第一歩
死にたい日々を乗り越え、高校二年生になった。勉強どころか、現実からも目を背け、無知無能に生きていた。それなのに、俺は多神教になりかけていて、先輩が卒業したことがきっかけとなり、とうとう第一の罪を犯した。
例え失恋しても、一途でいると誓ったはずなのに、好きな人ができたのだ。
卒業式の日、会場の片付けをしていたため、先輩を見送ることもできなかったというのに、未練の一つもなかった。
話を戻そう。その好きになった相手は名前も知らない人だった。ただ、トランペットを吹いているのを何回か見たことがあり、吹奏楽部だということだけは知っていた。
クラスメイトでもなければ、同じ部活でもない。接点はまるでなかった。そこで、吹部の友達に頼んで橋渡ししてもらうことにしたのだ。
今回の相手はよく小説を読んでいるという話を聞き、自分が執筆していることを利用して近づこうと考えた。
まず、吹部の友達に俺の小説を宣伝してもらう。その後、移動教室の時間を狙って、彼女の教室の前で友達と会話し、出てきたら会話に混ぜる。その時に自己紹介して顔見知りになっておく。という計画を立て、成功させた。
彼女の名前は本宮。それを知ることができ、「彼女に話しかけられる」という勝手に作った権利を得た。
しかし、話しかけようとしたら声が出なくなった。勇気が足りなかったのだ。顔見知りのまま二週間が過ぎようとしていた時、追い込まれたせいもあって、ようやく声をかけることができた。
「本宮さん、だよね?」
明らかに震えていた。手も足も全て。段差につまずきそうで、今にも足を滑らしそうで、手すりに掴まって、ゆっくりと階段を上った。
「うん」
どうして名前を知っているの? といった顔に感じた。だから改めて自己紹介して、会話へと入った。本宮さんはとてもフレンドリーで、感覚的にナンパした俺とも普通に会話してくれた。三分足らずの会話だったが、それでも幸せだった。
そんな風にして何度か会話し、口実をつけてLINEを交換し、そこそこ順調であった。それなのに、悪夢は訪れた――