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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
異界の入口編
17/107

マンナズのルーン石

これでスリップノット編が一段落します。

次回からまた新たな展開に入るので宜しくお願いします。

「ルーン石を狙う連中は良からぬことを企んでいるらしい。せいぜい気を付けな、杏奈。少なくともそいつを渡さなければルーン石すべては揃わない。企みの成就はしないだろう」


「有り難う、ルツ。私はあくまでもあんたを一人の生ける者として見たよ。人間にも危険な奴はいるし、魔族のあんたは本当の意味で危険な奴ではないからね」


 杏奈はルツに言うと、元来た道を戻る。左手にはルーン石が握られており、奥にあるモノを取ってこいという依頼はひとまずクリア。あとはグランツをはっ倒し、依頼者を再起不能にするだけだ。

杏奈はルーン石を狙う者の目的がどこかで引っ掛かっていたが。



 セリオンの洞窟の外、シオンとノエルとグランツが待っていた。


「ルーン石は持ってきました」


 と、杏奈は言う。


「あの状況からどうやって持ってきたんだ?」


 シオンは杏奈に尋ねたが、杏奈は頑なに答えなかった。そして、杏奈は無言でグランツに近づく。


 パーン!


 大きく、乾いた音が周囲に響いた。杏奈がグランツに平手打ちをしたのだ。杏奈の平手打ちはかなり強い。グランツはその威力でよろめいた。


「……いってえ。何だよ!」


「あんたの軽率な行動が頭に来ただけ。このあたりの話は省くけど、思ったことを軽々しく口にしないで。それだけ」


 杏奈は言った。グランツは杏奈に平手打ちされた場所を押さえている。まだジンジンと痛むのだ。


「シオン先輩。ルーン石なんですが、依頼者に渡さない方がいいです。多分、ビリー・クレイと一枚噛んでいます。奥にあるモノがルーン石と分かった時点で引けばよかったんですよ」


 痛みに耐えるグランツをよそに、杏奈は言った。


「おいおい、鮮血の夜明団の名前に泥を塗るのかよ。それは許さねえ。なんでルーン石を引き渡さない?」


 と、シオンは杏奈に尋ねた。


「ルーン石がアンジェラ・ストラウスに全て渡ることを防ぐためですよ」


「杏奈。アンジェラに渡さない方法ならあるだろう。俺たちのルーン石を守り抜く」


 忘れていた。シオンの言ったことで杏奈は我に帰る。ビリー・クレイの言っていた残りの4つが行方不明ということだってわかっている。


「わかりましたよ。戻りましょう、スリップノットに」



 一行はどこか煮え切らないままスリップノットの斡旋所に到着した。グランツはどこか他の3人に気まずさを覚えている。しかし、杏奈はグランツの気まずさを気に留めてもいなかった。グランツが変わることを信じていたから。


「おや、またお会いしましたね」


 青い髪、額を出したポニーテール、スーツ姿。極めつけは紳士的な態度。


「昨日ぶりですね、ビリー・クレイさん」


 ビリーであることを確認した杏奈はすぐさま言った。杏奈はビリーの事情を少しは知っている。ビリーがアンジェラ・ストラウスに近しい人物であることも。


「約束のモノは持ってきました。これでしょう?」


 杏奈は上着のポケットからルーン石を出した。『マンナズ』のルーン文字が刻まれたターコイズブルーの石である。


「よく解りましたね。守り人はさぞ強敵だった事でしょう。貴方たちの強さを賛美いたしましょう」


 守り人とは十中八九ルツのことだろう。下手すればこちらが死んでいたほどには強力な相手だった。

 杏奈とビリーはルーン石と250万デナリオンの受け渡しを行う。果たして杏奈はビリーに手を上げるのか。シオンはそこが気がかりだった。


「取引成立ですね」


 杏奈が言った。シオンの考えは杞憂だったのだ。ビリーも了承したようで、ルーン石を受け取って斡旋所を出ていった。


「相変わらず腹の底が読めない……」


 肩の荷が落ちたように杏奈は力が抜けた。セリオンの洞窟からここまで、あまりにも緊張しすぎたのだ。緊張することそのものが無駄である時もあったのだが。


「あとは賠償金だけだな。あの宿に行ったら払って、スリップノットを出よう」


 シオンは言った。



 宿のあった場所に一行は到着した。しかし、宿がない。賠償金を払うにも払えないのだ。具体的に言うと、宿は異界ではない方のスリップノットにあった飲食店と入れ替わっている。


 シオンはひとまず事情が気になるので単独で店に入り、店員に声をかけた。


「すみません、この店は……」


「い賛夜ぁくぢへぅ」


 言葉の意味が分からない。言葉が通じていたはずの人々の言葉がわからない。


「ら大ぉ口まゃ塗!」


 店員は再び口を開くがシオンには言葉が理解てきない。何と言っているのか?言葉が分からない人々は恐ろしい。


 シオンの本能はシオンを駆り立て、外へと走らせた。しかし、ドアノブに触れない。触ってもすり抜けてしまうのだ。閉じ込められた。いや、そもそもシオンは入り口のドアから店内に入っていなかった。


「おいおい!嘘だろ……」


 八方ふさがりとは、まさにこのようなこと。しかし、シオンは客が壁をすり抜けて出入りしていることに気付く。


 シオンは壁を突き抜けることを願い、壁に向かって歩く。


 出られた。外では杏奈たちが待っていた。


「どうしたんですか?そんなに焦って」


 杏奈が言った。


「……よくわからねえ。とにかくこの町を出るぞ。隣町までは遠くないだろ」


「そうですね。行きましょうか」

この話に出てきたルツとビリー。二人が同じ部分に出てきていることそのものが後半に繋がるフラグです。

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