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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
ルーン石編(後半になるほどグロ描写増えます)
40/107

そそのかした男

戦闘描写が始まります。

久し振りにグランツが活躍する予感。ここまできてグランツの過去に触れられなかったのがとてももどかしくて。

戦闘中の回想が大嫌いなので、もうグランツとその兄についてどこで触れればいいのやら…

駄文失礼しました。今回も宜しくお願いします。

 トイレを出たグランツは杏奈たちと合流し、取っていた宿の部屋へと移動する。その間、グランツはずっと何者かの視線を感じていた。

 ぎし、ときしむ宿の天井。上に何者かがいるのではないか。どうにもグランツは気のせいで済ませることができない。

 そわそわしたそぶりを見せるグランツに気づいた杏奈はグランツの方を見る。


「どうした、グランツ。吐き気はおさまったって言っていたよね。」


 杏奈が言った。


「そうじゃねえよ……誰かの視線を感じる。」


 グランツは立ち止まる。こんなさびれた宿に誰がほかに来るだろうか。グランツは気になって仕方がなかった。


「視線……いや、きっとつけられている。」


 杏奈は言った。すると、グランツは後ろを振り向いた。

 誰もいない。


「誰もいねえぞ。外、見てこようか。」


 と、グランツ。


「そうしてくれよ。俺は疲れが取れたら行く。」


 二コラは言った。

 二コラも視線には気づいていなかった。だが、グランツを信じて彼を外に送り出す。命を狙われる立場なのだから、いつ襲われてもおかしくない。二コラの中にはシビアな認識があったのだ。



 宿の外。町の中心部に近い場所とはいえ、人通りがほとんどなくさびれている。

 そんな人通りの少ない場所に、薄い金色の霧は相変わらず立ち込めていた。グランツは外に出て、宿の中で感じていた視線の正体に気づく。視線の正体は、そいつは、ディレインの商店付近で目撃した男。


「マルコス……」


 グランツは言った。


「お前か。いずれ戦うことになるとは思っていたぞ。」


 マルコスはそう言うと、宿の屋根から飛び降りた。6年前にグランツがちらりと目撃したその面影を保っているマルコス。金髪で斜視気味の男。彼こそが兄を吸血鬼にした原因なのだと、グランツは改めて実感した。


 どくん。

 心臓が高鳴る。目の前の男に対するグランツの思いは複雑だ。


「それはいいとしてよ、お前はクロイツ兄さんとどんな関係だったんだよ。教えろ。」


 グランツは言った。マルコスは一瞬だけ黙り、答える。


「ただの友人さ。紅石ナイフについては、俺が拾ってきたやつを預けたに過ぎん。まあ、しいて言えば、吸血鬼化したあいつに利用価値があると思っていた、かな?」


「……野郎……!」


 ふつふつとグランツの中で怒りが湧き上がる。

 グランツも兄であるクロイツ・ゴソウからマルコスの話は聞いていた。友人だということ、時々頼み事をしてくるが悪い奴ではないということ。

 だが、この瞬間にグランツの中で形作られていたマルコスのイメージが崩れ落ちた。マルコスは友人を利用するためなら平気で人ならざる者に変えてしまうことさえできる心の持ち主。

 グランツは心の奥でマルコスに怒りを覚え、ひどく軽蔑した。


「俺に怒りを覚えたのか?」


 グランツの心を見透かしたようにマルコスは言った。


「そうに決まってるぜ……クロイツ兄さんから太陽を奪ったんだ。許せるわけがないな!」


 先に動いたのはグランツだった。怒りをあらわにしたグランツはイデアを出し、彼の周囲にはいくつものダーツが浮かんでいる。


「許す?意味がわからんな。俺を誰だと思っているんだ?」


 マルコスは言った。彼はキーチェーンのように腰につけていた鎖を抜く。それだけではない。マルコスの背にグリフォンのような翼が現れる。グランツにはその翼の正体がわかる。それはイデアだ。


 すぐさまマルコスは鎖を振り回し、鞭のような扱い方でグランツを狙ってきた。

 グランツはひょいと鎖を避けるとその間を縫ってダーツを撃つ。鎖とダーツは宿の屋根を破壊し、ちょっとした破片が地面に落ちる。

 ――場所を変えたい。それがグランツの正直な考えだった。


 グランツはマルコスを挑発するようなそぶりを見せ、マルコスを空き家の多いエリアへとおびき出した。

 マルコスもグランツも考えは同じだったようで、下手に人の住む家屋を傷つけたくはなかったのだ。

 路地を走るグランツ。グランツを追い、屋根から屋根へ滑空を繰り返すマルコス。お互いに攻撃のタイミングが合わないでいた。だが、グランツはその拮抗を崩す。


 しゅん、と空を突き抜ける勢いでダーツが飛ぶ。

 マルコスは鎖で数本のダーツを撃ち落とすと、ジャンプする。マルコスは空に浮いた。そこからグランツを殺そうとして、鎖を叩きつけた。

 砂埃が舞い上がる。


「外したか。」


 マルコスの手には、鎖が地面を打った感覚のみが伝わった。グランツはその鎖をかわしたらしい。

 そんな中、砂埃がゆらめいた。人が動いたことで。

 グランツはその砂埃の中から飛び出し、油断したマルコスに向けてダーツを撃ち込んだ。とっさにマルコスは翼で体を覆い、ダーツを防ぐ。

 ダーツはマルコスの翼に突き刺さる。


「うぐっ!?」


 翼でダーツを防いだマルコスは思わず声を上げた。

 ――貫通したダーツの痛みが、一瞬にしてマルコスを襲う。刺さった部位は命にかかわるところではない。

 マルコスは再び翼を広げ、刺さったダーツが消えた。マルコスは傷つけられ、血を流している。それでもマルコスはあきらめるつもりなどなかったのだ。


「頑張りすぎて死ぬなよ。俺だってお前に聞きたいことがあるんだ。」


 少なからず傷つけられたマルコスの様子を見てグランツは言った。もちろん、今のグランツにマルコスの事を思う気持ちなどみじんもない。



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