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生きる。episode1

作者: 雪音

「生きる。episode1」


「人は誰かに“生きていいよ”と言われなきゃ、生きていけないんだ」

 ―私は、その言葉に救われた。


 人間なんて嫌いだ。自分の事しか考えない。他人の不幸は蜜の味なんて、よく言ったものだ。

 いつもそう、どの時代も私は、上手く生きる事が出来ない。「次はこうしよう。こうやって生きてみよう」と思っても、すぐにボロが出る。人に対して、拒絶反応、被害妄想。私の悪い癖だ。いい加減直さなければいけない。しかし、人の性格など、容易く治るわけがない。

 それは、私が何度も失敗して出した結果だ。

 “人は変われる”などよく言ったものだ。では、問う。私はどれだけ頑張れば変われる。何を頑張れば変われる。その答えは、誰からも出ることはないだろう。私は、どんなに頑張っても、変わる事などできない。

 私は、いつしか、本に逃げ込むようになった。本は好きだ。現実世界を忘れられる。しかし、本が終われば、なんと悲しい。現実に戻る。その時の悲しさ、もどかしさが、たまらなく嫌いだ。だが、本は好きだ。夢がある。何度その世界に行きたいと思ったか。生きたいと思ったか。

 私は、私自身が変わらなければ、幸せになることはないだろう。

 今まで生きてきた私は、何故、生まれたのか。何故、産んだのか。何故、生きているのか。そんなことを、いつも思って、考えていた。夜は特に、それを考えては泣いていた。私の存在など、あってもなくても誰も困らない。ならば、消えてもいいのではないだろうか?だって…生きていたって、嫌われるだけ。人に迷惑をかけるだけなのだから。私は、自分に生きる価値がないと思っていた。否、今も思っている。何度、消えようと思ったか。何度、実行しようとしたか。しかし、その度に、怖気づき、人に止められ、今もこうして、愚かに生きている。全く、困ったものだ。生きる価値のない私が、いつまでも生きていてはいけない。


 ある本に、こんなことが書かれていた。

 「人は誰かに“生きていいよ”と言われなきゃ、生きていけないんだ」

 その言葉に出会った私は、涙を流した。

 その言葉は私の心に、突き刺さった。

 その言葉は、私が欲しかった言葉。

 その言葉は、私を救った。

 私は、その言葉を、誰かに言ってほしかった。救われたかった。必要とされたかった。生きていいよ、君がいなければ、駄目なんだと…

 私は、生きたかった。

 私は、生きていたかったのだ。


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