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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
ルーン石編(後半になるほどグロ描写増えます)
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イデアという力の限界

本日午後9時頃、もう1話投稿します。お盆休みですのでぼちぼち読んでみてもよいかと。

これからちょくちょく改稿もしていこうかと思います。

 ルーン石の反応が地下から地上へと移動する。ノエルにとって、その移動は訳が分からなかった。しまいには、ある場所から1時間以上動かなくなった。その後はわからない。ノエルの体力が限界だったからだ。


「すみません、みんな。私の探知がこれ以上持続できなくて」


 ふらつくノエルは立っていることもやっとだった。ここはひとまずノエルをホテルに連れて行くことが先決だろう。見たところ、ノエルは土気色の顔で相当息が上がっている。誰が見ても彼女の体調が悪いことは明白だ。


「仕方ねえよ。肩くらいかしてやるから」


 グランツはノエルの肩を支える。それだけで大丈夫だろうか?当のグランツも少し不安だった。あまり話すことがないとはいえ、ノエルは大切な仲間なのだ。



 杏奈、シオン、二コラ、ジョシュアの4人は一足先にホテルに戻っていた。時刻は午前1時30分。この時間になってしまった要因。ハマーが現れるのが遅かったこともあるが、彼が粘った上に逃走したことも大きいだろう。


「ノエル、顔色が悪い。あんたも異界の影響を?」


 杏奈は至極冷静になって言う。それでもノエルが急に体調を崩したこともあってか本当は冷静ではない。


「イデアを使いすぎたみたい……吐き気はしないけれど、全身の力が入らない。この情報は知っておいて損はないかも」


 ハア、と息を吐いてノエルは床に座り込んだ。見るからに大丈夫ではないことくらい見て取れる。


「なるほど。私も気を付けないとな。限界を超えてしまっては命に係わるかもしれない」


 杏奈はそう言うと、「異界調査手帖」にイデア関連の情報を書き込んだ。ノエルが戻るまでにシオンから聞いたハマーの能力、限界を超えてイデアを使用すると体調を崩す等。今後、この情報はきっと役に立つだろうと。


「それと、話は変わるが奪われたルーン石はどうするかい?最悪、アンジェラがルーン石をすべて揃えなければいい。ただ、問題なのは博物館からの盗難なんだ」


 ジョシュアは口を挟む。ハマーとの戦闘直後と変わらず左腕はない。吸血鬼の特性を知る者が見れば何があったのかすぐにわかるはずだ。


「どうするかい?きっと大問題に発展するだろう」


「とは言っても、この異界の空気は私たちを確実に蝕んでいる。ルーン石のおかげでかなりマシにはなっている。それでも時間は限られている」


 杏奈は言った。彼女やグランツは異界に来て何度か体調を崩している。直近ではドラゴンランドへ向かう列車の中で体調を崩した。グランツも同じく命が削られている感覚がある。

だが、その一方でルーン石を入手するたびに症状は軽減されていた。


「だよな。俺もルーン石を持っていないときは息が苦しい。コイツで症状を軽減している感じだ」


 と、グランツも言った。杏奈とグランツの状態を知って、シオンは今更ではあるがシドを恨むことになった。自分でも死んだ人間を恨むことは無意味であると知っているにも関わらず。


「申し訳ないことだと思うが、ルーン石はそのままにしておこう。俺たちの時間も限られているからな」


 結論を出すシオン。鮮血の夜明団本部でそれなりの地位を持ち、一行でもリーダー的な立ち位置のシオンなので、それが妥当である。




 翌朝、案の定ルーン石が盗まれたことが騒ぎになっていた。ニュースでは博物館の館長が下水道にて縛られた状態で発見されたことも併せて伝えられている。杏奈は事情を知っているだけになんとも言えない気分だった。とはいえ、今日も調子は悪い。それはグランツも同じ。杏奈とグランツはホテルのベッドで横になっていた。


