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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
ルーン石編(後半になるほどグロ描写増えます)
32/107

キラーシンガー3

なんとか間に合いました。

主人公単独でピンチに追い込むと逆に最強主人公風味が出てしまいますね。ここは仲間との連携をもっと書いていくべきなんでしょうね。難しい。

 にらみ合う杏奈とイズラエル。先に近づいた方が負けるだろう。


 ここでイズラエルが動き、水流が杏奈に襲い掛かる。イズラエルは杏奈を水中に引きずり込むことをあきらめた。だが、近づけば不利だということが分かり、遠くから杏奈を狙う。


「水……ノエルがいれば楽だけどね……」


 杏奈は水で吹っ飛ばされる直前でイデアを展開する。その星空のようなイデアは水をはじき、杏奈へのダメージを最小限に抑える。とはいっても、この季節に濡れながら戦闘を行うことを杏奈は避けたかった。それは杏奈の体力を必要以上に奪うことになる。


 イズラエルの攻撃の気配を感じた杏奈は再び回避にうつる。その回避した場所にも攻撃が来る。杏奈は岸から橋にうつり、様子を見る。だが、橋に来た時こそ警戒しなければならない。


「引きずり込んでやりましょう。今度こそ!」


 ゆらめく水面。水面からニョキニョキと手のようなものが現れる。さっきの杏奈はこれで引きずり込まれた。これは危ない。杏奈は橋を渡り切り、小島へと避難する。その小島はある程度の広さがあるのでここであれば迎え撃つことも可能なはずだ。


 予想通り水の手が杏奈の足にふれる。杏奈はすぐにイデアを強めて水をはじいた。その様子を見たイズラエルは辺りの水を集めて大砲のように撃ち出す。避けられない。


「くっ……!」


 水の勢いはあまりにも強く、杏奈は吹っ飛ばされる。イデアで体を覆っていたものの、水の大砲までは防げない。そのまま杏奈は背中から大木に激突した。


 背中を強打した杏奈から見えるのは、揺れる周囲の風景。めまいが原因であることはわかる。まずは周囲を確認しなければ。敵が見えない状態で戦っても意味がない。


 ――イズラエルはいない。水の動きに変化もない。杏奈はじっと待つ。イズラエルが次に動きを見せれば、星空のイデアで反撃に出る。


「まさかいつまでも川に潜んでいると思っていないか?」


「は?」


 杏奈は上を見上げる。大木についた水滴が集まり、イズラエルが姿を現す。彼は杏奈が思っていたよりも近くにいた。イズラエルは悪趣味な形状のナイフを抜き、上から杏奈に斬りかかる。杏奈はそれを鉄扇で防ぐ。金属どうしがぶつかる激しい音がする。だが、これは案あにとってまたとない好機。イズラエルが地面に降りる瞬間を狙って杏奈はイデアを強める。死なない程度に重傷を負わせればよい。杏奈の一閃がイズラエルの片目を潰す。


「……まずは片目。」


 杏奈に手ごたえはあった。鉄扇から右手に伝う液体も血液だと確信していた。だが、それが杏奈を追い込むこととなる。


 斬撃を受けたイズラエルは一度原型をとどめずに崩れ落ちる。スライムのような液状となり、再び人型へと戻る。その際、杏奈によって受けた傷は一切ない。人型に戻ったイズラエルはにっと笑う。


「僕は水になれる。」


 ただそれだけを言うと、彼の周りに水が浮遊しはじめる。イズラエルは水を操る。それだけではない。水と一体化できるうえに傷も関係ない。杏奈には相性の悪い相手である。


「君に隠し玉がない限り、勝ち目はない。どちらにしろ、君も君の旅も終わる!」


 強い水流が撃ち出される。弾切れなどはない。この場にいる限り、水は尽きない。つまりイズラエルの独壇場。


「終わらせない。まだ手段はある!」


 杏奈は水のパターンを見極め、じわじわと距離を離す。水流に触れないように。川からある程度離れる。杏奈の取った手段、それは逃げること。


(きっとイズラエルは私のルーンも狙っている。ルーンを持ったまま引きずり出せばいい!そこで片をつける。……私にそれができれば。)



 ある程度離れたところで杏奈は振り返る。誰もいない。逃げたことが裏目に出たのかもしれない。杏奈はそれでも周囲を警戒する。杏奈が逃げた場所は100人橋から少し離れた繁華街のはずれ。人はいるが、杏奈の戦法であれば何とかできるのかもしれない。幸いここには水がない。


「さすがに乗ってくれなかったか。これはやりたくなかったが……」


 杏奈はスカートのポケットに入れていたルーン石を出す。それを高く掲げる。


「イズラエル!私はここだ、ルーン石だって持っている!ここに来ないのか?」


 杏奈は言う。太陽の光を受けてルーン石が輝いている。


「来ないか……まあそうだね。私だって不利な場所で戦いたくない。」


 杏奈がそう呟いた瞬間、側溝の隙間から水が上がってくる。その水と一体化したイズラエルは杏奈に奇襲をしかける。撃ち出される水の弾。杏奈はイデアを最大限に出し、水の弾を防ぐ。


「汚くないのか……私は汚水と一体化するなんて絶対に嫌だ。」


 と、杏奈は言うとイデアを纏った鉄扇で水をはじいた。


「どれだけ汚くてもやることがあるんだよ。君を殺してルーン石を奪う。」


 これまである程度の距離を保っていたイズラエルがいきなり杏奈に接近する。意図がよくわからない杏奈だったが近づかれるのは都合がいい。


 だが、イズラエルは杏奈の都合のいいような動きを見せなかった。イズラエルは杏奈に近づき、蹴りを入れた。杏奈は吹っ飛ばされて店の壁に激突。その後、イデアを出して立ち上がる。立ち上がった杏奈はイデアを鉄扇に集中させてイズラエルに突っ込む。ここで決めればいい。


(私のイデアはきっと水をはじく能力。ハズレなんだろうけど、この相手なら戦える!)


 イズラエルは側溝にたまった水を引き出しては杏奈に撃ち込む。その水の弾を杏奈は鉄扇のイデアで弾き、イズラエルの目の前まで接近した。


「思い残すことはないな?」


 その言葉の1秒後、杏奈はイズラエルの目を斬撃で潰す。それだけではない。杏奈はイズラエルの体に3か所傷を入れた。深いがしかるべき治療を施せば生きていられる程度の。


「もうお前に用はないよ。そこでゆっくりするなり、病院に行くなりすればいい。私はこれ以上お前に介入しない。」


 杏奈はそれだけを言い残して繁華街を去る。向かう先はハマーの話していたライブハウス。話が正しければそこにグランツがいる。


「やれやれ、ルーン石は何とか守り抜けた。それだけでもまだましだよね。」



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