゃったの!

 台風だからすぐ帰ってくるだろうと思ったんだけど、

 5時間たった今も帰ってこないの!!

 バカヒデももう探してくれてるんだけど見つからないの・・・」

もう沙耶はほとんど泣いてしまっている

年より上に見える美人な沙耶であるが、今は年相応にしか見えない

何してんだよ、秀吉・・・

「わかった、わかったから落ち着いて、とりあえず探そう

 太陽には声かけたかい?」

沙耶を落ち着かせながら声をかける

太陽を呼ばねばと考えていると

「いや、もう居るんだが・・・」

後ろからヌッと出てくる影

「たっ太陽!!居るんなら最初から声出してよ!!」

ビクッと沙耶の肩を掴みながら後ずさる

太陽は基本無口な方なのだが気配が今全くなかったぞ

「すまん・・・」

静かに目を閉じて重く反省する太陽

いやそこまで強く言ってないんだが

これだから硬派さんは!!

「いいから行こう

 けど沙耶ちゃんは家で待ってること」

真吾は沙耶に言う

女の子に、こんな台風の中外で無理させるわけにはいかなかった

「えっヤダ!私も探す!!」

もちろん、沙耶もこういうわけであるが

「チビが帰ってくるかもしれないからね

 そのときに誰も居なかったらチビも寂しいだろう?」

「うむ、不安だろうが家で待っていてくれ、頼む」

真吾に、口下手な太陽も加勢してくれた

「・・・わかった」

納得させた半泣きのまま沙耶を家に帰す

ついでに、隣のバカ姫に事情を話し、沙耶に付いていてもらうよう頼んだ

こういう時空気読めないバカのほうが助かる

きっといい感じに励ますだろう

外は風と雨で荒れ狂い、傘をさす事も無意味であるようだった

太陽と2人で手分けして探そう

「太陽、猫が行きそうなところってわかるか?」

「・・・魚屋か?」

「ギャグ・・じゃないよな・・・」

ダメだ、常に本気だ、こいつ

とりあえず秀吉に電話するが、探している途中気づかないのか連絡取れなかった

「しょうがない、俺は東側探すから太陽は西側行ってくれるか」

「了解だ」

1時間に一度連絡を取り合うことにして、太陽と分かれた

東側には学校方面であり、他に川や大きな公園がある。

猫が行きそうな場所はわからないし、とりあえずしらみつぶしにさがすしかない

夜だが、相手は白猫なことが救いだ、夜に同化することはない

「チビーーーー!どこだーーー!!」

台風の音に対抗するように大声を出すがすぐに打ち消されてしまう

倒れたバス停、折れた木の枝、排水溝から溢れた雨

それら全てが今回の台風の大きさを物語っている

ホントにやばいか・・・

走るスピードを上げ、猫が隠れそうなところを覗き込みながら進む

既に体や髪はびしょ濡れ、靴の中にも浸水している

しかし待っている沙耶の方が不安だろうな・・・

そう考え探すのを続けた


一時間後太陽に電話をかける

「太陽?見つけたか?」

『いや・・・いない・・・こっちは秀吉と合流したが西側はほとんど探したらしい』

「そっか、じゃあこっち側にいるのかもしれないな・・・」

『そうだな、これから俺らも東側を探す、俺は学校の方に行く、秀吉は公園近くを探すから

 真吾は川沿いを探してくれ』

いつもは無口な太陽が指示を出す、こういう時やはり一番頼りになる

「わかったよ、そっちも気をつけてよ」

そう言って電話を切る

太陽の言うとおり、川に向かった

いつもは底が見えるほど干からびている川も

今日だけは特別だと、その川の流れをまざまざと見せ付けていた

この中に巻き込まれたら猫どころか人間だって命が危ない

川沿いを慎重に歩きながら猫を探す

探すこと10数分、対岸を結ぶ橋が見えてきた

橋の下の対岸を見ると誰かがこっちを見ながら立っていた

いや、こっちを見ているのではない、その対岸よりに川から突き出している岩の上にいる

白いもの・・・猫だ・・・何であんなところに!?

どうやら誰かはわからないがチビを救助しようとしてくれようとしているようだ

急いで橋をわたり対岸に行く

その間、太陽と秀吉にメールを打っておいた

対岸に到着し、現場に近づく

どうやら誰かは髪の長い女の人のようだ

「すいません!!それウチの猫なんです!!」

その人が振り向く

長い髪が雨でその人の顔に張り付き顔が半分隠れている

ようやく見えるのは形の良い鼻と口だけだった




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