248日
「インターネットよりも、むしろ顔が広いんじゃないかという友人がいてね、彼のおかげで話が纏まったよ」
国によってはもっと簡単なのだろうけれど、日本で養子をもらうというのは、中々に面倒な手続きがあるようであった。
サポートでも頼めたらと、詳しそうな人に頼んでみたのだが、そうしたら驚きの言葉をもらったのだ。
「十三歳の娘が子どもを授かってしまったという知り合いがいて、育てられないから、本当に悔しそうだったけれどだれかに引き取ってもらおうと考えているらしいんだ。今度、その人に会ってみないか?」
友人は、僕にそう言った。
そのことを彼女に話したところ、彼女は大層喜んでくれた。
「本物の親とも、簡単に会わせてあげられるのね。大きくなってから、傷付けてしまわなくても済む、とても素敵だわ。大切なお子さんを頂くんだもの、きっちりしなくちゃいけないわよね」
「会いに行くのは今日じゃないよ」
身嗜みをしっかりしようと、綺麗な髪を梳き直し始めたものだが、それを僕は制する。
会いに行く日付はまだ決まっていないのだが、彼女が元気なうちだったらいい。
いつまで彼女が元気でいてくれることだろうか。
ずっと、そう答えられたらいいのだけれど、信じきれなくて……。
こんなことは考えるものでもないね。
僕たちの子ども、か。
子どもは神様にお願いをして、そうしてもらえるものなのだから、今度、会いに行くその人を神様だと思ったらいい。
そうしたら、僕たちは自然な流れであると言える。
かっこつけて愛せると言ったものだが、愛せなかったなら、それが恐ろしく思えてしまった。
ありえないけれどね。
どんな子であったとしても、愛せないなんてこと、ありえないのだけれどね。
「ねえ、質問なのだけれど、孤児院を開くことってできないの? 物語とかだと、孤児院育ちのキャラクターとかよくいるじゃないのよ。たくさんの子どもに囲まれて、苦しんでいる子どもを助けられていいことしかないじゃないの」
楽しそうな彼女の言葉、それは現実的には難しいことであった。
たくさんの子どもに囲まれて、彼女の分も含めて、二人で愛を注げるんだ。
現実になったのなら、そんなものは最高の幸せだ。
「捨て猫を保護するみたいに、子猫を拾うみたいに、人間を集めることはできない。それほどの信頼を得ることは難しいだろうし、それだけの資金を得ることも難しい。それに、法律だとか、そう言った難しいことは僕にはわからないよ……」
「そりゃそう、よね。わかっていたわ。頭がよさそうに見えるあなただけれど、本当はお勉強がそこまでは得意じゃなくって、専門的なことは知っていても、それ以外は全くなんだものね。趣味が一々マニアックなくせに、難しいことが苦手なのよ」
その願いが現実的でないことを、彼女だってわかってのことだったろうから、残念そうにしている節は見えなかった。
それからは夢を語り描いていられたのだから、些細な現実など、すぐに忘れてしまえるものだし……ね。