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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
アナザーパーティ編
64/107

紫外線使い

待望の紫外線使いのターンです。

 アルセリアを探し出せないまま再び夜になった。相変わらずクロックワイズの町は無機質できらびやかな光に包まれている。


 日中、クロックワイズで情報収集をしていた杏奈とグランツがホテルに戻ってきた。


「どうだったかい?」


 ジョシュアは二人に尋ねた。


「全然だめだな。杏奈が見たっていう猫もいねえ。俺たちの命を狙っているようなやつもいなかったぜ。」


 と、グランツは答えた。杏奈もグランツの隣で頷く。そんな中、杏奈は何か嫌な予感がしていた。吸血鬼の存在、夜に活動する吸血鬼を殺そうとする者の存在。そうであれば合点がいく。


「そうだったか。情報収集ありがとう。」


 ジョシュアは立ち上がった。どうやら今から町に出てアルセリアを探すようだ。


「待って、ジョシュア。一人で行くには危険すぎる。きっとあんたは対策されている。」


 部屋を出ようとするジョシュアを見た杏奈は言った。ジョシュアの行動からは焦りが見て取れる。かつて味方だった者を手にかけようとする姿。杏奈の目には、ジョシュアの姿がかつてのアンジェラ・ストラウスと重なって見えた。


「そうだぜ。一人での行動はマズいだろ。俺が一緒に行くぞ。」


 シオンが言った。彼の発言から1分ほどの静寂が包む。


「ああ。ディ・ライトがいればそれこそ私が危ないな。頼むよ。」


 仕方がなさそうにジョシュアは言った。能力的にシオンとジョシュアの相性はよくないが、杏奈やグランツを行かせるわけにはいかない。そう判断したシオンとジョシュアはホテルの一室を出た。



 クロックワイズの町の中心部。洒落た商業施設が立ち並び、人が行き交う中シオンとジョシュアは辺りを気にしながら歩いていた。探す対象はアルセリア、彼女の連れている猫、それから自分たちの命を狙う者たち。どれも特徴的なのでわかりやすい。


「さて、どこから出てくるだろうね。ここは人込みだよ。」


 ジョシュアはつぶやいた。彼自身、アルセリアが一般人を好んで傷つけたがる人ではないと信じている。アルセリアとともに任務を遂行していたということもあり、ジョシュアのアルセリアへの信頼は本物らしい。もしそのジョシュアが信頼していたアルセリアに裏切られていたら?シオンの心に不安がよぎる。


「どうしたんだい、シオン。」


 考え込んでいたシオンにジョシュアが問いかける。


「なんでもない。腹、括らねえとな。最悪命奪うことになるんだからな……」


 シオンは言った。思い出す6年前の出来事。アンジェラが失踪した後、自分と同じチームにいた魔族を討った。シオンは彼の顔と声を忘れはしない。彼を討った事実はもはや覆すことなどできないのだ。


 人込みを出た時に空気が揺れた。自然に吹く風でも扇風機の類の風でもない。ジョシュアはこの風に覚えがある。


「アルセリアだ!」


 ジョシュアはすぐに確信した。アルセリアは姿を見せず、シオンとジョシュアの死角から狙いを定めていた。


 風向きが変わる。


「気をつけろ!来るぞ!」


 ジョシュアが叫ぶ。その時にはすでに遅かった。

 ビルとビルの間から、乱気流のようなものを纏ったアルセリアが突っ込んできた。その激しい気流はシオンとジョシュアを分断。アルセリアはそのままシオンの方へ向かっていった。ジョシュアはまたもやアルセリアを見失う。


「シオン!アルセリアの確保は頼む!」


 ジョシュアは言う。このとき、ジョシュアは敵が一人ではないことに気づいていた。ジョシュアの後ろにもう一人。

 ジョシュアは緑色のスライム状のイデアを展開した。迎撃の準備はできている。それと同時に、嫌な予感がしてならなかった。


 そして、予感は的中する。


「見つけたぞ、ジョシュア。俺たちを探していたのか?」


 ジョシュアの背筋に冷たいものが走る。彼が光の魔法使いに次いで相手にしたくない人物が後ろにいる。


 ――彼の能力は普通の魔法使いやイデア使いに比べると地味である。華やかな炎を出さなければ、煌びやかな雷を出すこともない。その能力そのものに致死性があるわけでもない。あったとしても老化の促進や発がん性。だが、吸血鬼は恐れていた。その能力は光……いや、紫外線だ。


挿絵(By みてみん)


 ジョシュアは彼を知っている。紫外線を操るイデアを持つディ・ライトという男。ブラックライトのような色合いで、濃い化粧を施した細身の男がジョシュアの後ろにいる。


「本当はアルセリアを探していたが、君もこの町にいたか。とにかく、再会できて何よりだ。」


 ジョシュアとしてはディ・ライトを敵に回したくなかった。その結果としてジョシュアはディ・ライトに対して友好的に接しようとしていたが、そうもいかないらしい。


「何より、なあ。言葉と行動が一致していないぜ。」


 ディ・ライトもすぐさまイデアを展開した。彼のイデアは鞭のような包帯のようなもので、紫色に近い光をぼうっと放っている。


(まずい。このイデアをどう攻略しようか……)


 ディ・ライトはイデアの鞭を振るう。ジョシュアにはただ避けることしかできない。


「すまないな、ジョシュア。俺たちの目的はルーン石。そのためであればお前だって殺す。」


 鞭がジョシュアの体にたたきつけられる。紫外線はスライムのイデアで防げない。ジョシュアをたたきつける紫外線を放つ鞭によって、彼の再生能力はほぼ奪われたに等しい。



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