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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
ルーン石編(後半になるほどグロ描写増えます)
33/107

もう一人の刺客

宜しくお願いします!

 繁華街から歩いて10分ほどの商業施設の前で杏奈はノエル、シオンの二人と合流した。


「何があったんだよ。上着がない上に服がビショビショじゃねえか。」


 杏奈の姿を見るなりシオンは言った。確かに杏奈の姿も気になるところではあるが、グランツがいない。ノエルはグランツの不在を不思議に思った。別行動を取ると決めていたわけでもないのだが。


「それにグランツもいないね。はぐれた?」


 ノエルも杏奈に尋ねた。


「私が一緒にいたグランツはグランツじゃなかった。ライブハウスに監禁されているらしい。」


 杏奈が答える。いつからグランツがハマーと入れ替わっていたのか、杏奈にはわからなかった。その一方、シオンは思い出す。ホテルにいるとき、グランツは一度一人になった。まさかその時にグランツは襲われたのか。


「きっとホテルで何かあったんだろうな……。原因が何か考えるより先にグランツを助けよう。」


 シオンは言った。彼の言葉を聞いていた杏奈としては、グランツのことも心配ではあるが情報が漏れたことも不安に思っていた。



 杏奈、シオン、ノエルの3人はドラゴンランドにある唯一のライブハウスを訪れる。岩とドラゴンをモチーフにしたライブハウスでは様々なバンドのライブが催されるという。3人は中に入り、管理人の許可をもらうとそれぞれで別れてグランツを探す。


「ハマーの言っていたことだから信用ならないけれど、隅々まで探すにこしたことはない。」


 別行動に移る直前に杏奈は言った。



 ここはライブハウスのトイレ。便器につながるパイプにグランツはロープで括りつけられていた。声が出ないように猿轡を噛まされ、ドアの表側には「故障中」の紙も貼られている。あまりにも周到な犯行だ。


(出られねえ……今日は何日目だ?俺下手したら置いて行かれるよな。畜生……またトイレかよ……)


 グランツはこの状況で何が起こっているのか、知る由もない。下手すればここから出られないのかもしれない。


 ここで、トイレのドアが開いた。


「うわあ!なんでグランツがこんなところに!?」


 ドアを開けたのはノエル。グランツとノエルはお互いに驚いていた。なぜこのような場所にいるのか。


 ここは女子トイレ。グランツが閉じ込められていた場所は「故障中」の紙が貼られていた。なぜグランツがここにいたのか、ノエルに知る由もなかったがグランツの様子は見るに堪えないものだった。トイレのパイプに縛り付けられていることが何よりのインパクト。


「んぐぁーーーー!んーーー!」


 身振り手振りもできず、話すこともままならないグランツ。ひとまずノエルはグランツを縛っていたロープをイデアで解き、猿轡を外した。その直後、グランツは深く息を吐く。


「やれやれ。何があったのか、聞こうとはおもわないけど。」


 そっけない様子のノエルとともにグランツは女子トイレを出た。幸いこの様子は見られていない。


「あのなあ……俺は変態とかじゃねえぞ。感覚を麻痺させるやつに襲われてここに……」


「感覚を麻痺させる?」


 ノエルは聞き返した。感覚を麻痺させる相手は聞き覚えがない。きっと新手の相手。ドラゴンランドにはまだ敵が潜んでいるということになる。


「おう。名前は確かアンシで、ムーとかいうバンドのベーシストらしい。本人が言ってたな。」


 グランツは言った。


「よくわからない敵だね。理解に苦しむ。」


 ノエルは言う。


 そのままライブハウスの通路を進もうとしたノエルは壁にぶつかった。立ち上がった後にキョロキョロと見回すがグランツにはわかった。ノエルの目の焦点が合っていない。どこを見ているのかも。


