鎖
地震に台風。災害が多いですね。
私はどちらも関係なしな地域住みなのですが何とかして復興に貢献したいものですね。北海道や関西にお金を落とすという手がありましたのでその方法で…。
本日も宜しくお願いします!
流血したマルコスと無傷のグランツ。二人は夜のディレインの町にてにらみ合う。
「残念ながら聞く暇を与える気もないのだよ。」
マルコスはグランツを拒絶するかのように鎖を振るう。空中から叩きつけられる鎖は周囲の空き家を破壊し、グランツに襲い掛かった。飛ぶことができないグランツは機動力におとり、鎖を避けることは困難となる。
グランツが逃げ込んだのは空き家と空き家の間。隙間からマルコスを迎え撃とうとするが、それはすぐに阻止される。
がん、と音がして片方の空き家が崩れる。その破片がグランツの上にふりかかり、グランツは閉じ込められた。
(まずい。上にあるやつが木とはいえ、脱出できるんだろうか。ここでイデアを展開しても……)
グランツは考える。彼の周囲は静寂に包まれ、マルコスの居場所すらわからない。
グランツが動けば確かに破片の下から脱出できる。だが、脱出の際に見つかって攻撃を受けるのかもしれない。瓦礫が動き、その音でマルコスに居場所を知らせることになるのだから。
そして、グランツは行動に出た。
――鎖はなんとかして避ける。脱出したら、すぐに攻撃を仕掛ける。グランツの考えはそれだけだ。
「あ……」
グランツの真上から鎖がたたきつけられた。
顔を出した瞬間、上にかぶさっていた板が破壊される。グランツは紙一重で鎖をかわした。そしてイデアを出し、上に向かってダーツを撃つ。
上にかぶさっていた板にいくつもの穴があいた。
(穴は空いた!ここから脱出すれば……)
グランツは穴に手をかけて、身を乗り出す。
だが、その時マルコスの鎖がグランツを打った。
グランツの体中に痛みが走る。鎖が脇腹に命中したグランツはそのまま吹っ飛ばされて別の民家の塀に激突した。
「もう終わりか?やはり人間は脆いなあ。クロイツとは大違いだ。」
クロイツは地面に降りると言った。月明かりと翼の光に照らされたマルコスは妖艶な雰囲気を纏っている。敵でありながら美しい、とグランツは感じていた。だが、グランツは同時にマルコスをいかに攻撃するかを考えていた。
「よし、早いとこビリーに頼んで人間をやめるか。」
フウ、とマルコスは息をついた。
二人の間に緊張した空気が流れる。マルコスもグランツのイデアをついさっき知った。ある程度離れていても攻撃されることを考えたマルコスはうかつに動けない。今はグランツの方が、射程が長いのだ。
ここでグランツが立ち上がる。
「……ああ、本当に俺は吸血鬼と縁があるな。クロイツ兄さんの事といい、あいつらの事といい。やれやれだぜ。」
脇腹を抑えたグランツはまだ闘志を失っていなかった。グランツは痛みをこらえて再びイデアを出す。銀色のダーツは月明かりとマルコスの翼が放つ光を受けて鋭く輝く。
次の瞬間、先にグランツが動いた。
「先に動いた方が負け、とは言ったものだ!」
マルコスは言った。
鋭いダーツがいくつも撃たれ、応戦するようにマルコスは鎖を振るう。その余波で廃屋が破壊された。
脇腹への一撃以外、グランツは無傷。しかし、地上からマルコスに決定打を浴びせることも困難を極めた。
(どうやってマルコスを撃ち落とそうか……ダーツもよけられては意味ないんだよなあ……)
ここでマルコスはグランツの死角に回り込み、鎖を振りぬいた。グランツはその鎖が命中することを察する。
マルコスの手には、鎖で人を殴った感覚が残った。
グランツは再び吹っ飛ばされたがここで一矢報いていた。
「なに!?」
マルコスが目視できたものはこちらへ向かってくるダーツ。3本のダーツがマルコスを突き刺さんと飛んでくる。
マルコスは攻撃だけに集中しすぎていた。
2本のダーツはマルコスの翼を貫き、残りの1本のダーツはマルコスの膝に命中した。膝の皿が砕かれて血が足を伝って地面に滴る。
「へへ……今度こそやらせてもらったぜ!」
グランツは言った。しかし、そのグランツは左腕を骨折した。
マルコスは顔をしかめる。
「この野郎……」
マルコスは思わず声を漏らした。ピリピリとした空気が一層強くなる。
グランツもこの空気の中、イデアに注意を集中させた。来る。
マルコスは地面から飛び上がり、空中からグランツを狙った。ここまではグランツの予想通り。グランツはすぐに攻撃はせず、マルコスの出方をうかがった。しかし、マルコスは攻撃すると見せかけて手を止めた。それだけではない。なぜかマルコスはグランツから離れたのだ。
(あいつ……どこに行くんだよ。)
グランツにはわからなかった。そして、追う気にもなれなかった。――脇腹と左腕に走る痛み。この痛みを抑えられないグランツはせめて魔法を覚えておけばよかったと後悔していた。グランツは杏奈と違って魔法の才能が全くないというわけではなかったのだから。
痛みをこらえ、周囲に注意を向けていたグランツ。30秒後、上空からマルコスが現れた。彼の手にあるのは顔と同じ大きさのランプ。中には油が入っており、明るく炎が燃えている。マルコスはランプを投下した。
「町ごと燃えて滅びるがいい!」
グランツは咄嗟にランプを避けた。だが、ランプが割れて油が広がり、木造の廃屋に燃え広がった。燃え広がった炎はグランツの周囲を取り囲む。
「や……野郎!」
「フン。脱出不可能だ。いずれお前は、燃えて死ぬ。」
空中から見下ろすマルコスの目は炎に照らされているのとは裏腹に、冷ややかだった。




