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十話


時刻は15時30分。最後の科目である国語が終わり、クラスメイトは各々席を立ち、友人と笑い合って部活に行ったり、帰ったりしている。その中で葵は荒ぶる鼓動を抑えつつ、スカートのポッケから今朝貰ったメモ用紙を確認する。


 そこには学校から目的までの地図が書かれており、放課後から20分以内に来なければネットに公開すると書いてある。

 

 葵はメモ用紙をポッケにしまい、筆箱からシャーペンを取り出して袖に隠す。

 念のために武器はあってもいいだろう。他にもなにか武器になりそうなものがないかと探すも見つからないので裏口に向かうことにする。


「あ、相原さん!」


 後ろから大きい声がして驚きつつも振り返るとそこには獅生が立っている。


「今日特売やってるからさ、、もしよかったら今日もこ、来れないかなって」


 葵は焦りを隠す様に作り笑いをしつつ、獅生の誘いをやんわりとどう断ろうかと考える。

 誘いは嬉しいが、今はそれどころではない。


「そうなんだ。なら後で行くね。ちょっと私これから用事があるからもう行くね」


 葵はそそくさと獅生から去ろうとすると獅生に服をつままれ、動きを止められてしまう。



「あ、ごめんね止めちゃって。でもなんか今日の相原さん顔色悪くて心配なんだ。何かあったの?」


 獅生に言われ、葵は助けてほしいと思う気持ちと迷惑をかけるから言わないほうがいいと思う気持ちがぶつかり合って葛藤した。

 助けを求めれば獅生は協力してくれるだろう。それのせいで獅生が司に殺されてでもすれば自分はどういう顔をして学校に来ればいいのか分からなくなる。

 もう目の前で誰の死んだ姿を見たくない。両親の遺体を見た時からずっと誓った。

 誰かが死ぬくらいなら、誰かが困るぐらいなら自分が犠牲になろうと。

 葵は決意が固まり、嘘を言う事に抵抗を感じるも「何にもありませんよ」と嘘をつき、

獅生を置いて裏口に向かった。


 葵は指定された場所に到着すると車が止まっている。

 車からマスクをした司が現れ、後部座席のドアを開ける。

 中に入ろうとする葵に司は止めに入る。

 

「これをしなくちゃね」

 

 司はそう言って青いの手首と足首に手錠をする。

 おまけに袖に隠し持っていたシャーペンも回収されてしまった。


「やっぱり。これは没収するよ」


 司はシャーペンをズボンのポケットにしまう。葵を車に乗せる。

 次の瞬間に、体全体に電撃が走り、意識が朧げになっていく。

 最後に見たのは異世界で出会ったルーの様な醜悪な笑みを浮かべる司の顔だった。


●● ● ● ● ● ● ● ● ●


 葵が目を覚ますと目に入ったのは何もない小部屋だ。

 外は真っ暗で少なくとも19時を過ぎているのは確かだ。


――レオお腹減らしてるよね。


 起き上がろうと試みても足と手に手錠がされてあるので起き上がれない。

 力いっぱい引っ張ってもびくともしない。

 葵が試行錯誤する中、ドアが開いて司が入ってくる。


「あ、起きたんだ」


 司は葵の前に座り、カッターと黒いカメラ片手に笑みを浮かべている。


「おはよう。よく眠れた?」


「……最悪な目覚めです」


 司は葵を仰向けにし、カッターで制服を切っていく。


「僕はね。大人と子供の中間にいる子が大好きなんだ。特に君みたいな諦めずに希望を抱き続ける子を犯して絶望に染めることがもう快感でたまらない。あぁ、考えていると興奮が止まらないよ」


 下着を露わにした葵。恥ずかしいが、それよりもここからの脱出をしないとこのままではこの糞変態に殺されてしまう。


 司はズボンのベルトを開け、ズボンを下ろした。


「あぁ、滾ってくる。さぁ、始めようか。君はいつまでもつかな?」


 司が近づいてくる。

 葵は目を瞑り、必死に暴れるが手錠のせいで暴れられない。

 頭の中でレオの姿が思い浮かぶ。

 


――レオ、レオ、レオ!


 司にキスされようとしたところで下から窓ガラスが割れる音が聞こえてくる。

 司は舌打ちしつつ、ズボンを履くと慎重にドアを開けようと取っ手に手をかける。

 ドアノブを回して司が外の様子を覗こうとすると何者かの肘内を顔面に喰らった。


「相原さん!」


 部屋に入ってきたのはなんと獅生だ。


「な、何で」


 獅生は自分のシャツを脱ぎ、葵に羽織らせる。


「メモ用紙が落ちていたから、急いで相原さんの後を追いかけたら捕まってるのを見たから、もしかしてと思ってきたけどよかったよ。それにしてもまさか犯人が九十九先生だったなんて」


 司は鼻を抑えながらよろよろと立ち上がる。

 獅生は葵を後ろに両手を前にして構えた。

 

「くそっ、篠山よくも邪魔してくれたな」


 司は獅生と同じように構える。


「空手でもやっていたのか? 俺も昔やってたよ。いいよな空手。人を暴力で黙らせるには最適な武術だよ」


「先生。じきに警察がここに来ます。だから自首してください」


「はっ、自首? するわけねぇだろうが!」


 司は自分の割れた眼鏡を獅生に向かって投げた。

 獅生は咄嗟に眼鏡を避けるもすでに司が懐に入り、脇腹に向かって蹴りが入る。


「がはっ!」


 獅生は脇腹を抑えて地面に転がる。


「たくっ、やってくれたな。ここから相原連れて逃げなきゃいけないじゃないか。ま、その前にお前を始末しないといけないけどな」


 司はそう言って地面に落ちているカッターを拾い上げる。

 そして獅生の腕目掛けて思いっきり振り下ろす。


「あぐっ!」


 獅生の腕から真っ赤な鮮血が溢れる。

 司はカッターを抜くと何か所も同じように深く刺していく。


「ぐぅっ!」


「もっといい反応してくれると思ったが、ま、時間も惜しいしさっさと殺してやるか」


 司は高笑いしながら獅生の首筋にカッターを当てる。


 先に相談しておけば獅生は先に警察に電話していたかもしれない。

 自分が臆したから、もっと他人に頼ったりしなかったから獅生が今まさに殺されようとしている。


――助けてレオ!


 異世界にいる届かない願いを込めていると下から爆音が聞こえてくる。


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