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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
序章~異界まで~(ゲロ注意)
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異界へとつながる町

まだ転移は先ですね。

読んでくださる方、有り難うございます!

 2月26日夜。一行はスリップノットに到着する。やはりレムリア大陸の南半分に位置するだけあって、ディサイドからは2日近くかかっていた。


 杏奈たちは鮮血の夜明団の一員ということで、スリップノット支部のドミトリーに泊まることができた。このドミトリーを拠点に明日はスリップノットの様子を見ることにするのだ。いわく、この町は異界との関係がありすぎる。偽硬貨しかり、失踪者しかり。

 町はどこか不穏な空気が漂っており、失踪者については現実味を帯びていた。データ上ではすでにシオンが確認していたことではあるが。



 翌日。一行はスリップノット支部に赴く。シオンが事前に連絡を取っていたということもあって、スムーズにことは進んでいた。


「おはようございます。お待ちしておりました」


 初老の男性、このスリップノット支部の責任者であるジョエル氏。シオンがたびたび連絡していた人である。

 ジョエルはやわらかな声と表情で一行を迎え、決して敵意や殺意がないということを証明しようとしていた。


「おはようございます。今日は宜しくお願いします。異界の資料が揃っていると聞きましたので」


 と、敬語で話すシオン。本部でのシオンがこのような姿を見せることはまずない。ジョエルはシオンが敬語を使うほど偉い人物なのだ。


「例のブツですね。このケースの中身です」


 ジョエルは黒いケースを開ける。中身は薄い紙で包んだコイン。それまでは普通のもの。しかし、コインに刻まれているものは、見たことがなかった。この大陸で流通するあらゆるコインとは全く違い、金属の材質からして貨幣としての価値を有している。遊戯用のコインなどとは訳が違うらしい。


「10000デナリオン硬貨?偽物ですよね?」


 シオンは確認のためジョエルに尋ねた。


「これは異界で使われている硬貨ですね。金額だけではありません。作られた年が、どう考えても未来なのです。今はN2006年ですが、この硬貨はT2018年になっているのです。暦からして違うようでして」


 と、ジョエルは言った。この大陸では年号にNをつける。たとえば、杏奈の生まれた年はN1989年ということになる。その暦につける記号から違っており、さらに年数も違う。


「何か分かりにくいですがこれが異界で使われているのですね。どこかで聞いた都市伝説みたいです」


 と、ノエルは言った。


「そういうことになります。尤も、スリップノットで摘発されたものですがね。飲食店で見つかったそうです。一度警察組織に渡った後、我々に押し付けられました」


 ジョエルの証言や調査結果、そしてT2018年に製造されたらしい偽硬貨を目の当たりにして異界の存在に実感が湧く一行。また、行方不明者も続出していると、ジョエルは言った。これも噂通り。


「異界からこちらへ来る者も、こちらから異界へ消える者もいるのです。スリップノット支部でも4人異界から戻ってきません」


 ジョエルはスリップノット支部で行方不明となった構成員の資料を渡す。


 ――ニコラ・ディドロ。66歳。吸血鬼であるが鮮血の夜明団の一員。スリップノット海岸線にて行方不明。

 ジョシュア・ノートン。144歳。吸血鬼、鮮血の夜明団の一員。スリップノット海岸線にて行方不明。


 シオンが見ていた資料を受け取り、目を通した杏奈は嫌なものを思い出す。シドの手紙。ドロシーは異界の吸血鬼。アンジェラも恐らくは吸血鬼だろう。

 杏奈はここで考えることをやめた。


「杏奈。顔色悪いよ? 」


 ノエルは杏奈に言った。人をよく観察しているノエルだからこそ気づいた。


「いや、私が考えすぎた」


 杏奈はどうしてもドロシーのこと、シドを殺した謎の吸血鬼のことを考えずにはいられなかったのだ。


 シオンは資料の別の部分にも目を通す。あとの二人は人間。ディ・ライトという男性とアルせリアという女性だった。


「くれぐれもお気をつけ下さい。異界は未知の場所です」


 スリップノット支部を出る時に、ジョエルはそう言って一行を見送った。



 スリップノット支部を出た一行はスリップノットの町を探索することにした。異界に関する多くの情報を得るために。異界調査を進めるにあたってやはり必要となるのが「生の声」。それを得るためにはやはり町に出る必要がある。


「よし、お前ら。どの辺りを探ってみるか?スリップノットは広いからな」


 シオンは言う。


「私は海岸線を当たってみたい。4人、あの辺りで行方不明になったと聞く」


「お!俺もそうしたかった!だって行方不明者だぜ?」


 と、杏奈は答え、グランツもそれに賛同する。


「ごめんなさい、私は遠慮します。というか、金色の霧が出るエリア全体を当たっておきたいところです」


 ノエルは言った。


「よし。俺とノエルは金色の霧が出るエリアを、杏奈とグランツは海岸線の近くを探索しよう。今日の夜7時にドミトリー集合だ」


 三人の意見をまとめるシオン。現在は午前11時。8時間ほどでスリップノットを調査する。スリップノット支部を出たところで、一行は二組に分かれたのだ。

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