市街戦
ついに書きたかったところに着手できました!
本日も宜しくお願いします!
私、黒崎揄憂は大阪と北海道の方々を応援します。少しでも読んでもらえると幸いです。
先陣を切ったのはシオン。道を開けるかのようにして光の魔法を人込みに向かって撃ち込んだ。
それに続く杏奈。一番近い住人に向かって突っ込み、鉄扇で首に深い傷を入れた。その後は群がる住人たちの間を縫うようにしてその先へと抜ける。
群がる住人たちの顔はそろいもそろって虚ろだった。
「手分けして大元を探しましょう!私たちには戦う力がある!」
杏奈は人込みの向こう側から叫んだ。
「ああ!それがいいな!」
シオンの声が聞こえてきた。
シオンの了解は得られたものの、杏奈はその作戦を誰もが承諾できるわけではないことが分かっていた。だが、杏奈はそれでも前に進んだ。
「手分けするにしてもさすがに単独なんて……」
ノエルは人込みの向こう側に行ってしまった杏奈を見てあきれたように言った。
「ノエル!後ろ!」
グランツの声がノエルの耳に入り、現状を思い出す。後ろ、つまり宿の方向から何者かがノエルを狙っていた。
ノエルの視界に入り込む鉈。殺される。ノエルは覚悟した。
金属音とともに鉈が弾き飛ばされた。
「あぶねえ……!死ぬなよ、ノエル!」
グランツは言った。
「ありがとう。やっぱり、一人だと危ないかな。」
「だな。」
グランツとノエルは前と後ろから迫りくる操られた住人達を見て言う。それぞれ、イデアはいつでも使える。牽制としても攻撃としても。
「一緒に探すか?」
「お願い。」
ノエルとグランツは背中を合わせ、操られた住人たちの様子をうかがった。ゆっくりとこちらに近づいているようで、彼らが銃などを持っている様子は見受けられない。
「よし、ここから抜けるぞ。大元の場所はわからねえけど。」
ノエルとグランツの二人も、今やるべきことはそれなりにわかっている。この状況は厳しいようで厳しくない。イデアを扱える二人が囲まれることはそれほどの危機を意味しないのだ。
まずグランツが動いた。ダーツをいくつか人込みに撃ち込み、道を開ける。
それに続くノエル。文字列を地面に配置することで他人の立ち入ることができない空間を作り出す。
二人で開けた道をノエルとグランツは進む。
人込みを走り抜けながらノエルは「踏むと作動する罠」を敷いていた。そして、人込みを抜け、住人達が襲い掛かるときに罠が作動する。
一斉に住人たちの様子が一変。まるで感覚を失ったかのようになる。
「何をしたんだ!?」
悲鳴に気づいたグランツは言う。
「神経をおかしくする罠だよ。視覚と聴覚を奪っておいた。」
得意そうにノエルは言った。初めて見るノエルの罠にグランツは目を丸くした。
「さて、いきますよ。」
ノエルとグランツは夜の町のその先に進んでいった。
杏奈の進んだ先は入り組んだ路地。誰が潜んでいるのかわかりにくい地形だ。建物の存在もあって、空気の流れもさほど良くない。
「……なんだ?」
杏奈の頬を風が撫でた。何かが来ると直感的にわかる杏奈。建物の影で杏奈はとっさに伏せた。
その2秒後に爆風。何かの破片が辺りに飛び散るのが見て取れた。敵――杏奈の命を狙う何者かは爆発物を使っていた。
(しまった。身を守るものもない。遠距離攻撃もできない。これでは相手のいいようにやられてしまう!)
杏奈は身を潜めるしかなかった。下手に動いては何をされるかわからない。こんなつもりではなかったと、杏奈は激しく後悔していた。
杏奈の額を冷や汗が伝う。
ここに足音が聞こえてきた。
(二人……武器の音はしない。構えておくにこしたことはないけれど……)
杏奈は鉄扇を出して開いた。さらにイデアも展開する。
足音がさらに近づいてきた。杏奈は足音の方へ目を向ける。暗くてよく見えないが、男女の二人組。
先手必勝。杏奈は即座に歩いてきた男に斬りかかった。
文字の守りが鉄扇の刃を防ぎ、金属のこすれる音がした。
「ノエル……?」
「ええ。焦りすぎだよ、杏奈。」
ノエルは言った。
「悪かった。グランツもいるんだね。」
「おう。で、この先はどうなっているんだ?」
グランツは杏奈に尋ねた。ノエルとグランツは杏奈が目の当たりにした出来事を知らない。
「敵が爆発物を使ってきた。」
杏奈は答えた。周囲には爆発物の破片が散らばっており、それらが使われたことは見て取れる。その爆発物ゆえに杏奈は先へ進めずにいたのだ。
「そりゃ厄介だぜ。どうやって対処するんだ?当たったら終わるだろう?」
グランツは言った。
「……たしかに当たったら私たちは死ぬ。二コラやジョシュアとは違うから。でも、私にはこれがある。」
ノエルはイデアを展開した。彼女の周りに展開されたのは文字列。罠を張ることも、射撃に使うこともできる便利な代物だ。
「私のイデアは数日の間にかなり成長したの。身を守ることもできるし敵の無力化だってできる。私が先陣を切るよ。」
ノエルはイデアを展開したまま先陣を切った。
ノエルが建物の影から出たところで銃声が響く。
「俺はノエルを援護する。杏奈は待ってろ。」
グランツは言った。杏奈は今の状況を理解しているからこそ頷いた。だが、杏奈の心にはくやしさともどかしさが重くのしかかっていた。
グランツは物陰から顔を出す。目の前には銃弾を防ぎながら無駄のないイデアの扱いで敵を無力化するノエルがいた。相手は10人強。
「ノエル!援護射撃だ!」
彼女のうしろからグランツは声をかけた。
「頼んだよ!」
それにこたえるノエル。
5秒後、ノエルを避けて放たれたダーツが銃を持った何人かに命中し、彼らは倒される。これで立ちはだかる敵は一掃できた。
「杏奈!もう大丈夫だぞ。」
グランツは建物の影で待っていた杏奈に声をかける。
杏奈、ノエル、グランツの3人は入り組んだ路地をさらに先へ進むことになる。その先にはさらなる敵が待ち構えていた。




