十一話
一方、葵が監禁されている中、レオは石扉を開けて部屋へと入っていく。
「アオイ?」
部屋には落ち着きのない明人が座っており、レオの姿を見ると慌てた様子で駆け寄ってくる。
「ガウアオイグググ」
明人の言葉に微かに葵と聞こえ、葵を探すレオ。
明人は顔を青ざめて服の中から小さい板を取り出して弄り始める。
――レオ、レオ、レオ!
遠くから葵の言葉が聞こえ、葵を探すレオ。
葵の声はどこか苦しそうで辛そうで、レオに焦りが生まれる。
「アオイ。危ない」
レオは扉に近付くも開け方が分からない。
明人の肩を叩き、扉についている鉄を指さす。
明人は涙を流しながら扉を開けてくれる。
レオは外に出ると声がしてきたと思われるとこへと向かってく。
焦る気持ちが次第に強くなっていき、体が熱くなっていく。
――早く助けなきゃ。早く、もっと早く行って殺さなきゃ。
何かに思考が侵食されるのを感じてレオは頭を振って元に戻す。
建物を次から次へと飛んでいき、大まかな声の下場所に向かうもどこからしたのかわからない。
――助けてレオ!
葵の声がした建物に向かって全力の拳を振う。
建物は簡単に崩れ、レオが通れるぐらいの穴が出来る。
階段を駆け上がり、部屋に入る。
そこには白い服を羽織った下着姿の葵とエルフもどきの男が倒れている。そして鼻から血が出ている男が刃物を今にも青いかエルフもどきに突き刺そうとしているのが見えた。
レオは心の底から怒り、感情を込めた雄叫びを上げる。
「ウオオォォォォォ!!」
レオは葵以外の人物にターゲットを決め、まずは刃物を持っている奴に向かって拳を振う。
刃物を持った男はひらりとよけ、レオの拳は床をぶち抜く。
拳を床から抜くと右肩が少し熱い事に振り返る。
男が笑みを浮かべて刃物を右肩に刺している。
レオは男の腕を骨ごと握りつぶしそのまま思いっきり振り回す。
「ウガァァ!」
男を壁や床に叩きつける。血しぶきが部屋を染めるもお構いなしに振り回し続ける。
絶命してもなお殺す。レオはもう自分の力では止まることが出来ない状態だった。
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺しつくす。
「レオ! もうやめて!」
葵の声が聞こえ、体に暖かい感触がする。
振り向くと葵がレオの体に抱き着いている。
「やめて、もう私は大丈夫だから」
葵が涙を流しながら必死に止めようとしている。
レオはだんだん怒りが冷めていき、理性を取り戻していく。
手に持っているのは全身血だらけの男。
またやってしまった。もうこれで何人目だろうか。まだ殺し足りない。
まだ復讐は終えていない。葵を傷つけた奴らは全員殺す。
再び怒りに染まりかけるところでレオは必死に理性で止めようとすると頭がかち割れんばかりの頭痛が起きる。
「グ、グゥゥゥ」
痛みに耐えかねて膝をつく。
「大丈夫? ごめんね、私のせいでこんなに苦しませて」
葵は悲しそうにして謝ってくる。
そんな顔を見たくて助けに来たわけではない。
友として、仲間として、失いたくない人だから助けるのだ。
レオは怖がらずに自分の心を救ってくれた恩人に対して頭痛に耐えつつ、説教じみたことを話す。
「アオイ、違う。お前のせいではない」
レオは葵の手を優しく握る。
「俺はお前を失いたくないから助けた。だから自分のせいだと思うな。もっと仲間を頼れ」
レオの言葉に感化されたのか葵は涙をボロボロと流しながら「ありがとう」と言った。
その意味は分からないが、何となく感謝しているのだろうとレオは感じた。
レオは抱き着いて泣く葵の背中にそっと手を添えてそっと撫でる。
葵が顔を上げると笑みを浮かべてレオの顔に触れる。
「レオの笑顔久々に見た。やっぱりそっちの方が好きだよ」
葵に言われて自分の顔に触れる。葵に言われた通り、頬が緩み切っている。
いつも誰かに命を狙われないように警戒していたせいか、笑みを忘れていた。
――たまには緩むのもいいものだ。
外から騒がしい音が聞こえてくる。
「警察来たんだ。レオここから離れたほうがいいかも」
葵が窓を開け、レオは外に出ようとする。
「アオイ。俺待って――っ!」
レオが振り返ると葵の後ろに丸い刃物を持った血まみれの男が襲い掛かろうとする。
レオは咄嗟に葵を抱き寄せ、男の刃物から葵を守る。
「アオイをこれ以上傷付けるな!」
レオの渾身の拳が男の顔面に命中し、壁に叩きつけられて気絶する。
レオは葵を姫様抱っこして外に出ようとすると葵に止められる。
「待って、篠山君が」
レオは葵の指さした方を見るとエルフもどきが倒れているのが目に入る。
完全に蚊帳の外だった。
レオは葵を右肩に乗せるとエルフもどきを抱きかかえて外に出る。
そとには赤い光を乗せている鉄の箱が何個も置いてある。
レオはそんな事お構いなしに異世界を駆けていった。




