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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
異界の入口編
15/107

異界の魔族

魔族を登場させるかどうかは直前まで迷いました。しかし、今回の章では差別もテーマの一つなので出すことにしました。

ぴちゃ。ぴちゃ。


水の滴る音がする。グランツはシオンのさらに先を進み、いち早く奥にある何かにたどり着こうとしていた。


どういうわけか、奥に進むにつれてランプが増えてくる。ここには殺人鬼でも幽閉されているのだろうか?


「なんだ!?」


強いレーザーが撃たれ、岩盤の一部が破壊される。なんとかグランツはよけたが、すぐに天井が崩れてきた。落ちてきたのは、ギロチンのような刃物。


「うおっ!?誰かいるんだよな……。やっぱ俺の命を狙ってんのか?」


落ちてきた刃物は地面に突き刺さる。この刃物に当たっていれば、グランツは確実に死んでいた。この先にいる何者かはグランツを殺そうとしているだろう。だからグランツは恐る恐る奥へと進む。


たん、たん。足音を消すことはできない。精一杯の忍び足でも靴と地面の当たる音は壁で反響する。しかし、もはや忍び足で進んだところで意味などない。グランツの存在は気づかれているのだから。



少し進むと洞窟は開けていった。その先に人影が見える。岩に腰かけ、腕と脚を組んでいる。


「……女か?」


グランツは言った。


「そうだね。ただし私は人間ではない。古代人風に言えば悪魔、今の言い方だと魔族だねェ。」


挿絵(By みてみん)


初めてグランツに彼女の顔が見えた。虹色の前髪に銀髪ロングへア。軟骨ピアスや眉ピアスをした風貌だった。人間ではない、という彼女自身の言葉は伊達ではない。


「なんだよ……魔族だからってモノ扱いするんだなァ。やれやれ、ろくでもねぇ依頼だ。」


グランツは言った。


「おい、魔族のねーちゃん。俺と一緒にここを出るぞ。ある人の依頼なんだよ。」


と、グランツが続けると彼女は顔をしかめた。


「チッ……どうせルーン石目当てかい。お前には同行できないって話だ。もう既にルーン石目当てに雇われたハンター7人は喰った。次はお前だよ。」


彼女はひょいと岩から飛び降りると強い光線を撃つ。岩盤に穴を開けるくらいのとんでもない威力だ。


「嘘だろ!?突然変異か!?ありえねえ。光の魔法って魔族の弱点……」


グランツの言うとおりである。過去にシオンと戦ったほとんどの魔族は光の魔法を弱点としていた。突然変異した魔族を除いては。


「そりゃ、光の魔法撃ち込めば解るさ。ほら、撃てよ。撃ってみなよ!魔族ルツはここにいるぜぇ!?」


「くそ……そこまで言うのなら……」


グランツは焦っていた。ルツに光の魔法が効くのかどうか、物凄く気になっている。だが、グランツに有効打はない。魔族は攻撃してもすぐに再生する。人間とは違うから。


「ン?もしかして魔法は使えないのかい?それじゃあ、あたしに歯向かう資格はないなぁ!」


と、ルツは言う。煽っていることくらいはわかる。ルツはそうやって人の心を揺さぶっている。


そして、グランツに策が浮かぶ。それは――


「逃げる!!!」


すぐにグランツは背を向け、元の道を戻る。一方のルツ。グランツで遊ぶように、光線を撃つ。


「チクショウ……こんな化物につきあってられねえぜ!俺を襲わねえなら結構な美人だったのによぉ!」


光線を避けつつグランツはシオンと合流。その時のグランツは息が上がっていた。


「……シオン。落ち着いて聞いてくれ。」


ハァ、ハァ、と息を切らし、グランツは言う。


「魔族が光の魔法を使った。緑色の光線だ。」


「なんだと……?てことは突然変異だよな。……いや、待て!魔族がいたのかよ!?」


グランツと同様、シオンも取り乱した。「この先法律適用せず」の落書きを見て、殺人鬼でも幽閉されているのかと予想していたシオン。しかしその予想を裏切り、現に魔族がこの奥にいるということになる。


シオンは暫く悩んでいた。魔族には光の魔法がよく効く。光の魔法はシオンだけが使える。しかし、奥にいた魔族も同じく光の魔法を使っていた。


そして、シオンは考える。奥にあるモノとはその魔族なのか。だとすれば、相当な差別問題が浮上するはずだ。いくら危険な種族とはいえ、彼らをモノ扱いすることになるのは問題だ。



シオンとグランツが先へ進むか決めかねているところに、ノエルと杏奈が追い付いた。


「杏奈!ノエル!大変なんだよ!この先に魔族がいるんだ!」


すぐさまグランツは言った。


「魔族……何ですかそれは。」


と、ノエルがグランツに尋ねた。


「吸血鬼みてえな奴らだ。まあ、そいつらは吸血鬼を喰うけどよ、とにかく人間じゃねえ。」


「一体何があったのかはわからない。だが一筋縄でいかない奴だとは解った。で、どうするんですか、シオン先輩。魔族に太刀打ちできるのはあなただけです。」


杏奈が言った。シオンだって太刀打ちできるのが自分だけだということはわかっている。


「行こう。依頼を成功させなければ賠償金は払えない。」


シオンは言う。グランツと杏奈はそのつもり。ノエルはどこか不安だったが渋々ついていく事にした。



そして、洞窟は開けてきた。

次回予告ッ!

「ルツに杏奈は渡さないよ。」

「杏奈はあたしが独占する。できなきゃ……」

ルツと杏奈とノエル。三人の間にできる三角関係!だが、シオンとグランツは蚊帳の外で……。



※上記の予告内容はすべて嘘です。

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