「いきなり暗くなるんだね……」


 ノエルは言った。この発言をグランツは聞き逃さない。グランツが襲われたときもいきなり暗くなった感覚があった。


「違う!目の感覚がマヒしているんだよ!探知できるだろ!?」


「そうだったね。見えなくても探知すれば……」


 ノエルは目が見えないまま探知の文字を展開した。センサーのように、触れれば反応する。3重に展開した文字の中に、さっそくやつは入ってきた。


「私の後ろ!」


 ノエルが叫ぶ。それは一瞬。明かりの少ないライブハウスの天井から降りる影。光る刃。その刃がノエルの首筋へと振り下ろされる。


「させるかよ!」


 グランツが撃ったダーツは振り下ろされるナイフを弾き飛ばした。


「よし。久しぶりの見せ場だぜ。」


 得意げなグランツ。彼はすぐにノエルを狙った敵を確認した。青い髪でバンドのTシャツを着た男がいる。彼の周囲には手のひらのようなビジョンがいくつも出ていた。つまり、彼はイデアを使える人間。


「はー、脱出しちゃったか。せっかく安心してライブができると思ったんだけどな。」


「やっぱりお前かよ、アンシ!おかげで少しフラフラするんだよ!」


 殺意をあらわにしたグランツ。いつでもイデアを撃てる。ライブハウスの明かりを受けてダーツの形状をしたイデアが鋭く輝く。


「君からルーン石を奪ったことだ。あとはその娘からだな。正直君は邪魔でしかないな。」


 アンシはイデアの手をいくつかグランツに撃ち込んだ。目がうつろになるグランツ。視覚が麻痺している。


(見えねえ!聞こえねえ!匂いも、温度も、口の中の味もわからねえ……あと、平衡感覚はどこにいった!?)


 グランツの意識は完全に闇の中。見ることも聞くこともできず、ふらりと崩れ落ちた。


 一方のノエル。アンシが近づいてくる様子を探知する。


「これからは暗闇の中でもイデアですべてを認識する。この程度で私は屈しないよ。」


 盲目のノエルは言った。彼女の視線は定まっていないがアンシの場所そのものは認識できている。ノエルは近づくアンシを文字の罠でとらえた。


「うそだろ!?」


 声を上げるアンシ。


「私のイデアがどこまでできるか、試しておくものだね。あなたは私にしか対応できない。運が悪かったね。」


 周囲が見えていないままノエルは文字の塊をアンシに撃ち込んだ。何発も。どれくらいアンシに打撃を与えたのかもわからない。対するアンシの体に様々な文字列がまとわりつき、彼の動きを制限する。体力さえも奪われる。もはやアンシに動くことはできない。ここでノエルの目が晴れる。


「……そこにいたんだね、グランツ。見える?聞こえる?」


 ノエルは言った。


「お……ノエル!ちゃんとノエルだよな!急に見えるようになるからびっくりしたぞ!」


「そうね。私じゃなかったら確実にやられていた相手だよ……」


 ノエルとグランツは話しながらライブハウスの廊下を戻ってゆく。入口にいればきっと杏奈やシオンと合流できる。



 入口近くには杏奈とシオンがいた。ノエルとグランツの姿を見たシオンは表情が緩み、杏奈は「やれやれ」と言いたげな顔になる。


「本物だよね、グランツ。」


 合流した杏奈の第一声がこれだ。


「俺は本物だ。俺をこっちに連れてきたやつがタチ悪くてな、トイレで拘束されちまった。」


「よし、本物だ。」


 杏奈は言った。判断材料がグランツにとって不本意なものであったが仕方がない。これで仲間に信じてもらえるのなら。


 ドラゴンランドにいられる時間も長くはない。グランツが言うには彼のルーン石が奪われたとのことだが他は何ともないらしい。次に向かう場所はクロックワイズ。ドラゴンランドを発つ準備が必要だ。


イデア紹介

イズラエル

水のイデア

密度:低 展開範囲:超広 継続時間:3時間 操作性:並 隠密性:やや高

水と一体化するイデア。見た目は薄い水のようなもの。これで体を覆うと水に溶けることができる。


アンシ

掌のイデア

密度:並 展開範囲:狭 継続時間:30分 操作性:並 隠密性:並

五感と平衡感覚を麻痺させる。黒い手で対象の目などを覆うと発動できる。なお、解除すれば感覚は全て元に戻る。

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