幕間~杏奈の異界調査手帖~
前回で序盤の話が終わったところです。これまでのお話をまとめてみました。
一応、主人公の書いている手帖(手記?)の内容という形です。
この回は読み飛ばし可です。
夜、杏奈たちはシオンたちと合流し、情報を共有する。二コラとジョシュアが語ったことだ。
「なるほど。タリスマンか。ドラゴンランド経由が一番楽だな。ひとまずドラゴンランド行きの寝台列車の切符を取ろう。6人分だ。
二日後、シオンたち一行はドラゴンランドへ向けてグレイヴワームを後にする。外を出歩く二コラとジョシュアは黒い外套を纏い、日光を浴びないようにしている。これは致し方ないことだろう。
「ありがとう、杏奈。俺たちは命を助けられた。」
列車に揺られ、杏奈は「異界調査手帖」を読み返す。
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以下、手帖の文章。
1日目
吐き気がひどい。異界に来た時の感想はこれに限る。気温は元の世界より高め。カレンダーを見るにこちらの日付は3月17日だった。元の世界から20日程度ずれている。
また、異界にはスリップノットという町も存在するようだ。異界のスリップノットは港町とは呼べないが、代わりに漁師町として発展している。しかし、宿の厨房の人間からスリップノット名物に毒を盛られた。
2日目
異界にも賠償金という制度あり。魔物を退治する仕事を請け負うこともできるが、元の世界のような組織は存在しない。かわりに町には斡旋所があった。その場所に依頼が集められるらしい。
イデア使いと戦闘。魔物を作り出せるイデアのようだが、その形状は海老。にわかに理解できない。また、彼はルーン石というモノを持っており、ルーン石を集める何者かも同時に存在しているらしい。なお、今回見たルーン石は『エイワズ』である。ビリー・クレイという男がどうも胡散臭い。
3日目
セリオンの洞窟という地名あり。元の世界では危険区域に指定されていたが、異界では立ち入り可能であった。セリオンの洞窟には魔族がいた。彼女がかつて組織を乗っ取った魔族を知るかどうかは不明。差別を嫌っていたようにも見える。彼女の名前はルツといい、ルーン石を持っていた。『マンナズ』のルーン石だった。
同日、グレイヴワームに移動。グレイヴワームは煉瓦職人の町である。元の世界と照らし合わせた場合、グレイヴワームの森と一致する場所に存在する。
また、吸血鬼との交戦あり。元の世界におけるスリップノット支部の二コラ・ディドロ、ジョシュア・ノートンが洗脳されていた。支配者の血の可能性大。
4日目
吐き気、頭痛がひどい。個人差もあるだろうが周期的に症状が出ている可能性がある。調査はシオン先輩とグランツに任せた。
グランツがアンジェラの刺客からルーン石を奪った。『ゲーボ』のルーン石だった。
5日目
錬金術師ターヤの研究所へ訪問。二コラ、ジョシュアの治療を開始。
ターヤから特殊な錬金術の技術を見せてもらう。具体的には、首を切ることなく吸血鬼の洗脳を解く装置である。錬金術の機関で血液を合成しながら吸血鬼の体内の血をすべて入れ替える仕組みである。利用価値は十分にあるとみられる。
6日目
ターヤの研究所に泊まり、本日も研究成果を拝見。元の世界では法律で禁じられている吸血生物の生成・培養を見た。吸血生物の標本あり。シルバーウィング、ナイトリボーン、ファントムディヴァイン等。
7日目
二コラ、ジョシュアの治療が完了。アンジェラとドロシーは共に討つ必要のある相手。タリスマンの町にいるとのことで、これからタリスマンの町を目指す。
また、ルーン石には二つの世界、つまり元の世界と異界の両方に干渉する力がある。そのため、すべてアンジェラの手にわたってはいけない。アンジェラの目的は二つの世界の統合。それによる被害は甚大であると予想。特に、異界の吸血生物は大きな脅威となりうる。
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杏奈は手帖を閉じた。
「まだ異界でも調べるべきことがあるんだろうね。調査は嫌いじゃない。」
次回からもよろしくお願いいたします!




