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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
支配された町編
55/107

恐怖、絶望、後悔

ちょっと早めの投稿です。

 ジョシュアの足元で炸裂する爆弾。


「危ない!!!」


 ノエルは咄嗟に文字の防御壁を張った。爆弾を包み込むような防御壁。炸裂した小型爆弾はジョシュアの左足の膝から下を吹き飛ばした。

 ジョシュアは傷口から多くの血を流している。ふつうの人間であれば重傷。下手をすれば命にかかわる傷だ。傷を負ったジョシュア本人はただ爆発し、穴をあけられた


「人間でなくて助かったよ。」


 膝から下をなくしたジョシュアはつぶやいた。彼の足の血はすぐに止まり、再生されてゆく。


「シオンは索敵を頼む。」


「ああ。」


 ジョシュアの足が吹き飛ばされたことは相当堪えたようで、シオンはすぐに音波を飛ばして周囲の罠や敵を探る。

 17個の爆弾が不規則に埋まっている。それ以外にもいくつか罠がある。毒矢、有刺鉄線、もう一つは閃光を放つようなものだろう。


「思いのほか罠が多いな。」


 シオンは言った。小型爆弾だけでも対処が難しいが、それに加えて複数の罠がしかけられているのだ。これらを攻略しなければ2階への突入は絶望的だ。


「どうやって突破しようか。」


 ジョシュアは言った。さっきの小型爆弾はジョシュアが無理やり耐える形でしのいだ。だが、残り17個を耐えるのには無理がある。


「それならば私の防壁でなんとかなるのかもしれない。私が防壁を展開するから。」


 ノエルは一行の周りに防御用の文字列を展開すると言った。


 最前列にジョシュア、真ん中にシオン、最後尾にノエル。3人は階段を上り始めた。


「ぐっ!?」


 ジョシュアの足元から衝撃が伝わり、階段が壊される。幸いノエルが防御しているおかげで足が吹っ飛ぶようなことはない。それでもジョシュアの足裏に伝わる衝撃は相当強い。

 ここでシオンがもう一つの罠に気づく。ひも状の何かがピンと張られ三人は包囲された。有刺鉄線だ。


「困った。さすがに私でも防ぎきれない。」


 ノエルは言った。

 有刺鉄線を挟んだ階段の下で、杏奈とグランツも階段を上る3人が有刺鉄線で閉じ込められる様子を見ていた。

 そもそも有刺鉄線は階段の段のすぐ下に敷かれていた。それが引っ張られる形で階段を上る3人を閉じ込めた。


「先輩!一番下の段って罠残ってます!?」」


 杏奈は声を張り上げてシオンに尋ねた。


「そこには何もない!大丈夫だ!」


 シオンは答える。杏奈はそれを信じて階段に近寄り、鉄扇で有刺鉄線を切った。どのような張り方をしていたのか有刺鉄線はすべてたわみ、地面に落ちた。

 しかし、それで解決したわけではなかった。


(赤い光!?)


 シオンが気づいたときには遅かった。あれは閃光を放つ罠ではなく、赤色光で吸血鬼を殺すためのものだった。


「ジョシュア!」


 シオンはジョシュアに声をかける。とっさに顔をしかめたジョシュア。顔が灰になったわけではなかったが、同じく外套から出ていた両手がぼろぼろになっている。体に浸食が起きるのも時間の問題。


「私はいい!とにかく進むんだ!」


 ジョシュアは叫ぶ。

 その時、何かが壊される音がしたと思えば赤い光が止まる。赤い光を放っていたライトにはダーツが刺さっていた。


「へへ……俺もたまには活躍するだろ?」


 グランツは言った。

 階段下から狙って破壊されたライトが赤い光を放つことはない。


「よし、いけるな!上の階の敵に気を付ければ!」


 シオンはあらかじめ敵の居場所についても探っていたようだった。階段を上るシオンたち。その後に続き杏奈とグランツも階段を上る。シオンたちが通った跡は罠が処理されており、対抗策を持たない杏奈とグランツでも安心して通ることができた。


 階段を上り、2階に到着する直前で敵に動きがあった。

 上の階からこの階段へ向かって40人単位で人が移動している。シオンが索敵した限り、この動きは今までの動きと全く違う。この動きは、何かの作戦を指示されているような動きだ。


「ノエル。探知はできるか?」


 シオンは言った。ここまで索敵を一人でこなしていたシオンがふとノエルに頼ろうとしたことをノエルは疑問に思った。


「なぜですか?」


「市街地にいた敵に比べて動きに秩序がある。指示を出されている印象はあるがそれなりの作戦行動をとっているみたいなんだ。」


 と、シオンは答える。


「わかりました。」


 ノエルは防御に割いていた文字列の一部を薄くすると、余った文字列を探知の文字列に書き換えた。ドラゴンランドで使ったような文字列だ。

 文字列に「イデアのかけら」が反応する。それらは住人たちを操っている釘のようなものだ。その出どころもノエルの探知ではわかる。2階だ。


「アヴラズも考えましたね。あえて2階に立てこもろうとするなんて。」


 ノエルは言った。

 それと同時に階段の上から操られた住人たちがなだれ込む。彼らは銃で武装しており、数名は手りゅう弾も持っていた。

 発砲。銃声。投げ込まれる手りゅう弾。廊下は無惨に破壊される。


「ノエル!早く防御を!」


 ジョシュアはイデアを展開しながら叫んだ。ノエルもそのつもりだったが間に合わない。そうしているうちにノエルの左肩に銃弾が命中する。その次は足。


「ノエル!!!」


 シオンや杏奈はわかっていた。ノエルはもう壁を張る事などできない。

 ノエルは銃創を抑えてうずくまっていた。痛みで息が詰まりながら、自分の受けた銃創から血が流れる感覚を感じることしかできなかった。


(怖い……来なければよかった……私、足手まといになってる……)


 絶望感はノエルの精神を確実に蝕んでいた。



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