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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
異界の入口編
13/107

ルーン石は配られた

ついに物語が動き始めます。やはりドロシーは…。

 一行はカフェへと場所を移す。とは言っても、警戒は怠っておらず、一行のうち誰一人として出された食物を口にしない。


「で、何?私たちの持つコレが、ビリー・クレイの狙うルーン石じゃないかって?」


 杏奈は言った。


「そう。スリップノットの占い師が『異界と関係がありそう』と言っていたからね。一応、彼女からは我々の能力に加護を与えるって聞いたのだけど」


 と、言ったノエルはルーン石をテーブルに置いた。そのルーン石はとても元の世界に存在するようなものとは思えない。杏奈、シオン、グランツのものも同じ。

 ルーン石は4人から出ているエネルギーと共鳴して薄い光を放っている。


「ばれなくてよかったな。俺たちがあそこでばれていたら、きっと死んでいたぞ」


 シオンは言った。すると、杏奈は何かを気にする素振りを見せた。シオンが「ばれなくて」と言ったからこそだ。杏奈の中で疑念が沸き起こる。

 そして、杏奈の疑念は確信に変わる。さらに視線を感じるおまけ付き。

 見られている。何者かから。杏奈はなぜだかわかる。11歳の時、たまに見かけていた先輩の魔物ハンター。ドロシー・フォースター。


「……見たな、ドロシー・フォースター。お前は何を考えている?」


 杏奈は視線を感じる方向に向かって言った。この姿、端から見ると精神異常をきたしているか、タルパとでも会話しているようだ。


「杏奈!?大丈夫か!?つーかドロシー!?」


 シオンは杏奈に訊く。


「大丈夫です。ただ、嫌な予感はします。ビリー・クレイに関係あるかどうかは分かりませんが」


「……はいはい。嫌な予感なぁ」


 シオンも薄々感じていた。それだけではない。ドロシー・フォースターは杏奈が討つべき相手。嫌な予感どころではない。


「もしこのルーン石がビリー・クレイ一味の狙うものだったら、彼らはきっと私達を殺してでも奪い取るだろうね」


 杏奈は冷静さを取り戻す。


「そうね。ドロシー・フォースターとの戦闘は絶対に避けられないとして、彼女がルーン石を狙っているのなら命を狙われることを覚悟する必要がありますね」


 ノエルは言った。


「だな。そして、きっとバレた。やれやれだぜ」


 グランツも言った。



 一行はカフェを出る。特に変わったところはない。ここで襲ってくる敵もいない。ドロシーに見られ、ルーン石の所持がバレた可能性があるというのに何故なのか。


「考えすぎだったか」


 ぼそりと杏奈は呟いた。さて、カフェを出た一行は一先ず宿に向かう。流石に時間からしてきつい。既に午後6時を回っているのだ。



 宿につくとシオンが手続きをし、杏奈とシオンとノエルは取れた部屋へ。グランツは食材を買いに行くという。出されるモノを信用できないからだ。


「トラウマになっているんだな」


 シオンが言った。


「先輩だってカフェで何も手を付けていなかったじゃないですか。それに、私は本来なら雨水しか飲みませんし食事だって4時間ほど時間をずらしていますよ」


 杏奈はやれやれ、というような表情で椅子に座る。一方のシオンは杏奈のこれまでの行動を思い出した。そういえば、この心構えも杏奈を評価するときの判断材料の一つだと実感できるのだ。


「でもそうするから先輩たちが毒を盛られたときは助けますよ」


 と、杏奈は言った。だから彼女は頼もしい、とシオンは内心で考えていた。



「戻ったぜ。」


 食料の入った袋を持ったグランツが帰って来た。


「おう、お疲れ!敵から襲われたりはしなかったか?」


「いや、何も。けど油断できねえよな。ルーン石のことがバレた可能性あるからな」


 グランツも今の状況の不透明さをよくわかっているようだった。そしてグランツは部屋のキッチンに立ち、手際よく食材を調理する。杏奈も手伝うが、食材の安全性にも細心の注意を払っていた。細菌が混じっていてもいいように食材は基本的に「加熱しすぎ」程度にする、など。


「いつ誰が殺しに来るかわからない。早いところドロシー・フォースターを倒さなければ」




 ドロシー・フォースターは電話を切った。たった今ルーン石の回収について報告を受けた。


「……やはり残り4つは行方不明。噂ではむこうのスリップノットの占い師が持っていたとのことだけど」


 椅子から立った彼女は退屈そうに、棺の中の手紙を読んだ。


 ――私のドロシー。ルーン石を探るためにこちら側のスリップノットを監視してちょうだい。


「ふふ、わかったよ。女王様。だってわたしは女王様の右腕だから」


 手紙を棺に戻したドロシーは周囲にイデアを出す。黄色の霧と無数の目が広がる。これがドロシーの能力。シドを威嚇し、ルーン石の加護を得た、失われし魔法イデア。異界に存在する26のルーンは異界の能力「イデア」に加護を与えるのだ。


「スリップノットを監視して。ルーン石の持ち主を探すの。持ち主がわかれば、それを奪い取るために刺客を送るわ」


 ドロシーが展開したイデアはこの場を去る。向かう場所ほスリップノット。ここでルーン石を探すのだ。




「みつけた。もう逃がさない。殺してでも奪い取るだけ」

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