そして異世界
目の前には緑が広がっていた。草が生え、木々が生い茂る、森のような場所。
「来た…異世界」
辺りを見回すが目に写るのは木ばかり。
「ここ異世界か?」
生前いた世界と見分けがつかない。異世界を象徴するものが見当たらない。
「もうちょっと場所の配慮もしてほしかったな」
腰に手を当てようとすると、妙な物にぶつかる。腰にはベルトが巻かれ、それぞれ長さの違う刀が二本刺さっていた。一本は身の丈にあった扱いやすい刀。もう一本は少し短い小太刀。さすが神様。俺が二刀使いだと知ってたみたいだ。
「武器は気が利くのに場所は気が利かなかったのか」
愚痴を言いながら刀を抜く。
まぁ、文句を言っても仕方がない。転生してくれただけでもありがたいんだ。あまり悪く言うのはよくない。
抜いた刀を眺めながらふと、思う。
「これ、転生か?」
綺麗に研がれた刀に映る俺の顔は、生前のそれそのまま。手足を見ても、今朝起きたときと何ら変わりない。18歳の姿。
死んで別の人に生まれ変わるのが転生で、姿形そのままなのが転移じゃなかったか?
「…まあいいか」
答えのでない事で悩むより、今の状況に目を向けなくちゃな。
「取り敢えず、町か何かを見付けないと」
そのためにはこの森を抜け出さないとな。
意を決して、異世界を歩き出した。