「定期的に体調を崩して寝込むと、心配かけている気分になるね」


 杏奈は布団をかぶった状態で言った。彼女は今39度程度の熱を出している。幸いなことに吐き気や嘔吐は見られない。


「だな。スリップノットでは杏奈のこと、心配していたのに人の事言えないな」


 グランツは言った。体調不良で寝込むグランツは珍しく前髪を下ろしていた。グランツがいつでも前髪を下ろしていれば女性にもてるのではないかと杏奈はふと考えるが、これ以上考えるのも無駄。杏奈は余計な事を考えるのをやめた。


「39度の熱もつらいが自分で動けないこともつらいぜ……あーあ。異界の錬金術でもいいから兄貴をもとに戻す方法はないかな。意外とターヤが知っていたりしてな」


 天井を向いたままグランツはほんの少しだけ笑った。




 グレイヴワーム西のはずれ。錬金術師ターヤが常駐する研究所。青い髪をした青年、ビリー・クレイがラボの呼び鈴を鳴らした。理解、形容しがたい音色が響き、5分ほど待つとターヤが現れる。目の下にできたクマが彼女の生活習慣を物語っていた。


「初めまして、錬金術師ターヤさん。私、ビリー・クレイという者です。タリスマンの錬金術研究所から参りました」


 と、ビリーは言った。態度としては紳士的だ。しかし、どこか裏があるようにも見て取れる。腐乱死体以下の匂いは隠し切れない。


「へえ?タリスマンねえ。そんなド田舎で何をしろと?」


 ターヤは明らかに不機嫌そうな顔で言う。呼び出されるまでの間、実験か治療をしていたのかもしれない。


「アンジェラ・ストラウス様よりのスカウトでございます。タリスマンの錬金術研究所では最新鋭の器具を取りそろえ、吸血生物及びその他の危険生物の収容環境もグレイヴワーム以上」


 これだけでもビリーの提示した内容はターヤにとって魅力的だった。その内容を提示した後もビリーはまだ続ける。


「向こう側の世界との連携も行っておりまして、魔族の細胞のサンプルもございます。何より、我々は貴女が必要なのです」


 ここでターヤは自分の研究所とタリスマンでの研究を天秤にかけることになる。何もターヤは人の心を持たぬマッドサイエンティストではない。研究員たちはターヤを信頼し、ターヤも研究員たちをいたわっているつもりだった。何よりターヤがいなくなれば研究員だけではなく収容中の生命体にも影響が出る。どうするか。


「確かに魅力的かもしれないね。私は少しでも良い環境で研究をしたいから」


 ターヤは自分の欲望に忠実な言葉を発する。


「ではついてこられますか?」


 ビリーがターヤに尋ねると、彼女はほんの少し黙った。本当に迷っているのだろうか。それとも――


「んー、やっぱ断る。自他ともに認める頑固者を引きずり出そうなんて思わないことだよ、ビリー。ねえ?」


 タリスマンからグレイヴワームまでの距離は長い。手段は不明だが最低半日はかかる距離を移動してきたであろうビリーをあざ笑うかのような笑みを浮かべたターヤ。


「私は城から出ていくつもりなんてないよ?」


「では死ぬしかありません。貴女は重要な研究者であるだけでなくイングスのルーン石まで持っているのですから」




ジョシュア・ノートン

浸食のイデア

密度:やや低 展開範囲:やや広 継続時間:1時間30分 操作性:並 隠密性:並

緑色で半透明のスライムのようなイデア。触れたものを溶かすことができる。スライムは切り離すことが可能で、切り離したスライムを野球のボールのように飛ばせる。


アル(弁当屋の店長)

毒のイデア

密度:低 展開範囲:狭 継続時間:3日以上 操作性:悪 隠密性:並

毒そのものがイデアとなっている。使用者のアル本人は毒が効かない。解毒剤はなく、毒への対抗方法はアルのイデアを解除(消す)することのみ。


フォズィー(漁師)

海洋生物のイデア

密度:並 展開範囲:超広 継続時間:30分 操作性:超良 隠密性:並

海の中にしか展開できないが、展開範囲は漁船から半径15メートルほど。海老の姿をしており、海の中であれば巨大なタコの姿にもなれる。軍艦を沈没させる程度。

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