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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
ルーン石編(後半になるほどグロ描写増えます)
42/107

二コラとグランツ

この小説を読んでくださる方々に感謝します。

 グランツの周囲で炎が燃え上がる。彼を取り巻く炎の熱がグランツの肌を舐めた。


「さて、終幕だな。グランツ・ゴソウ。お前も一筋縄ではいかなかったぞ。」


 ブンブンとマルコスは鎖を振り回し、グランツに狙いをつける。炎に囲まれたグランツに逃げ場はない。

 鎖がグランツに迫る。対するグランツは守りを捨ててマルコスに向かってダーツを撃った。鎖とダーツが交差する。


「ぐはぁ!」


 グランツの頬を鎖が打つ。グランツはよろめいて炎に服が触れた。

 ――熱い。熱がグランツの肌を舐める。これが焼かれる感覚。グランツは命の危機を感じていた。炎の外に出なければ死ぬ。

 グランツは何を思ったか、炎を突っ切った。刺すような熱に包まれ、上着に引火しながらもグランツは炎の中から抜け出した。


「やったぜ……まだ俺は死んでいねえよ!負けてもいねえ!」


 と、グランツは言った。それと同時に燃え始めていたパーカーを脱ぎ、上半身裸になる。


「往生際の悪い奴め。」


 マルコスは再び鎖での攻撃を試みる。一方のグランツはできる限りダーツを撃った。嵐のようなダーツがマルコスを包む。肩や腕が主に狙われ、ダーツはちょうどその辺りに命中。


「よし……最初からこうすればよかったぜ。」


 腕に力が入らなくなったマルコスは持っていた鎖を地面に落とした。これでマルコスの攻撃手段はなくなった。

 グランツは攻撃の手を止めず、マルコスにひたすらダーツを撃ち込んだ。いくつものダーツを撃ち込まれたマルコスはまるでハリネズミ。マルコスは険しい表情のまま地面に落ちた。ダーツは消えたがマルコスの傷は消えない。全身に穴があけられている。


「おさまらねえ……殺されてもいねえのに、なんでか許せないな。」


 はあはあ、とグランツは息を荒げながらつぶやいた。

 目の前には血を流し、手と膝を地についたマルコスがうずくまっている。彼の顔からも血が地面に滴っている。マルコスは痛みを無視したかのように立ち上がった。


「言いたいことがあるのか……?グランツ‘君’?」


「ああ。何があったのか知らねえけど、あんたは俺の兄さんのすべてを狂わせた。まさに、魂の殺人をしたんだよ。」


 グランツは言う。

 ――怒りと憎悪の炎は消えていない。今のグランツであればマルコスを殺すこともできる。

 グランツはたった一つのダーツのイデアを出した。

 対するマルコスは何度かふらつく様子を見せる。体中に力が入っていないのがグランツにもわかる。


「……恨むなよマルコス。あんたは俺を怒らせたんだ。」


 射出されるダーツ。白木の杭と同じ大きさのダーツはまっすぐにマルコスを貫いた。マルコスは心臓と肺を貫かれ、口から血を流す。吸血鬼ではないマルコスは即座に絶命した。


 グランツは人を殺した。恨みのある相手とはいえ、グランツの中に大きな後悔を残すのだった。大きく息を吐いた瞬間、グランツの体に痛みが戻ってきた。脇腹と腕を鎖で殴打されたあざ。

 ――そういえば折れていた。腕に力が入らない。

 グランツの左腕は腫れあがり、見るに堪えない。グランツは全身の力が抜けて座り込んだ。その瞬間、グランツの耳に銃声が入る。


「あ……」


「馬鹿!周囲に気を配れ!!!」


 グランツの視界が一回転した。折れていると思われる左腕に何かが触れ、後ろから何かにかばわれた。何が起こったのか、グランツにはわからなかった。


「……おい、無事か?」


 ハアハア、という荒い息遣いがグランツの耳元で聞こえてきた。グランツの視界の端には見覚えのある赤髪と紫色に塗られた唇が見えた。


「二コラ……」


 グランツはつぶやく。


「無事そうだな。骨が折れていそうだけどな。そいつがルーン石を持っているかどうか、余裕があれば確かめてくれ。頼むぜ。」


 と、言った二コラはグランツから離れる。二コラは何者かから胸部を撃たれていた。これはグランツをかばった時のものらしい。

 二コラは銃創から弾丸をえぐり出して地面に投げつける。


「さて、だれだ?傷を負ったグランツを狙撃しようとしたのは。」


 二コラはそう言うと、銃声のした方向に向き直った。

 燃えていない3階建ての建物。そのベランダに誰かが潜む。実体ではない、「概念」の狙撃銃。銃口が炎に照らされる。その奥に銃を構えた何者かがいる。


「銃なんざ俺には効かねえ。相手選びを覚えることだな!」


 二コラの周囲に炎のついた蝋燭のビジョンが浮かぶ。メラメラと燃え盛る炎が3階建ての建物に向かって放たれた。燃える建物。二コラを撃った狙撃手はベランダから飛び降りた。そいつの姿が二コラの目に入った。


「……ひい……!」


 二コラはその狙撃手に突進し、炎で狙撃手の喉を焼く。その時、二コラの視界に光る石が入る。

 ――これは見覚えがある。奪っておこう。

 二コラは狙撃手の懐から光る石を抜き取ると、彼の体全体に激しい炎を放った。人の遺体を焼く火葬場を彷彿とさせるような炎を。


「……おー、マジでルーン石だったか。」


 燃える狙撃手をよそに、二コラは光る石――ルーン石を見た。コーラルピンクの石には二コラが持っているものとは異なる文字が刻まれている。


「グランツ。そっちはどうだ?」


 二コラは言った。


「こっちにもルーン石はあったな。なぜか俺が持っていたやつと同じなんだよ。ルーン石っていくつあるんだ?」


 と、グランツは聞き返す。


「25個だ。全く同じルーン石なんて存在しねえよ。つまりお前が持っていたヤツを奪われて、あいつが持っていたことになる。」


「お、おう。俺やっぱりルーン石奪われていたのか。」


 グランツはドラゴンランドでの事を思い出した。ホテルで襲われたときに奪われていたらしい。さらにグランツはマルコスからルーン石を奪って気分がよくなったような感覚があった。二コラには言わなかったが。


「さて、しばらくこの町で休もうか。さすがにこのまま進むのは俺でもきつい。お前もボロボロじゃねえか。」


「そうだな!」


 二人は廃屋ばかりのエリアをあとにした。



紹介など

マルコス

翼のイデア

密度:やや高 展開範囲:狭 継続時間:2時間 操作性:並 隠密性:低

空を飛ぶ能力。翼のイデアを出しているときしか空を飛ぶことはできない。武器と組み合わせることで真価を発揮する。マルコスは鎖と組み合わせた。


サリオラ(ニコラに倒された狙撃手)

狙撃のイデア

密度:高 展開範囲:狭 継続時間:45分 操作性:悪 隠密性:やや低

狙撃銃の形をとるイデア。100%の命中率を誇るが、姿を見られては対処法がない。

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