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ルーンと異界の旅日記  作者: 墨崎游弥
異界の入口編
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賠償金は魔物退治で(その2)

今回のエネミーは気持ち悪いけど美味しそうな組み合わせのつもりです。まだ裏があるのでぜひ楽しみにしてください!

戦闘描写は試行錯誤しております(。>д<)

  奴は海から上がってきた。その全容は『奇妙』の一言に尽きる。奴はタコと何かが合わさったような外見をしており、クリーチャーと呼ぶにふさわしい。


「やっとお出ましか」


 と、杏奈。


  ここでノエルの張っていた結界が発動する。巨大なタコの足に文字が絡み付く。タコの足が抑えられ、動きを封じられた。タコは暴れるも、文字の結界はさらに強さを増していた。次は杏奈が方をつける。


  星空のようなオーラを纏う杏奈。足音を立てず、すばやく接近する。そこから斬り込む。鉄扇の一閃は奴を両断。――ずるん。

  いや、両断などできていない。星空のようなオーラを纏っている状態でさえ、奴の粘液を削ぎとることしかできない。つまり、それは斬っても無駄であることを意味する。

 杏奈はひょいとタコのそばからとびのいた。


「まずい。私では到底太刀打ちできない!せめて魔法が使えたなら……」


  杏奈が距離を取るときだ。奴は口から突き出ていた海老と海水を噴射する。


「なに!? 」


「よけろおおおお! 」


  飛んでくるダーツ。グランツの助太刀だ。しかし、杏奈としてはお呼びではない。ダーツは粘液で止められる。奴の粘液にダーツが数本刺さっているような状態だ。


「まずいね、グランツ。粘液が邪魔……」


  そんな中で、文字によってとらえられた奴は暴れる。波が立ち、海がうねる。文字の結界の耐久力は大丈夫か。


  念のため杏奈は距離を取る。そして、破られる文字の結界。文字と奴の足との拮抗は破られ、再び奴は動き出した。


「ノエル!結界はもう駄目だ!粘液をなんとかしないと! 」


  杏奈は叫ぶ。そのとき、降りかかる砂利と水。触手。杏奈は足元を掬われ、転倒する。


(こいつは私に気をとられている…それでいい。私一人の命は軽いんだよ)


  やはり触手は杏奈を狙ってきた。杏奈は立ち上がり、触手の先端を切り落とした。その部分は粘液の層が薄かったのだ。しかし、奴はものともしない。杏奈は、奴に痛覚がないことを悟る。


「誰か一思いにこいつを! 」


 グランツのダーツでは駄目だ。シオンかノエルに託すしかない。

 ふと、杏奈は横目でノエルの姿を見た。ノエルの周囲に渦巻く文字たち。それが圧縮され――


「スクリプトランチャー! 」


(でかした! )


 文字の塊――新聞のセンテンスのような文字の塊が奴に放たれる。炸裂。飛び散る粘液。粘液は剥がれ落ち、奴の体表は無防備と言っていい。


「今だよ、杏奈! 」


 ノエルの声。


 ――今だ。ここで決める。


「オラァ! 」


 鉄扇の一閃は粘液の剥がれた奴を切り裂いた。横方向に切れたタコ。


「ここで終わりだと思うな!!!シオン先輩とグランツも総攻撃を!!! 」


 杏奈に油断した様子はない。グランツやシオンでさえ、杏奈がここで決めたと思った。


 杏奈の心構えと精神は揺るぎない。これが、魔物ハンターとしての杏奈の武器の一つ。魔法が使えないからこそ、補っていたことだ。


「早く!!! 」


「……おう! 」


 シオンが前に出る。指先を奴に向けて、音波と雷を同時に撃つ。


 炸裂する雷。


 だが、ノエルは奴の行動に気づく。素早く文字の塊を放ち、叫ぶ。


「何かしてくる!避けて!!! 」


 いや、避ける必要はなかった。なぜなら奴は触手で体の位置を合わせ、無理に傷を塞いだ。人間の形を取る種族では、吸血鬼か魔族にしかできない系統だ。


 そして、奴は杏奈に隙ができる時を狙い、口から海老を噴射。


 それを迎撃するグランツ。ダーツが命中した海老は四散する。


「チクショウ!どう攻略するんだよ!? 」


 目の前のあり得ない光景を見たグランツは叫ぶ。


「人には合う、合わないがある。それは魔物への相性にもあると思う。だから、グランツも杏奈も下がって!私とシオンさんならできる」


 文字の結界のために身を潜め、攻撃するときも距離取っていたノエル。彼女はあえて奴との距離を縮めた。続いてシオンも奴との距離を詰める。


 奴の眼球と触手が蠢く。さらに、奴の口から海老も顔を出す。その姿は、4人の誰から狙おうか迷っているようにも見受けられる。


 だが、こちらがわも奴の攻撃への対策は可能。海老の噴射はグランツのダーツで対応でき、粘液ならノエルが剥がすことができる。


「……粘液が再生される前に方をつけないとね」


 と、杏奈は言った。


「私が触手を切る。シオン先輩とノエルは攻撃に専念して。グランツは迎撃を」


 この状況下においても杏奈は冷静だった。


「こちらが先に動けばまずい。やられたらやるぞ」


 と、シオンは言う。



 ――そして、奴が動いた。


 叩きつけられる触手。応戦する杏奈は叩きつけられる触手を切り落とす。徐々に分泌される粘液のためか、何度か鉄扇の刃は滑る。それに対抗すべく、ノエルはスクリプトランチャーを撃つ。命中すると粘液が辺りに飛び散った。


「……でかした! 」


 杏奈は言う。そして、もう一本の触手にも気づいていた。杏奈は再び触手を切り落とす。

 そこに撃ち込まれるシオンの使った光の魔法とスクリプトランチャー。もちろん奴も無抵抗ではない。奴は海老を噴射する。


「きたきたきたきた! 」


 グランツはダーツを海老に命中させて迎撃。ここに攻撃を叩き込むシオン。


 奴は起き上がることなどなかった。しかし、様子がおかしい。

 奴の中から大量の海老が湧き出てきた。噴射されたもののミニサイズ。奴らは海に戻っていく。そんな化け物は杏奈も知らない。データにもない。


「……おかしい」


 倒れた魔物と、海へ戻る夥しい数の海老を見た杏奈は呟いた。


 そして、杏奈の中である仮説へとたどり着く。



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