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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
支配された町編
44/107

奇妙な町

遅刻遅刻ゥ!

プロットを書くのは楽しくてもそのあとがしんどい!本日も宜しくお願いします!

 ディレインの宿で杏奈たちは5日ほど過ごした。5日間で二コラとグランツのケガはある程度までは回復していった。グランツの腕は確かに折れていたが、ディレインに住む錬金術師の治療が功を奏し、早いうちに完治する。


「よっし。俺ももう出発できるぞ。」


 グランツは言った。

 生まれて初めて受けた錬金術の治療のおかげでグランツは既に全快。いつも通りの笑顔を杏奈に見せた。


「昨日シオンから受け取った手紙によると、ティアマットの町で落ち合おうって話だ。ここから下って行ったところにあるらしい。」


 と、二コラは言った。

 深い森からディレインにやってきた一行はよく知らなかったが、ディレインという町は山奥にあり、出入りするための道は下ってきた道のみだという。ほかにも道はあるのだが、すべて登山道で別の町へ行くことはできないのだという。


「そっか。山を下りればいいんだね。」


 杏奈も言う。これから、一行は山を下ることになる。




 ディレインの町から下って行った先に、別の町が見える。

 ディレインの町ほどは寂れておらず、工事現場などが見える。人々はそれぞれ自分の仕事をこなしており、それなりの活気はあった。


 町のはずれでシオンたちは待っており、杏奈たちが見えた時に手を振った。昼間だったので、二コラとジョシュアは黒い外套をかぶっていたが。


「久しぶり。もう10日は会っていなかったよな。」


 再会のあいさつとして、シオンは言った。


「そうですね。まあ、ディレインにいた時も襲われましたよ。グランツと二コラが何とかしてくれたんです。」


 杏奈は返した。


「じゃあ、行くか。ティアマットからクロックワイズに行く列車も出ているらしい。」



 それなりに活気のある町ティアマット。外から見たのと同じように、数多くの労働者たちが働いている。


「宿はもうとりました。今日はゆっくり休みましょうか。」


 ノエルは地図を開いて言った。

 地図によるとティアマットはグレイヴワームと同程度の広さであるという。また、工事現場は建設中の商業施設だという。

 この町の様子を見ながら杏奈は手帖に何かを書きしるしていた。


「何を書いているんだ?」


 黒い外套を纏ったジョシュアは杏奈に尋ねた。


「この町の様子です。私の任務の一つに、異界の調査もありますからね。」


 杏奈は答えた。

 彼女は忘れてなどいなかった。ドロシー・フォースターを倒す事のほかに、異界の調査だって任されている。それをおろそかにすることはできないのだ。


「熱心だねえ。いい事だと思うよ。……確かあの二人もこれくらい熱心だったな。」


 ジョシュアは言った。あの二人。二コラとジョシュアはよく知っている。


「……4人で君たちと合流できるのが理想だったけどね。」


 ジョシュアはそう言うと、やや暗い顔を見せた。もともと憂いを帯びた顔をしていたジョシュアであるが、『あの二人』と関係あるのかどうかは杏奈にはわかりかねた。


「あ、あれですね。あの宿だ。」


 一行のゆく先に宿が見えてきた。黄色に塗装された木造の宿だ。


 一行は宿に入り、予約していた部屋でそれぞれくつろいでいた。窓際の机で手帖のメモをまとめていた杏奈は窓の外の奇妙な様子に気づく。

 フラフラとした様子でどこかに並んでいる町の住人。何かがあるというわけでもなく、木造の小屋に列を作っている。看板が見えない辺り、店ではないようだ。


「……異界には不思議なものがあるんだね。」


 杏奈はつぶやいた。


「どうしたの、杏奈。外なんて気にしちゃって。」


 同じ部屋のベッドに座っていたノエルが杏奈に尋ねた。


「外を見て。店でもないし、イベントが開かれているわけでもない。病院でもないのにどうしてあんなに人がいる?」


「そうだね。町の情報を集めたけれど、この宿から見える小屋で何かがあるなんて情報はなかったよ。」


 ノエルも杏奈の座っている椅子の近くに来て、窓の外を見た。何が起きているのかわからないが、確かに何人もの人々が小屋に集まっている。人々は直立状態ではなく、フラフラとしている。まるでバランス感覚を失ったかのように。


「小屋に集まっていることもおかしいけれど、バランス感覚がないように見えるところもおかしいね。何かあったのかな。」


 ノエルはさらに付け加えた。


「それもわからない。一体何が起きているんだ?」


 杏奈はそう言って手帖を閉じた。

 外に出るべきか、出ないべきか。杏奈は小屋に集まる人々が危険なのではないか、と考えていた。

 その時、部屋の扉をノックする音がした。杏奈は思わず鉄扇を取り、イデアを出す。もし敵ならば倒さなければ。

 ドアが開いて、グランツが焦った様子で部屋に来たことがわかる。


「杏奈、ノエル!この町はやべえ!」


 部屋に入ったグランツの第一声がこれだ。何がやばいのか、杏奈は予想を巡らせた。考えられるのは、窓の外にいた謎の町民たち。


「何がやばいの?」


 ノエルがグランツに尋ねた。


「さっき買い物に行っていたら額に何か刺さったヤツに襲われたんだよ!別に俺、妄想しているわけでもないからな!」


 グランツは言った。彼の息は上がっている。戦ってきたか、逃げてきたかどちらかなのだろうと杏奈には予想できた。


「それで、襲ってきたヤツはフラフラしていた?」


 と、杏奈は尋ねた。


「ああ……変な目でよ、ふらつきながら俺を襲ってきた。あいつら、バランス感覚ねえだろ!」


 グランツは言う。ここで杏奈の中ですべてがつながった。

 窓から見える小屋と、フラフラした町民たち。この町で何かが起こっているのだ。



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