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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
ルーン石編(後半になるほどグロ描写増えます)
37/107

導く姿

なんとかなりそうです!

「歯ぁ食いしばれ!グランツ!」


 二コラは叫んだ。彼はこの先の見えない状況において、いかに先へ進むかを考えていた。泥臭くても必死で足掻き、希望を追い求める意思がある。


「二コラ、私もまだやれる。」


 杏奈は立ち上がった。少しせき込みながらもその眼光は失われない。


「リッチーとかいうやつは私がやるよ。私なら、あいつの攻撃は防げる。」


「頼んだぜ。となると、俺はフォント・セアか。トンネルで戦うだけにタチが悪いな。」


 二コラは言う。

 まず動いたのは杏奈。砕く能力でグランツのダーツをいなしていたリッチーにあえて近づいた。


「そのままの攻撃でいい!グランツ!私がよける!」


 杏奈の声は逆にリッチーに自らの居場所を伝えることとなる。それでも杏奈は気にしなかった。鉄扇を開き、リッチーを背後から切り裂いた。


「……よし!」


 リッチーの服と肌が裂ける。これが決定打ではないことくらいわかる。

 攻撃を受けたフォント・セアは振り返り、何かの合図をする。指をピースサインにする。何のつもりなのか分かりかねる杏奈。その時。


「杏奈!?」


 グランツは叫ぶ。急いでグランツはイデアを消した。再び足元をすくわれる杏奈。杏奈に気を取られるグランツ。チャンスと判断し、グランツにつっこむリッチー。


「グランツ!!!あぶねえぞ!!!」


 フォント・セアに攻撃を回避された二コラは叫んだ。


 グランツに迫りくる「砕く」イデア。グランツはここで賭けに出る。あえてリッチーに直接攻撃する。この勝負、先に当てた方が勝つ!


「おおおお!」


 全神経を集中させて、グランツはダーツを放つ。鋭いダーツはグランツにとってかつてない速度で飛び、リッチーの体を貫いた。そのおかげでグランツはリッチーの攻撃を回避。グランツは得意げに笑った。


「やったぜ……」


 ほっとするのもつかの間、目の前では杏奈と二コラがフォント・セアに対処していた。フォント・セアは壁から天井に、天井から床へと移動し、二人を翻弄していた。


「どうなんだ……あいつは。」


 グランツは言った。


「攻撃が当たらねえ!土の中に潜まれると面倒だ。」


 二コラが答える。現に杏奈も攻撃を当てることができないでいた。いつ、どこに移動するのかがわからない。

 その間にもフォント・セアは移動を繰り返し、隙を突こうと狙っていた。それはフォント・セアだけではなかった。


「なんだ!?」


 一瞬にして列車が破壊された。トンネルの中が血の海となったことから、乗客まで巻き込まれたらしい。

 暗闇の中からそいつは現れた。血濡れの男、リッチー。先ほどまでつけていたマスクは外れ、裂けた口が露になっている。


「俺はまだ死んでいないぞ。」


 リッチーは言った。


「……何を……」


 リッチーの軽率な行動が3人を怒らせることとなる。リッチーは無関係な車内に残された乗客を殺した。


「おい……ふざけるなよ、クソ野郎!」


 まずはグランツが動いた。怒りに駆られているのかダーツの弾道が定まらない。一方のリッチーは無言でグランツのダーツをいなす。挑発をすることがそこまで楽しいのか。リッチーは邪悪な笑みをうかべていた。


「挑発に乗るな、グランツ!」


 杏奈は言った。それでもグランツは攻撃の手を止めない。その時、天井からフォント・セアがグランツに向かって飛んでくる。


「グランツ!」


 二コラが炎を撃つが、外す。それに続いて杏奈がフォント・セアの軌道に飛び込んだ。フォント・セアは杏奈の跳び蹴りを受けて地面に倒れこむ。地面に潜り込むことはしなかった。

 杏奈はフォント・セアに目もくれず、リッチーに突っ込んだ。


「人をだます敵、人を誘拐する敵。いろいろ見ていた。」


 砕くイデアを杏奈ははじく。その精度は数日前よりも格段に上がっている。


「八つ当たりで人を殺すってどうなの?あんた、頭おかしいよ。」


 リッチーは杏奈が話す間にも攻撃した。だが、杏奈はそれにも対応できていた。星空のイデアだからこそ、それができる。

 杏奈はリッチーに隙ができた瞬間を狙って正確な蹴りを入れた。その場所は脇腹。骨が折れる音を杏奈は確かに聞き、蹴られたリッチーは線路の近くに倒れた。息があるかどうか、杏奈にもわからない。


 次はフォント・セアだ。


「来いよ!今度こそ俺たちが片をつけてやる!」


 二コラは言う。二コラと彼らの間に何があったのか、杏奈とグランツには知る由もない。


「お前ら。こいつらは八つ当たりで大量殺戮する連中だ。」


 フォント・セアを攻撃する直前に二コラは言った。そして、トンネルが明るくなるくらいに炎を放つ。壁や床から出てこなくなるだろうが、気にしていない。


「私にはきっと対応できない。お願い。」


 杏奈は言った。フォント・セアへ対抗できないと判断した杏奈はリッチーが起きてきたときに備えていた。肋骨が折れていたようなので、起き上がることはないだろうと考えていたが。


 燃え上がる炎の中、フォント・セアは姿を現さなかった。目視することだって叶わない。二コラはいつでも仕掛けられる。襲ってきたら燃やす。それだけを考えていた。

 その時、フォント・セアは現れた。杏奈の背後。


「杏奈!」


 二コラは叫ぶ。間に合わない。天井からフォント・セアは杏奈に襲い掛かる。手には刃物。


「……こっちか!」


 杏奈は一瞬で向き直り、鉄扇でフォント・セアをいなした。


「グランツ!今だよ!」


「おう!本当は天井ごとやろうと思ったけどな!」


 放たれるダーツ。銀色のダーツは炎で輝きながらまっすぐな軌道を描く。それはフォント・セアの移動する場所を通過するような軌道。

 鮮血が杏奈にかかる。フォント・セアの体は貫かれた。そのまま倒れ伏すフォント・セア。杏奈たちは何とか二人を倒すことができた。


「さてと。いったんトンネルを出ようぜ。」


 二コラは黒い外套を羽織る。当初は自分勝手なように見えていた二コラだが、今の姿を見て杏奈は見直した。今の二コラは杏奈とグランツを導こうとしている。それだけ杏奈には頼もしく見えたのだ。


 3人はトンネルの外に出た。



紹介など

リッチー

砕くイデア

密度:低 展開範囲:並 継続時間:1時間 操作性:悪 隠密性:やや低

物体を砕く能力。人を砕くこともできる。


フォント・セア

地中のイデア

密度:超高 展開範囲:超狭い 継続時間:2時間 操作性:悪 隠密性:やや高

地中を泳ぐ能力。その原理は土などを溶かしているという。イデアは身体の周囲10cmの展開範囲しか持たない。なお、洞窟やトンネルとの相性はすごく良い。

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