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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
アナザーパーティ編
63/107

もう一つのパーティ

9時台に投稿できたのでよしとします。

 メックスは死んだ。アルセリアは自分で破壊したビルと反対方向へ足を急がせる。予想外の事態にアルセリアは焦るばかりだった。



 メックスも含めた4人が集まってたビルにアルセリアは戻ってきた。普段のアルセリアとは違って充血した目を見開き、顔が青ざめている。それに加えて顔の傷。


「戻ったか、アルセリア。息を切らしているうえに顔色が悪いぞ。」


 肩くらいの長さの髪で筋肉質の男が言った。彼の名はアモット。


「メックスが倒された。しかも倒したのはジョシュア。思い知ったよ。吸血鬼は馬鹿みたいに強い。前は味方だからあまり気にしなかったけど。」


 アルセリアは答えた。彼女の言葉で表情を一変させた男が一人。形容しがたい髪色で細身の男。彼はディ・ライト。


「よりによってジョシュアか……グレイヴワームで死んだと思っていたが……」


 ディ・ライトは頭を抱えた。わかりにくいが彼も悩んでいるらしい。しばらくの沈黙の後、再びディ・ライトが口を開く。


「俺がジョシュアを討つ。もし二コラがいた場合は二コラも俺が倒す。なぜなら俺が弱点を突けるからだな。」


 ディ・ライトが言うとアルセリアも頷いた。アルセリアはディ・ライトの能力を知っている。それは光の魔法と呼べる代物ではないが、吸血鬼に対してよく効く。アルセリアもその能力に助けられたことが何度もある。


「ジョシュアというやつはディ・ライトに任せる。アルセリアはどうする?」


 アモットが尋ねた。


「メックスの敵討ちとかは正直どうでもいいけど、気になる相手がいる。神守杏奈。」


 アルセリアはぐっと拳を握りしめる。元の世界での評判や対面したときの雰囲気にアルセリアは引き込まれていた。アンジェラに対するものとは全く異質な、アルセリア本人も理解できていない感覚だった。


「はあ?神守杏奈だと?あの魔法も使えない落ちこぼれに何を期待してるんだ?」


 ここでディ・ライトが口を挟む。


「私が撃った風砲をあいつは避けた。殺すつもりだったのに。」


 アルセリアは答えた。彼女が精神的に強くないことを知るディ・ライトはどことなく理解できたものがある。それに加えてアルセリアはどこか粘着質なのだ。普段は淡々としてそのようなそぶりを見せることはないが。


「頼んだぞアルセリア。絶対にルーン石を回収する。ジョシュアたちは13個のルーン石を持っている。俺たちの目的はあくまでもルーン石。忘れるなよ。」


 ディ・ライトは言った。その一言でアモットは顔をしかめる。アモットはまだアルセリアとディ・ライトを信用していない。


「アモット。俺は明日の夜動くぞ。」




 アルセリアがビルに戻った頃、杏奈とジョシュアもまたホテルに戻る。ドアを開けて部屋に入ってきた二人は険しい顔つきだった。


「アルセリアって人、想像以上に手ごわい。」


 部屋に入るなり杏奈は言った。アルセリアとの戦闘からほんの少しでも時間の経った今でも杏奈の脳裏には殺人的なアルセリアの攻撃が浮かぶ。あれは正面から向かっていって立ち向かえるものではない。


「アルセリアと戦ったのか……!?」


 杏奈の話に食いついたのはグランツ。


「戦ったよ。」


 杏奈は一言で答えた。彼女はこれ以上話したくないような空気を漂わせている。これを察知したジョシュアが口を開く。


「アルセリアについての情報は共有しておかないとね。あとはもう一人の行方不明者。ひょっとすると、この町にいるのかもしれない。」


 杏奈、シオン、グランツの3人はジョシュアの方を見た。


「まず行方不明者について。私と二コラが異界に来た時、同行者が二人いたんだよ。アルセリアがその一人。もう一人はディ・ライトという紫外線使いだ。異界に来た時にね、事故か何かで離ればなれになってしまったんだ。私と二コラはタリスマンという町に出たのだが、あとの二人は行方不明。」


 どうやらアルセリアは本当に鮮血の夜明団の構成員だったという。言葉にしえない感情を抱えたままの杏奈をよそに、ジョシュアは話を再開する。


「二人が行方不明になった後、私と二コラは異界の穴付近に現れた金髪の少女を追いかけた。ちょうどタリスマンの町にいたんだ。彼女を追いかけた先の洋館にアンジェラ・ストラウスを名乗る女がいたわけなのだが、彼女から直接二人の死を告げられたというわけだ。それからの記憶はグレイヴワームで治療を受けるまで途切れているんだが、この町に来るまで二人は死んだのだと思っていたよ。私は騙されていたんだな……」


 静かなジョシュアの口調にはどこか後悔がこめられていた。


「ああ、話の続きをしよう。次はアルセリアについて。彼女は風使いとでも言っておこうか。魔物ハンターとして有能であろうとしていてね、風を操る力を役立てようと熱心だった。本当に仕事熱心だけど少し純粋すぎるところもあったね。」


 フウ、とジョシュアはため息をついた。そのジョシュアのふるまいから彼がアルセリアを大切な仲間だと認識していたことが見て取れる。


「アルセリアのことはわかった。もう一人のディ・ライトって誰なんだ?」


 グランツが口をはさんだ。


「やれやれ、君はせっかちだな。ディ・ライトは私の苦手な光……紫外線使いだ。できれば彼と戦うのも避けたいな。」


 ジョシュアは答えた。


「情報、ありがとな。とにかく今はアルセリアを探すことだけに集中しないか?」


 ジョシュアの話が終わってシオンは言った。これは彼が彼なりに考えたうえでの提案だ。


「先輩、アルセリアはいずれ私のところに来ます。いずれ殺すと言っていたから。」


 杏奈は言った。


「そうだな。全員生きてこの異界から出る。俺はもう仲間を失いたくねえぞ。」



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